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第92.5話 頼み事は、部下のうちに(サイラス側)

 セドリックとリナの昇進が決まった次の日。

 仕事が一段落着いて、くつろいでいる時に、セドリックが俺の執務室に挨拶に来た。

 まぁ、今日までは一応、俺の部下だからな。挨拶にも来るか。

「セドリック・クランベリーです。失礼します」

「よう。近衛騎士副団長殿。栄転おめでとう!」

 俺は軽く手をあげ、よっ! という感じで言った。

 なんだって、いきなり副団長に抜擢だ。なんてな。まぁ、順当か。


「明日からですよ。今はまだ、貴方の部下です」

 おや? 早々に、『もうお前の部下じゃ無い』と言ってくると思ったのにな。

 何か思惑があるのか?

 部下としてのセドリックは、俺の命令にも従順で優秀だったからな。

 セドリックが、今日までは俺の部下だと言っているのなら、そう警戒することも無いのか?


「なんだ? 即座に、部下じゃ無いって言ってくると思ったのに」

「ホールデン騎士団長。リナ・ポートフェンをあなたの部下として保護して下さい。お願いします」

 セドリックは、おもいっきり俺に頭を下げた。


「ポートフェン司令官は、俺の上司になるのだが?」

 は~ん、そういうことか。

 俺の部下の内なら……と、立場を逆手に取ったな。


「部下のお前が頭下げたって、何の価値も無いだろ? セドリック・クランベリー第5部隊長殿」

 お前に甘い顔出来るほど、俺も余裕があるわけじゃないんでね。

 おい。今、こっそり溜息を吐いたのが見えたからな。

 用事が済んだのなら、さっさと帰れ。

「さて、挨拶がすんだなら下がって良いぞ。今日までお疲れさん。明日から近衛騎士団でがんばれよ」

 俺はシッシッという感じで追い払うつもりで言ったのだが。


「団長……いえ、サイラス・ホールデン伯爵。どうすれば、願いを聞き届けてもらえますか?」

 いきなり口調を変えて言ってきたので、思わずセドリックの方をみると、跪いた状態で俺を見上げていた。

 なんだ? こいつ。

 リナは、政略結婚の相手じゃ無かったのか?


「リナ・ポートフェンはもう自宅か?」

「はい。自宅屋敷に送り届けてから、こちらに来ました」

「じゃ、お前の指示じゃ無く、リナが俺の部下として明日やってきたら、部下として保護する。連絡取った形跡があれば、この話は無しだ」

 セドリックは驚いた顔をしているが、俺はリナで無くとも部下は保護してる。

 それは、今日までは俺の部下だと言い張るセドリックであっても同様だ。

 たいがい甘いよな、俺も。


「そういうことで、下がって良いぞ」

「ありがとうございます。団長。お世話になりました」

 セドリックは、俺の部下としての挨拶をして下がって行った。




 リナは次の日、自分の執務室の整理をすました後、騎士団団長の大部屋の方の執務室に来ていた。


「団長。おはようございます」

 リナの様子は普通だ。普通に他の隊長とも話している。

「今日の訓練はどこの部隊ですか?」

「今日は、第2部隊と第3部隊だな……って、リナ嬢、昨日辞令式出てなかった?」

 フィルの疑問はもっともだ。

 リナは今日も、新人騎士として訓練に参加しようとしているように、見える。


「へ? ああ。出ましたよ」

「正式に司令官になったって聞いたけど……」

「仕事出来ない子が、何、変な肩書き付けてんだって感じですよね」

 ぶっ……くくくっ。

 いや………笑っちゃいかん。いかんけど、この場にいた皆笑ってしまった。

 オルグレン隊長なんかは、紅茶吹いて、そこら辺が酷いことになっている。

 リナは、ギャグ言った覚えは無いんですけど……って言って、紅茶拭くの手伝ってるけど。


 昨日今日と、双方に監視付けてたが、連絡を取った形跡はない。

 まぁ、あの条件でセドリックが連絡取るはず無い、とは思ったけどな。

 俺にとって部下は保護対象者……セドリックに頼まれるまでもない。

 そういう事だ。

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