表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/169

第30話 リネハン伯爵邸の夜会 王太子殿下とセドリック

 キーンと、剣をはじく音が私の頭のすぐ上でした。

「王族に剣を向けるとは、何事か」

「申し訳ございません。罰はいかようにも」

 怒鳴るジークフリートとは対照的に、冷静な声で言うのが聞こえる。

 顔を上げると目の前に、片膝突いて剣を下に置き、礼を尽くす騎士団の制服を着たセドリックがいた。


「ただ、この者はご容赦下さい。私の命令に従っただけの小娘にございます」

「セドリック」

「王太子殿下が、エイリーン様に近付かないように命じたのは知っております。ですが、私の命令を優先させました」

 な……に……? なにを言ってるの?

「貴様の所為か」

 私の所為だよ…私が頼んだから動いてくれて……。

「違っ……もご、うぐ……」

 ジークフリートに反論しようとしたら、後ろから抱きしめられ口をふさがれた。

「リナ……黙って」

 耳元で言われる。兄の声だ。


 どうして……? セドリックもエイリーンに近付くな、って言った。

 なのに、言うこと聞かなかったのは私で……。

 ジタバタ暴れても、兄の力の方が強い。

「覚悟は出来てるんだろうな」

 兄が私を抱き込んだまま、背に庇う。

 さっきから口をふさいだ手の指を噛んで、口の中に血の味がしてるのに全く緩まない。

 このままじゃ、セドリックが。

 私が願い出た3つの条件(おねがい)も現場処刑じゃ意味が無い。



一時(いっとき)の感情で優秀な臣下を失うおつもりですか、殿下」

 エイリーンの凜とした声が響いた。

 斬りかかろうとしたジークフリートの動きが止まる。

「どうしても、誰かをお斬りになりたいのなら、わたくしをお斬り下さいませ。わたくしは、わたくしの意思でこの度の騒動を引き起こしました。リナ様はわたくし思惑にのってくれたのです。この騒動の責任者はわたくしです」

 ジークフリートは呆然としている。エイリーンはジークフリートの元に近付いた。


「ご覧下さいませ。わたくしに傷一つ付いてませんでしょ? リナ様がわたくしを助けながらここまで連れてきてくれたのです」

 ジークフリートが私たちの方を向く。

 兄が私の拘束を緩めてくれていたので、擦り傷だらけの私が目に入ったようだ。

 ようやく剣を納めてくれた。


「追って沙汰する」

 とだけ言って、ジークフリートは近衛騎士団の方へ行ってしまった。

 エイリーン様もそれに従うように歩き出す。

 全身から力が抜けた。


「大丈夫か? すまなかったな遅くなって」

 セドリックが気遣ってくれる。

 その先は、何と受け答えしたのか覚えてない。

 ただ、私は腰を抜かしたようにへたり込んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ