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私。異世界で百合してくる。  作者: 瑠璃色はがね
第0章
3/45

因果報答 01

 百合。それは至高にして嗜好のラブ。

 

 世には「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉がある様に、魅力的な女性の形容詞としても用いられる。


 すなわち百合とは、女性のもっとも輝いた様相を体現した素晴らしい言葉なのである(暴論



 私は【汐 早百合(うしおさゆり)

 4月1日生まれの15歳。

 この春に進学したばかりの高校一年生。

 

 趣味は読書。といっても、私が好んで読むのは―――


「ウッシー、歩きながら本読むの危ないってー」


 唐突に私の思考を邪魔する声。声の主が誰なのかは分かっている。


「大丈夫。周囲の気配を察知して歩いてるから」


 勿論嘘である。そんな武術の達人の様な事が出来るわけはない。


「マジで? ウッシーそれヤバくね? もう気とか使えるんじゃん?」


「私に出来るのは気配の察知だけだよ。人見知りを極めればヒメにだって出来る」


「やっべー自慢になってねー」


 ケタケタと笑いながらも、隣を歩くその人物はそれ以上ツッコミを入れては来ない。


 彼女は【相沢 小姫(あいざわこひめ)

 私と同じ高校1年生で、中学から数えて3年ほどの付き合いになる数少ない友人だ。


 見た目はギャル。喋り方もギャル。学校の成績もギャル。

 黒縁メガネに伸ばしっぱなしの黒髪な私とは、本来相容れないカテゴリーの女性。

 そんな彼女と私が、こうして仲良く? 登校しているのには、それはそれは色々なドラマがあったのだけれど、面倒なので過去回想は省く。


 私は―――彼女が好きだ。


 好きにも色々あるだろう。

 友人としての好き。家族に対する好き。ペットに対する好き。


 でも、私の好きはそれじゃない。


 私は彼女が好きだ―――性的な意味で。


 元々私にはそういう素養、つまり百合属性が備わっていたのだと思う。


 先ほども言ったが、私の趣味は読書。

 だが愛読書は「百合作品」が9割を占めている、百合に特化した読書家だ。


 ジャンルは問わず、SF、サスペンス、ファンタジーなど何だって読むが、百合要素のある作品、もしくは脳内で百合補完が可能な作品を好む。

 大元の読書好きは祖母が集めていた赤川次郎作品にハマった事だったのだが、祖母が隠し持っていた未成年お断りの百合小説を読んでしまった事で覚醒したのだと思う。

 多分、このさがは祖母からの隔世遺伝なのだと思いたい。おばあちゃんが悪い。


 非日常に憧れるという小説好きが、遺伝子に刻まれていたと思われる百合要素を覚醒させたのだ。

 私が女の子を好きになるのも当然の帰結であると言えるだろう。


 尚。別に男嫌いというわけではなく、単純に女性にしかドキドキできないというだけの至って健全な百合である。

 健全とは何か。それについては深く考えないようにしているので割愛。


 とにかく、私は彼女が好きだ。


 一人の女性として、同姓として彼女を愛している。

 それを悪いとは微塵も思っていない。


「あれ。もう読むの止めんのー?」


 不思議そうな顔で小姫が聞いてくる。

 思考が散らかってしまい読書ではなくなったのだ。

 

 まさか、隣に好きな人が居るのに本なんて読んでいたらもったいない、等というクールな台詞が言えるわけもなく、黙ったまま本をしまい、チラリと彼女に視線を向ける。


「友達と歩いているのに本を読んでるのは失礼だと思ったの」


「ウッシーはいい子だよねー。誰にでもそうしてればボッチにならないのにさー」


「友達は選ぶ。あとボッチいうな」


 彼女は私の大切な友達だ。

 だからこそ、私は私の恋心を隠し続ける。


 悟られて、知られて、嫌われてしまうのがとても怖いから、私は「好き」を絶対に言わない。


 現実を知っている。

 現実を受け入れている。

 

 だからこそ、この現実の中にいる限り私の恋が実ることはないだろう。

 故に私は、非現実に没頭できる小説が好きなのだ。

 

 それこそ異世界にでも行かない限り、私は私の好きを謳歌できない。

 辛辣で無常な現実を知っているからこそ空想や物語は輝くのである。

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