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第108話 サイラスVSリナ 国王命令書

「俺、二度目は無いって言ったよな。リナ嬢?」

 サイラスの執務室で、ホールデン侯爵家に一緒に行って欲しいと言った返事がこれだった。


「このまま放置していたら内乱まで発展してしまいます。サイラス様もこのままでは不味いと思って、(みずか)らここにいらっしゃるのでは無いですか? 貴方が動けば、騎士団が動いたと否応なく判断されてしまいますから」


「だから俺に王太子側で動けというのか?」

「私は王太子側の人間ではありません」

 サイラスが少し驚いた気がした。

「最初から、私の肩書きは『国王代理』です。だから、宰相様ですら私の意見を尊重してるでしょう?」

 そう、これがリーン・ポートの事を言えない場合の私の正しい肩書き。

 私が持っている肩書きの中で、宰相より上の肩書きはこれしか無かったから、アボット侯との会談にも使ったんだけど。

 使ったのは、あの時1度きりだ。


「それで? 俺にも礼を尽くせ……と?」

「そんなこと……今更でしょう? サイラス様は私が司令官という肩書きを貰っても、部下扱いして庇ってくれたじゃないですか」

 サイラスにもセドリックにも、私はいつでも本音しか言ってない。

 見透かされるのもそうだけど、この2人には警戒心が働かないのだ。

 こんなにイラついてるサイラスを前にしてもそうなのだから……もう、どうしょうも無い。


「私は、最初から国王陛下の依頼(めいれい)で動いてます。王太子殿下と第二王子の身の安全の保証をしてくれと」

「なんで、デビュタントしたばかりの小娘にそんな依頼(めいれい)が来るんだ? ポートフェン子爵家当主ならまだしも……」

「国家機密なので教えられないです。まぁ、いずれ分かるかも知れませんが」

 サイラスが怪訝そうな顔をする。


「命令にはしたくないのですが、時間がありません。ここに国王陛下の命令書が2通あります。サイラス様がこちら側で動いてくれて、ホールデン侯爵家当主が大人しく会談の席について下されば、ホールデン侯爵家はこのまま存続できます。派閥もそのままです。ただ、王太子殿下を狙うのは止めて頂くことになりますが……」

 ここまで言って、私は一呼吸置いた。


「そして、会談の相手は私では無く。国王陛下、宰相様、ポートフェン子爵家当主、各派閥 代表(トップ)ということになります。私の役目は事実上この会談が成立すれば終了になると思いますので」

 サイラスが少し呆然としてるようにみえる。


「サイラス様への命令書は……ああ、こちらですね。こちら側で動くように……との」

 命令書の確認をしているうちにサイラスが私の目の前まで来ていた。

 手首をつかまれ、命令書を奪い取られる。


「ご存じだと思いますが、国庫に同じものが保管されてるので……」

「従わなかったらどうするんだ? 何度も警告してるよな、俺は」

 サイラスに掴まれた手首が痛い。本気で怒らせてしまった……かな?

 う~ん、困った。どうしょう。

「クランベリー公との交渉の時も同じセリフ言ったのですが……」

 この前と逆だ。私が令嬢としての雰囲気をつくりだす。出せてるのか、分からないけど……。

 とりあえず、柔らかく優雅に笑って見せる。



「そうですわね。でも、そうなったら、わたくしに見る目が無かった、と思うだけですわ」

 それは、もう仕方ないこと。私が信頼して貰えなかったと言うだけのことだから。そして、私はサイラスの前で、目を閉じる。


 サイラスが近づいた気配がしたと思ったら、私の耳元で溜息と共に、

「これだから女は怖い……」と、聞こえた。


「俺に対するリナ嬢の信頼とはそういうことなんだな。どおりで、セドリックが俺を敵視してくる訳だぜ」

 もう、この人達のこの辺の考えが分からないのは諦めた。


「いいぜ。わかった。俺もホールデン家を潰したいわけじゃ無いからな」

「じゃぁ、とりあえずセドリック様の執務室に行きましょう。多分、クリフォード様もそろそろ王宮に着いてる頃ですので」

 私がそう言うと、ひょいとサイラスに抱きかかえられた。お子様抱っこだ。

「サイラス様?」

「お前、遅いもんな。兄が妹を抱っこしてもなんの問題ないだろう?」

 いや、すごく問題あるよ。この前兄様みたいって言ったこと根に持ってるなぁ。

 とりあえず、私が歩く倍の速度でいけるのでいいか……って、いいのか?

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