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第37話 女子寮のエイリーン様のお部屋

 結局、セドリックは私が泣き止むまで付き合ってくれ、女子寮の入り口まで送ってくれた。

 

 そのまま寮の方に戻ると、エイリーンが私の部屋の前で待っていた。

「お帰りなさい。遅かったわねぇ。もう少しで迎えに行くところだったのよ、リナ様」

 泣きはらした顔なぞ見られたくなかったのだが。

 そういえば、エイリーンとも事件以来だった。


「このたびは、大変ご迷惑をおかけしました。庇って下さってありがとうございます」

「謝るのはこちらの方よ。ジークに言った通り、私の思惑にのってくれたんだもの」

「あのような危険なものと分かってたら、のりませんでしたが」

「まぁまぁ、お詫びに『シャングリア』のクッキー買ってきたのよ。食べてらして」

 だから何で、私の好物がばれてるんだ?

 手を取られ、エイリーンの部屋に案内された。


「リナ様も社交シーズン中は、戻ってこないのかなって、さみしく思ってたところなのよ。女子寮、閑散としてるでしょ?」

 エイリーンは顔を拭くためのぬれタオルを用意してくれた。ひんやりして気持ち良い。


「そういえばそうですね」

「この時期は、学校も開店休業中って感じで授業も無いんですって」

「エイリーン様は、戻らなくて良いのですか?」

「私は婚活の必要ないですもの。必要最低限の……王太子が出ないといけないものしか出れないもの。つまらないですわ。リナ様は婚約者、いらっしゃらないの?」


「私……ですか? いえ、いませんね」

「もしかして……デュークのこと、好きだったのかしら?」

「デューク様ですか? 友達としては好きでしたけど」

 なんだろう、エイリーンらしくない話題選び。

 ある意味、人の傷をえぐるような。デリカシーの無い会話。


「私ね、デュークが処刑されるの分かってて伯爵家に誘拐されたの」

 エイリーン?

「あのまま行けば、リネハン伯爵はもっと陰謀の中枢に取り込まれてたでしょう? もしかしたら、王太子暗殺の実行犯にさせられてたかもしれない。そんなところまでいってたから……」

「エイリーン様はジークフリート様のためにあんな危険なことを?」

 その質問には答えず、エイリーンは話を続ける。


「あの時潰さなかったら確実にそうなってたでしょうから……だから、この件で恨むのなら私にして欲しいの」

「恨む……なんて」

 デューク処刑の決断を下したのは私だ。

「ジークやアラン、セドリックですら、もっと時間をかければ何とかなるって方向で動いてたわ。だけど、セドリックは途中で無理だって分かってたんでしょうね。だから貴女が動くような情報を与えたのでしょうけど」

 裏で、色々動いてるなって思ってたけど……。


「やっぱり、私の所為ですね。セドリック様は、私がエイリーン様に不用意に近付いて動きが不穏な方向に行き始めたから方向転換せざるをえなくなったんです。私は、ジークフリート様からもセドリック様からもエイリーン様に近付くなと忠告を受けてました。でも、私はその意味が分からずそばに居続けたから」


「では、私たちは共犯ね。責められるときは一緒に責められましょ」

 妙に明るく笑って言われた。やっぱり、エイリーンはすごいなぁ。

 エイリーンは全て分かっていて計算して動いてた、私は……。

 沈んだ顔をしたんだと思う。

「リナ様は、可愛らしいわよね」

 は?

「私は自分の行動での結果がある程度分かりますの。今回もそうだけど、人や自分の命より優先しちゃうこともあるわ。生まれてからずっとそういう立場に居たし、周りもそうだったから今まで当然だと思ってたけど。リナ様は、違うのよね」

 そんな世界に……生まれたときから?


「ああ……変な風に取らないでね。リナ様の立場なら、それが当たり前なの。上位貴族と下位貴族に溝があるのはそこも含めてだから。だけど、この事件でリナ様の立場は変わってしまうわ」

「そう……でしょうね」

 エイリーンは、ふぅ~って感じで


「多分、明日辺りジークからの呼び出しがあるでしょうけど」

 あるんですかい。

「ああ。今回関わった方々。皆個別に呼ばれてるし。単なる謝罪だから。でも、もし怖かったら私もついて行きますわ。私も少しは剣、扱えますのよ」

 ジークフリート、無抵抗でやられるな……多分。


「いえ……大丈夫です」

 学生寮内の惨劇なんか見た日にゃ立ち直れなくなる。

 いや……ギャクなら有りか?

 私も大概思考回路が壊れてきたな。

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