第ニ十六話 終了(或いは、開始)
はいっ!
という訳で、昼休みです。
ターゲットはどこかな?
おっ、いた、いた。
一人だけ、周りの人に比べて、ズバ抜けて大きい『数字』が表示されている。
丁度いい感じで、四人グループで談笑しているな。
側を通り過ぎる感じで、聞き耳を立ててみる。
「…………それでねぇ、美夏は言ってやったの。
美夏はそんなに甘くない!ってね」
「うわぁ、美夏ってば、そこまで言う~」
「でもぉ~、美夏ってわりとぉ~、そういう所あるよぉ~」
「そだねー」
「えっ、えっ、美夏はそれ程でもないよ~
美夏よりも、香奈の方が………」
「な、何で私なんだよ!
私よりも、絶対!美夏だよ!」
「ウチ等にぃ、言わせるならぁ、どっちも大差な~い かなぁ?」
「そだねー」
………これ以上訊き続けるのは、さすがに不自然だな。
しょうがない、このまま通り過ぎよう。
見事に『数字』が4増えました。
このペースで増え続けたら、こんな大きな『数字』になるのも納得だよ。
念のため言っておくと、
1番目の発言者と5番目の発言者が同一人物で、
『数字』が4増えている。
今更ながら、メタな事いっているなぁ~ オレ。
さすがに、もうわかったよね?
再び念のため、ヒントを。
もし、解らない人がいたならば、一人称にご注目。
更にもう一つ、『数字』が4増えている人以外の3人の『数字』は増えていません。
さて、遂に正解を発表します。
もし、正解がまだわかっていなくて、
絶対に自分で解き明かしたいのなら、ここで引き返そうね。
………………
……………
…………
………
……
…
いいですね?
ここから先は事故責任…
…もとい自己責任で。
こうして、昼休みに検証を終えた俺は、
ウィンドウを開いて、
「自分の名前を言った回数」
が表示されているのを確認して、
「はい」を選択………
…………………しなかった。
…だって、まだ時間の猶予はあるみたいだし、
今度こそ正解だと確信しているけど、
万が一があったら嫌じゃん!
時間があるのだから、もう少し検討して……
ペナルティも怖いし……
それに、来週になれば父も帰ってくるから、
いろいろと話を聞いて確認をとれるしぃ~。
あ~、も~、へタレと言うなら、言えばいい!
べ、別に、誰に迷惑をかける訳ではないし!
そんなことより、
午後の授業中も、クラスメイトの『数字』を確認……
……と思ったら、ほぼ全員の『数字』が増えていた。
そういえば、佐藤を質問攻めにしていたもんな……
まあ、いい。
『数字』の条件が判ったのだから、
今度は変化する瞬間だけを見ればいいのだから。
……今日の午後の授業中にその瞬間を見ることはなかった。
少々落ち込みはしたが、もう条件は判っている。
学校帰りに、注意して見ていれば、きっと見かける事があるだろう。
……………オレって、バカかもしれない。
条件が判っていたので、
『数字』が大きい人に目を向けるようにして、
人の名前が聞こえるたびに、反応して注意して見た。
……もしかしたら、変な人と思われていたかもしれない……
……いや、それを考えるのはやめよう。
そのおかげか、2回ほど『数字』が増える瞬間を見ることができた。
そこまでは、良かった。
そこでとある問題に遭遇した。
…………その人の名前が判らないんだよ~!!
なんで、世の中の人は、学生みたいに名札をつけていないんだ~!!
学校では、名札をつけているはずの、小学生や中学生まで、
学校外のせいか、名札を外しているし~!
そこっ!
近所の人の名前ぐらい覚えておけよ!
と突っ込みを入れた貴方!
俺だって、苗字だったら覚えているよ!
でも、下の名前まで覚えている人って、結構いなくね!
いつも、家の前を掃除している、山本のおばあちゃん。
挨拶はよく交わすけど、下の名前までは知らない。
よく買い物に行く(正確には行かされる)八百屋のおじさんも、
おっちゃんと呼ぶだけで、下の名前は知らない。
一応、苗字は田中だとは知っているが、それすら呼ばない。
どうよ!
いや、俺は覚えているよ!
っていう方にはごめんなさい。
でも、俺は覚えていないんだよ!
………しかも、それだけでは無いんだ!
俺は家に着いてから、致命的なミスをしている事に気が付いた。
それも2つも!
1つは……まあ、リカバリー可能かな。
…ても、印象最悪かもなぁ~?
恐らく、クラスメイトで俺だけ、転校生の佐藤に、
自己紹介していないんだよ!
来週の月曜日にすれば大丈夫だよね? ね?
誰かぁ~、大丈夫と言ってくれぇ~!!!
佐藤、結構可愛かったからなぁ~
はぁ~あ。
まぁ、まだこっちは、ちょっとした精神的ダメージはあるが、
害がある訳ではない。
もう一つが、大問題だ。
ちなみに、この問題に気付いている方はいるだろうか?
気付いているなら、たいしたもんだ!
なんせ、俺はスッカリ忘れていたからな!
しょうがないだろう、こんなに色々あったのだから、
忘れてしまっても………
本当に忘れていたんだよ!
ピコーン!
この『RINNE』の着信音を聞くまでは………
どうする?
「無視する」
「言い訳をする」
「正直に全てを話す」
ピコーン!
ピコン!
ピコン!
……
…
………この後、俺がどうなったのか?
一つ言える事は、
I'm alive.
…じゃなくて、
しばらく、この『数字』(中二病)は続くのだが、
その話は、また機会があればという事で。
今回はここまでだ。
ここまで読んでくれてありがとうな!
またな!




