第四話 沢山
通学路では特に問題もなく――もちろん車を轢くことも無く――無事に学校にたどり着く。
…………見かける人の頭に、もれなく『数字』が表示されていることを除いては……な…………はぁ~っ。
うん。
現実とちゃんと向き合おう。
どうなってんだ、これは。
正直、『数字』が表示されている人物を、何人かは見かけるだろうなぁ~とは想像していた。
実際、テレビの出演者には一人も居なかった訳だし。
しかし、蓋を開けてみると、あらビックリ!
会う人、見かける人、洩れなく、全員に『数字』が表示されていやがりましたよ。
これは想像してなかったよ!
何で全員なんだよ!
多すぎだろ!
…って切れても何も解決はしないしな。
とりあえず落ち着こう。
通学路を歩いていて、男女訳隔てなく――中にはどちらかわからないおばさん(おじさん?)にも表示されていた。
……性別は関係ないようだ。
年齢も、下は母親に手を引かれて歩いている幼稚園児から、
上はボランティアで子供たちの通学を見守るご老人まで、洩れなく表示されていた。
年齢も関係ないようだ。
いや、まてよ年齢といえば――ベビーカーに乗せられていた赤ちゃんにまで『数字』は表示されていた。
思わず二度見してしまい、赤ちゃんの母親に少し怪訝な顔をされてしまったので、しっかり覚えている。
念のため、言っておくが、その母親とは顔見知りであったので、特に不審者扱いはされていないからな!
いや、本当!
確か、半年ぐらい前に生まれた…となんとなく覚えていたので、
「うわぁ~、半年でこんなに大きくなるんですね。
お母さんに似て、将来美人になりそうですね」
「あら、ありがとう。
この前の6ヶ月検診の時に先生にも言われたけれど、
うちの子は、6ヶ月の子の平均よりも少し大きいらしいので、
よりそう感じられるのかもね」
と、無難に会話していたので特に怪しまれてはいない筈だ………多分。
で、何の話だったっけ……そうだった。
そう年齢の話だ。
いや正確には違うのだ。
確かに俺が『数字』を確認した人物で最年少であることは間違いない。
何せ、一歳にも満たないのだからな。
しかし、俺が思い出した理由は最年少だからではないのだ。
先程述べた通り、老若男女 全てに『数字』が表示されていた。
『数字』の大小は人によりけりで、極端に大きい『数字』の人もいれば、
かなり少なめの『数字』の人もいた。
何とな~くではあるが、年齢が高いほど『数字』が大きい傾向があったように思う。
勿論、例外もある。
小学生の女の子がとんでもないくらい大きい『数字』を表示しているかと思えば、
年金生活をしているだろう、ご老体がかなり小さい『数字』を表示している事もあった。
けれども、一人として「ゼロ」を表示している人はいなかった。
………その赤ちゃんを除いては。
そうなのだ、その赤ちゃんのみが「0」を表示していた。
これは、この『数字』の秘密を解き明かす、大いなるヒントになると俺は思ったんだ。