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アラン王子殿下の憂鬱 5

 リナの手紙の方は、国王陛下の命令書の発行依頼。

 もう1通は、ジークが廊下で拾ったという。密告書と下位貴族との連絡に使ってた手紙。

 まだそんなことやってたのか、ホールデン侯は。

 あげくにリナを狙うなんて……。

 僕のいるお茶の席で……って事は、後から僕を狙った王太子側の……っていう風に持って行きたいのだろう。


 命令書の方は、リナが動くことが前提のような気がするが……っていうか、リナが動いて本人達に渡さないと効力がない。

 イヤな予感しかしない。

 国王の執務室にいると色々な報告が上がってくる。

 アボット侯と宰相が投獄されたようだ。

 二人とも大人しく従ったところを見ると、ジークに類が及ばないようにするためだろう。近衛も王太子側の隊は待機命令が出てる。


 だれも、逆らわない。ジークの立場を悪くしないために。

 そして、ジークやエイリーンも過激派の近衛の監視下に置かれた。

「アラン」

「はい。国王陛下」

 この人を父と呼んだことは無い。

「そなたも部屋に戻るが良い」

 言い方は穏やかだが、退出命令だ。

「それでは、失礼致します」


 部屋に戻るとレイモンドとフイリッシアがいた。

 レイモンドは自分の立場を正しく理解している。

 その男がここにとどまっていると言うことは、ホールデン侯のしたことがバレたときに、自分と引き替えにしてでも、僕たちを守るつもりなのだろう。

 フイリッシアは震えて、レイモンドにしがみついてる。

 レイモンドは僕に遠慮してるのだろう、抱きしめてない。


「レイモンド。フイリッシアを安心させてやって。僕に気にせず」

 僕はそっぽ向いた。

 多分、抱きしめてやってくれてる……と思う。

 廊下がざわざわし始めた。

 何かを指示してる声が聞こえる。イヤな予感って、なんでこうも当たるんだ?

 って言うか、どうしてリナが自由に動いてるんだ。


 ノックと共に、部屋の扉が開いた。

 リナと後ろに剣を持ったクランベリー公がいる。

「僕を拘束しますか? 今回の騒動は、ホールデン家が起こしたものだと気付いたのでしょう」

「レイモンド様は知らなかったのです。本当です」

 フイリッシアがしがみつこうとしてるけど、素っ気なく離してる。

 まぁ、そうだよね。


「僕は、大人しく貴方に従います。ですが、アラン王子殿下とその妹君は無関係です。ですから、この2人は見逃してください」

 レイモンドはクランベリー公に必死に言いつのる。

 まぁ、クランベリー公なら情に訴えるのも有りか……。

 僕も最悪、フイリッシアだけは助けたいな。


「私はリナ嬢の護衛で付いてきてるだけだがな。今は、荷物持ちかな?」

 は?

 何? リナ……とうとう、クランベリー公を荷物持ち要員に。

 ぶっ……く。いや、笑ってる場合じゃないけど。何? この緊張感の無いセリフ。

 リナがクランベリー公から剣を受け取り、レイモンドに渡してた。


「アラン王子殿下もどうぞ」

 僕のところに来て、笑っていた僕にも渡す。

「私も頑張りますけど、失敗したら2人でフイリッシア王女殿下を守って生き延びて下さいね」

「リナ、待って。失敗したらって」

 引き留めれなかった。クランベリー公から制されたのもあるけれど。



 リナから貰った剣を机に置く。

 失敗したら、もうリナはこの世にはいないだろう。

『死ぬのが怖くないはず、ないでしょう?』と言ってたリナを、僕は死ぬかも知れない場所に追いやった。

 セドリックのことを言えないな。


「レイモンド。頼みがある」

「なんでしょう。アラン王子殿下」

 礼を執ってくる。

 そういえば、さっきリナは臣下の礼をとらなかった。もしも……がある以上、友達として別れたかったのかもしれない。

「リナの言う『失敗したら』ってことがあったら、僕を置いて2人で逃げてくれないか。追っ手がかからないように、僕が何とかするから」

「殿下?」


 頼むから、そのときにまで僕に生きろ、って言わないでくれ。


 レイモンドは、察してくれたようだ。多分、僕の立場に立たされたら自分も同じ選択をすると思ってくれたのだろう。

「仰せのままに」

 と言って、フイリッシアの側に戻った。



 まぁ、僕の覚悟は空振りに終わったんだけどね。

 ただ、リナは本当に危なかったらしい。



 卒業式が終わったら、ジークとエイリーンの結婚式。

 半年もしたら、セドリックとリナも結婚する。

 胸は少し痛むけど、どうせ僕は結婚できないからそれで良い。


 リナのもくろみ通り、国王陛下の側近達が復帰して、僕たちは子どもに戻れた。

 しばらくは、のんびりとしたこの平和が続くと良い。



                              おしまい

ここまで読んで頂いて、感謝しかありません。

ありがとうございました。

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