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第八話 残念

翌朝、早起きして、出勤前の父の『数字』を確認する…………予定であったが、

毎朝、目覚まし時計と熱い戦いを繰りひろげている俺には、到底無理な話だった


言い訳が許されるのであれば、昨夜『数字』の事を考えていたため、

なかなか寝付けなかった所為である…………という事にしておいてください。


そして、父の『数字』の確認は諦めて、(というか諦めざるを得ない訳だが……)

母の『数字』を確認してみるも、増えもせず、減りもせず、昨日と同じであった。


くそっ、変化がないと何のヒントにもなりゃしねぇ!


………まあいい。


俺には頼りになる(といいなぁ~と願っている)クラスメイトがいる。

きっと何らかの変化があることだろう。


そこから、この『数字』の秘密が解る…………かもしれない。


本当であれば、サンプルは多い方が良いので、

通学途中に出会う人のデータも欲しいのだが、

クラスメイトと違って、毎朝同じ人に会うわけではないので、

サンプルデータを取り辛い。


実際、昨日貴重なデータを提供してくれた赤ちゃん(そ~いやぁ、名前を聞き忘れたな)

に今日は会うことはなかった。


なので、通学途中に出会う人の『数字』を記録することは早々に諦めた。


しかしながら、記録無しでも確認できることもある。


昨日同様、下は幼稚園に通う園児から、上は公園で太極拳をしているお年寄りまで

『数字』を見たが、「0」を表示している人は、一人もいなかった。


逸る気持ちを抑えつつ、いつも通り教室に向かい、

朝のホームルームが始まるのを待つ。


2年生になったばかりであり、クラスメイトの名前をまだ全員分覚えておらず、

昨日のメモも、名前でなく座席でメモしてあるので、

全員が自分の席に着席しないと、確認ができないのだ。


ホームルームが始まると、先生の話はそっちのけで、

『数字』の確認を始める。


俺のクラスの人数は俺を含めて30人。

俺を除くから、29人。

そこに担任の先生を含めるので、結局30人を確認する。


結構、大変な作業だ。


幸いなことに、俺の席は一番後ろだったため、

振り返ったりすることなく確認できたので、そこだけは助かった。


もし、一番前の席だったら、先生が話をしている中、

ずっ~と後ろを見続けるという蛮行を行わなければならないところだったからな。


ある意味ラッキーだった。


しかし、確認の結果は、ラッキーとは正反対であった。

人はそれをアンラッキーと呼ぶ。


とか言っている場合ではなく、現実を見よう。

(『数字』という非現実を見ているけどな!)


決して良い結果では無かったが、最悪と言うほどではなかった。

全員の『数字』に変化が全く無い――最悪の結果――という可能性もあったのだから……


けれど、30人中『数字』に変化があったのが5人だけって、どうなのよ!


少なくね!


いや、基準がないから何とも言えないけれど……


担任教師に変化は無かったから、変化があったのはクラスメイトのみ。


3人が男子で、2人が女子。


そして数字の変化だが、4人が1増えただけ。


1人だけ3増えている男子がいるけれど………


変化量、少なくね!


いや、基準がないから何とも言えないけれど……


あれ、この科白…さっきも言ったような………

(言ってはいないな、思っているだけだ)


人数少な!


変化少な!


とどのつまり、ヒント少な!


くそぉ~、ちょっぴり期待していただけに、

か・な・り 残念だ。


本当に残念だ。


大事なことなので2回言ってみた。


心の中でだけどな。

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