表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私。異世界で百合してくる。  作者: 瑠璃色はがね
第1章
30/45

私の左目は蝶を観る 09(Σ349)

 気が付くと、目の前には・・・黒猫のドアップが迫っていた。


「・・・テト様、近い。あとチョット臭い」


「なっ!? 臭くなどない! 絶対に臭くなどないぞ! ちゃんと風呂も入るし歯も磨いておる!」


 風呂にも入って歯も磨く猫ってあまり想像したくは無いが、ちょっと可愛いかもしれない。

 ただお風呂は、湯船が抜け毛だらけになりそうだ。


「はぁ~・・・よりにもよって最悪のパターンだぁ・・・」


 私は身体を起こしながら、深く、深くため息をつく。

 見慣れた草原には、特に変わった様子は無い。


「その感じからすると、最後に何か掴んだのじゃな?」


「ええ、はい。まぁ・・・はぁ・・・」


 正直考えたくはないが、それも因果なのだろう。

 やはりあの蝶は一連の物事に繋がっている。

 私はその確信だけは確かに得ていた。


「あ、そういえば今回は前日に戻れてるんでしょうか」


「そのはずじゃが、一応スマホで確認してみよ」


 言われて私は直側に転がっている鞄からスマホを取り出す。


 現在の日時は、3月31日の午前11時2分。


「よかった・・・予定通り1日の猶予はありますね」


「そのようじゃな。この介入が成功しておるのにステータス隠蔽が出来ぬのが気になるがの・・・」


 確かに、もう一日多く巻き戻す、という時間逆行が出来ていて、ステータス改竄が出来てないのは不思議だ。

 もしかしてステータスに関しては、あのギルドという場にのみ他の要因があるのかもしれない。


 いや、ステータスはこの際後回しにしよう。

 それよりも目下の問題はあの最終日である。


「最後の瞬間、あの黒尽くめが振り下ろした武器に―――鉄仮面さんの店でみた蝶が止まっていたんですよ」


「なん・・・じゃと・・・!?」


 ついでに武器その物も恐らく私が売りに出し、蝶が止まっていた武器と同じ可能性を伝える。


 単純に。

 本当に単純に考えるなら、あの黒尽くめが「鉄仮面」という可能性が高い。

 ただ手元の情報が、武器と、蝶と、そして背丈くらいなのだ。


「せめて声を聞けておればのう」


「ですねぇ・・・声を出させないまま巻き戻されたのは失敗でした」


 実際この街には、同じ様な背丈の男性はいくらでもいる。

 例えばカトリーヌさんも同じくらいだし、最初に戦った子分の方も同じくらいだ。

 背丈だけでは断定しきれず、武器と蝶の情報にどうしても引っ張られてしまう。


「まぁ前回は情報集めが目的なのじゃ。切り替えてミーティングとしよう」


「はい・・・」


 正直、分からなくなった事だらけなので少し考えるのをやめたくなる。




******




 二ヶ月ぶりの穴倉。


 またも、何者かの巣をお借りしている私とテト様。

 ほんとゴメンね、また何か置いておくからね。


「ふむふむ。蝶の情報を纏めるとざっとこんなものかの」


 地面には、木の棒でテト様が書いた一連の流れ。

 縦に時間軸を、横には人物名を並べて相関性も考慮しつつ確認している。


 ・最初の森


 ・査定をしてる鉄仮面の所


 ・アンジェとのお風呂


 ・カトリーヌの背後


 ・黒尽くめの武器(鉄仮面と同様?)


 蝶の出てきた一覧はこんな感じだ。

 この5個の因果と思われる状況を、さてどう変えたものだろうか。


「あと、一応これらも大事な情報じゃ」


 ●時間逆行の原因


 ●隠蔽されていないステータス


「特に逆行については解明しないまま放置もできませんよね・・・ぬぬぬ、頭いたい」


「ワシもちょっと頭が痛いのう・・・糸口が少なすぎる」


 悩んでいても仕方はないのだが、動きを変えるにしてもどう変えるか。

 その選択を間違えると更に蝶が増えていく可能性もある。

 正直、D●ールみたいに「これをしたからこうなった」が明確ならばもっと楽なのに・・・


 やれる事の順序を立てていくと、基本的には蝶をみた順での行動になる。


「まずは、最初の盗賊ですよね・・・これが繋がってるとしたら、鉄仮面さんのところの武器、でしょうか」


「じゃのう。選択肢その1。盗賊から武器を接収せず放置する、が良いかの」


 それがベターだとは思う。

 武器を街に私が持ち込まない事で、少なくとも襲撃者と鉄仮面さんのところは蝶を回避できそうだからだ。


 ただその場合、問題が一つある。


「そうするとマトバが手に入らなくなるんですよ・・・以後のハンター生活に支障が・・・」


「ぬぅ・・・そうか、あの武器の下取り価格あっての入手じゃったか」


「そうなんです・・・いえ、あれ。意外とそうでもないのかな」


「ほう?」


 良く考えると、私が手に出来る初期金額は大幅に下がるが、盗賊の報奨金で買えなくは無い。

 ただしそれ以降暫くの間、とても悲しいかな、アンジェのヒモ女みたいな生活をするハメになるが。


「・・・私が彼女のヒモになれば、多分マトバは手に入ります」


 ぶっちゃけ問題点があるとすれば、私のプライドだけだ。

 恋人に金銭的な意味で甘えまくる生活・・・さすがの私でも異世界地球問わず駄目だろうそいつってなる。


「お主それは・・・いや、じゃがそれで蝶が消せるならばやってみる価値はあるか・・・すまぬが早百合。今回はクズ女として頑張ってくれ」


「うぅっ・・・まさか異世界に来て誰かのヒモとして生活する事になるとは・・・」


 恋人に愛を振りまく代わりにお金を出してもらう生活。

 今回のループでは、アンジェとの性生活に今まで以上の時間を割く必要がありそうだった。




******




「グヘヘ、兄貴ぃ。こんな所にマブい女が以下略―――」


 もう聞き飽きた展開なので省略します。

 こいつら本当に変わらないなぁ・・・もうちょっとバリエーション用意してほしい。


「(ふぅ。ここまでは予定通り)」


 翌日4月1日。

 いつもの森で、いつもの展開。


 アンジェを助けて盗賊から金品を物色。

 ただし今回は武器を持ち去らないという選択をした。


「本当に宜しいのですか?」


「血のついた武器を持っていくのは、ちょっと気持ち的にね・・・」


 などと適当な理由を付け加えてみるが、アンジェはすんなり頷いてくれた。


 この後も予定通り、アンジェの屋敷で歓迎され、夜にはテト様と部屋で今回の流れの確認作業。

 そして内心、これから始まるヒモ生活に心を痛めながら、初日を終えた。



 二日目。

 

 本来ならば、鉄仮面の店、ハンターギルド、昼食の順番で動いていたが、ここも先日テト様と話して順序を入れ替えてみる。

 まず最初にハンターギルドへ行き、身分証登録と報奨金の話を先に済ませ、そこから昼食。

 そして再度ハンターギルドにて報奨金を受け取ってからハンターの登録を済ませ、鉄仮面の店へと訪れた。

 

 先にハンター登録をする流れでも何か変化があるかと思っていたが、アンジェに「ハンターをやってみようと思っている」と告げると「早百合ならできると思いますわ!」という大差ない答えが返ってきた。

 勿論それ関連で蝶は見ていない。


 武器を査定してもらうという流れがない分、どう変化するか不安ではあったが大きな変化は無かった。

 アンジェが鞭を見ているタイミングも大差なく、私がマトバの棚に行くと鉄仮面先生の同じ武器講座が開始される。


 今回、先にハンター登録を済ませておいたので、地下室の後でマトバを購入すると、そのまま風魔法講座が始まった。

 案の定、風魔法講座のスパルタ感は変わらず、私はもう数えるのも面倒なくらいの風魔法を叩き込まれる。


 多少の前後や差異はあっても、大きな結果に変化は無かった様だ。


 唯一の違いは、鉄仮面のお店で盗賊の武器がなく、蝶を見る事は無かったという点。

 ひとまず、二番目の蝶はクリア出来たのだろう。


「(となると次は・・・お風呂、よねぇ・・・)」


 今夜やってくるお風呂イベント。

 そこの蝶を消すにはどうすべきか。


 選択肢は二つ。


 1:お風呂でそのままアンジェと恋仲になる。

 2:アンジェと恋仲になるのを理性で我慢する。


 まぁ2は、ヒモ生活確定の今回を考えると無し。

 あと個人的にも我慢とか絶対むり。


 故に答えは既に決定していた。


「(そういえばお風呂プレイは初めてだ・・・)」


 こんな時だというのに、正直新しい展開にワクワクしている自分。

 既に頭の中では新ジャンル石鹸プレイの事でいっぱいである。


 己の中に救うドスケベ魔獣は、今日も自重する気が無いらしい。

 自重などしてなるものか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ