第十八話 転入
探りを入れようと思っていたら、
向こうからやってきた。
これが鴨ネギってやつか。
……いや、違う気がする。
結局『数字』が増えた理由は判らずじまいだし…
何はともあれ、そろそろ本当に学校に行かないとまずい時間になりつつある。
「じゃあ、今度こそ本当に行って来ます」
「はい、車に火をつけるのよ!」
どこのテロリストだよ!
さぞかしよく燃えることだろうよ!
あれ、でもハイブリッドカーなら…
ってあれもガソリンを使うか。
100%電気カーなら……大丈夫なのかな?
いや、やらないからね。
マジで。
そして、決して突っ込まないからね。
突っ込んだら負けだと思ってる。
登校中に新たな発見などはなく、
無事に教室にたどり着く。
だが、クラスの中が何やらいつもより騒がしい。
何かあったのだろうか?
クラスメイトの会話が聞こえてくる。
「転校生がこのクラスに来るのは間違いない」
「何でだよ、ソースを示せ!」
「日直の鈴木が担任に、空き教室から机と椅子を運んでくるように言われたらしい。
ほら、あそこに昨日まではなかった席があるだろう」
「確かに。
机と椅子が一つ多いな。
でも、それが必ずしも転校生のものと言えるのか?」
「もう一つ情報がある」
「どんな情報だよ」
「ある意味こっちのほうが重要な情報かもしれん。
田中が朝練の時に、見知らぬセーラー服を着た、生徒らしき人物が職員室に入るのを見た
との事だ」
「「「「な、何だってぇ~~!!!」」」」
数人の男子生徒の声がハモる。
ちなみに、ウチの学校の制服はブレザーである。
「と、言うことは、転校生は『女子』なのだな」
「まあ、どこぞの海兵が来た可能性もあるかもしれんが……」
ね・え・よ!
なんで、普通の中学校に海兵がやってくるんだよ!
「しまった~!!!、何で俺は『遅刻す~る~』と言いながら、
食パンを咥えて、遅刻ギリギリに走って登校してこなかったんだ。
フラグを立てられたかもしれないのに~」
ね・え・よ!
食パンを咥えながら走って、どうやって喋るんだよ!
しかも、転校生(仮)は既に学校に到着しているから、
遅刻ギリギリに来ても、曲がり角で衝突とかねぇから!
「まずいぞ!
幼稚園のときに、遠くに引っ越していったあの子、
何て名前だったっけ?
向こうが、名乗る前に、名前を叫ばないと、
フラグとしてちょっと弱いからな。
……一度も話したことなかったけど」
ね・え・よ!
万が一、その引っ越した子だとしても、
名前を思い出せないような相手が、
お前の名前をなぜ覚えている?
ましてや、一度も話したこともないなんて、
お前の存在すら覚えていないよ!
「×××………●●●………◇◇◇」
まだ、何やら妄想を並び立てる男子どもがいるが、何故だろう?
これ以上書いていると、色々な方面に喧嘩を売っているように思われてしまいそうだ。
よって割愛させていただく。
そんな騒ぎは、担任が教室に入るべくドアを開けるまで続いた。
「お前ら、お喋りしてないで、席につけ!
さもないと、お前等が興味津々の転校生を紹介できないぞ!」
瞬く間に、静かになり、全員が自分の席に着く。
「ようし、じゃあ、入って来い!」
担任が、ドアのほうに声をかけると、
セーラー服の水兵……
…ではなく、
女子中学生が入ってくる。
あれ、結構……可愛いくね?
と俺が思うや否や、
クラスの男子の9割程が、叫んだ。
それは、何と言っているかは聞き取れないが、
喜びの雄叫びであった。
お前等、うるさいよ!




