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第十三話 落胆

…………いいアイデア、だと思ったんだけどなぁ~ トライ。


結論から言おう。


無理。


そう、無駄ではなくて 無理 である。


ちょっと想像力を働かせれば判ることだった。


5時間目はターゲットが英語「教師」だったので観察が可能だった。


だって、授業中に生徒が先生をじっと見るのは(程度にもよるが)それ程不自然な事ではない。


し・か・し、授業中に他の生徒を観察し続けるとか、あまりに不自然すぎるだろう!


そりゃあ、前の席の生徒をじっと見るなら、黒板を見ていると装えるかもしれない。


しかし、それでは、仮に『数字』に変化があっても、何によって変化したのかが、判りづらい。


前に座っている生徒が、くしゃみをして『数字』が増えたならば、判るかもしれないが、

消しゴムを使ったとか、落書きをしたとか、ペン回しをしたとかでの変化だったら、全く判らない。


かといって、斜め前や横の生徒をずっと見ている訳にはいかない。


先生に注意される可能性が高いし、

仮に注意をされなくても、他の生徒、あるいは本人に気付かれたら、どうなることか。


俺がイケメンで、相手が異性であれば、もしかしたら「私の事を好きなのかも」

と好意的に取られることも、あるかもしれない。


けれども、非~常に残念なことに俺はフツメン(少なくともブサイクではない………と思っている)なので、、

普通に「キモイ」と思われるのがオチだろう。


逆に同性だったら

「なにガンくれてんだよ!」

とか、

「うほっ、いい(おとこ)

とかなったら困る。


特に、後者がいたりしたら、俺は断固登校を拒否させていだだく。


ともかく、授業中に他の生徒を観察するのはリスクを伴うため、教師を観察する事にした。


………訳なのだが、授業中に教師が行う行動などたかが知れている。


これが「体育」とか「美術」などであれば、結構な変化があるのだが、あいにく6時間めは「国語」


教師のとる行動にそれ程大きな違いはない。


実際、国語教師の『数字』が増えることはなかった。


ちなみに、前回の国語は、昨日の午前だったため、昨日から今日の変化も判らなかった。


そして、俺がいかに自分の考えが浅はかだったと知るのは、その後だった。


6時間目が終われば、ショートホームルームの後に、解散となる。


つまり、自由になる。


これで誰かを観察していても「先生」から注意される心配がなくなる。


………などと考えていた自分を殴ってやりたい。


実際に自分を殴ると、痛いうえに、病院に行くようにすすめられたり、

カウンセリングを受けるよう連行されたりするので、実行することはないけどね。


考えてみればいい、放課後になっても、自分の席でずっと座り続けている生徒がどれだけいるかを。


………一人もいませんでした。


部活動に急ぐもの、帰宅するもの、目的の違いはあれど、別段教室に残り続ける理由も無いため、

多くの生徒は教室をあとにする。


一部残っている集団もあるが、それとて、自分の席を離れ、教卓前の辺りでかたまって無駄話をしている。


あれは、補習を受ける奴等だな。


小学校からのくされ縁の高野がいるから間違いないだろう。


そちらを見ていたことに気がついたのか、高野が俺に声をかけてくる。


「なんだ、難波も居残りの仲間入りか?

 それとも、オイラになんか用か?」


って、そうだよな。

こうやってジッと見ていたら、用があるかと思うよな。


俺だって、高野がジッとこっちを見ていたら、声をかけるわ。


「いや、何でもない。

 ちょっと、考え事をしていただけだ。

 補習頑張ってな!」


「おう、テキトーに頑張るわ!

 じゃあな!」


「おう、また明日!」


そう応えながら、俺は教室をあとにした。


そうだよ、知り合いがこっちをジッと見ていたなら、声ぐらいかけるよな普通。


ってことは、知り合いを観察する訳にはいかないな。

………隠れてこっそり見るのでなければ。


かといって、よく知りもしない人をジッと観察していたら………あきらかに不審者だよなぁ~

K察を呼ばれかねない。


あれっ、この『数字』が変化するのを観察していればいいというアイデア、

アイデア自体は悪くないが、実行するのって か・な・り難しくね。


っていうか、実行不可能じゃね。


無理じゃね。


偶然『数字』が変化するのを目撃するとかじゃないと駄目じゃね。


何か他の手を考えないとだめかもな………


そんな事を考えながら、俺は帰宅した。


………あっ、また部活サボっちまった。


……まぁ、いっか。

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