転生、生まれたときから妹がいた!
その日、俺は死んだ……はずだった。
観光地で吊橋を渡っている時地震が起きたのが始まりだった。
下は川、高さ30メートル、あっ……死んだわこれ。
落ちている最中は意外と心は穏やかで、生きてても良いこと無かったしまあいっかな。
などと思っていたのだが、どうやら俺はよほど悪運が強いらしい、目を開けると真っ白な部屋に居た。
なぜこんなところに?まさか神様が転生でもさせてくれるとでも言う気だろうか?
「おまたせしました!当たりです!」
ん?どこから声がしたな?
そのとき、この真っ白な部屋の壁に長方形の溝ができたかと思うとそこがドアになってこちらへ開いた。
「いやー、失礼しました。あなたの担当天使のラファエルです!短い間だけどよろしくお願いします」
何だコイツ?ヤケのノリが軽いな、大丈夫かよ?しかし話さないことにはどうにもならんな。
「天使?まあいいや、俺死んだの?」
「そうです!あなたは不慮の事故で亡くなったことになってますよ、でも大丈夫です!私がやり直させてあげます」
「いや、別にあんな人生もっかいやろうとも思ってないんだけど……」
「ご安心を!私の役目は無害……じゃなくって、善人を面倒……ではなく、事情のある異世界に転生させることです」
「ちょいちょい不穏ワードが聞こえたような気がするんだけ」
「気のせいです!ここに突然連れてこられたから疲れてるんです!私達は公正な組織ですよ!大丈夫です!」
「そ、そう。まあいいや。転生ってそんなにいいの?」
「もちろん、あなたのことを無条件に愛してくれる人のたくさん居る世界ですよ、
ハーレムですよハーレム。ちょっと過疎化が進んでますが……」
「異世界に過疎も何もないんじゃないかな?」
「色々事情があるんです!私だってやりたくな……ゲホゲホ、その世界担当が私なので環境は保証しますよ」
「どうせ魔王が居たり治安が悪かったりするんだろ?過疎ってそんな事情が大半だし」
「そんなことないですよ!気にしないでください!、治安だって良いんですから。」
「で、なんで転生させてくれるの?俺そんなにいい人間だったとも思わないんだけど?」
「色々勘案さてもらいましたが、あなたは是非私の世界に来るべき人材だと思ったんです、ピーンと来たんですよ」
「随分熱心だな」
「私だって担当してる世界が無くなったら失業するんですよ!しょうがないんです、こっちも必死なんですから無用な詮索早めてください」
面倒な事情があるようだ、天使にも失業あるんだ。
「なんでその世界って過疎ってるの?治安もいいなら転生する人多いんじゃない?」
「行けばわかります。こっちも先が詰まってるんでそろそろ決めてください」
「じゃあもう一つだけ、転生しないって決めたら俺どうなるの?」
「あなたは自分が天国にいけると思ってるんですか?私が審査結果を決めるわけじゃないですけど、あなたが自分で考えたとおりですよ」
むぅ……、審査制なのか、あんまり善行積まなかったしな、ヤバいだろうか?
「さあさあ、早いとこ決めてくださいよ、私だって担当世界にいかな人に時間かけてられないんですよ」
急かすなあ……、でもまあ最悪もう一回転生のチャンスある気がするしここは異世界にかけてみるか。
「わかった、転生するよ」
「分かりました!流石です、私が見込んだだけのことはあります!」
調子が良いなあ……。
「じゃあ、ちゃちゃっと転生しますね!世界維持のために長生きしてくださいね!約束ですよ!」
俺のためじゃないんか……徹底してるなあ……。
などと考えていると、足元から光りに包まれてだんだん体が消えていってる。
目が覚めるとまっさきに気づいたのは声が出せないことだった。
声を出そうとすると泣き声に変わっていく。
そっか、転生であって転移じゃないから0歳からやり直すのか。
意識が混濁していく中で声が聞こえた気がした。
「よく頑張ったな、かわいいお兄ちゃんだぞ」
なんだ?違和感があるな?
俺は生まれるところからのやり直しじゃないのか?何故お兄ちゃんと呼ばれてるんだ?
次に記憶は3歳のときのものだ。死ぬまでの記憶とここまでの間の記憶は3年間の断絶がある。
「お兄ちゃん、いい子にできましたね、えらいですよ」
ようやく意識と記憶が確かになってきたのだが、俺には妹がいるのか?
「かーさん、いもうとはどこ?」
俺はできるだけ疑われないよう子供っぽく訊いた。
「私と菖蒲がいますからね。いいこにしててくださいね」
俺は当たりを見回す。
俺より小さい子は見当たらないな……、今はいないのか?菖蒲という子のことを訊いてみよう。
「あやちゃん、どこ?」
このしゃべり方は随分と面倒だ、もう少し成長していればまとめて質問できるのだが……。
「私はここですよー、つーちゃん」
そういったのは日本では小学校低学年程度だろう女の子だった。
「おねえちゃん?」
「おねえちゃん?誰ですかそれ?私は筑紫お兄ちゃんの妹ですよ」
どこからどう見ても年上だろう少女に妹だと言われてしまった。
嫌な予感がする、あの胡散臭い天使が言いかけていた「面倒」っていうのはまさかこれか?
数日後、母親と散歩中に本らしきものがたくさん並んでいる建物を見つけた。
もしかしてこれは図書館か?それならこの微妙にズレた世界の違和感の正体が分かるんじゃないか?
俺はさも自然を装って図書館の方に歩いていった。
「つーちゃん、本をよみたんですか?あなたは将来賢くなりそうですね」
よかった、止められなかった。
俺は図書館に入り、この世界の基本が載っていそうな本を開いてみた。
そこには、この世界では久しく男の子が自然には生まれていないと書いてあった。
さらにその本には男女が仲良くするために様々な法律ができ、
家族は仲良くするもの、だから皆が家族になれば皆仲が良い。
姉弟より兄妹の方が仲が良いことが多いので、この国の男と女は全て兄妹の関係とする。
なんだこれ……発想がおかしいにもほどがあるぞ。
ということはあれか、あの時菖蒲と名乗った女の子は妹として扱えというのか?年上だろう?
それで過疎化しているのか?と思ったのだがそうではないらしい。
この世の歴史を紐解いてみると、そもそも人間はの始まりは男女間の仲が悪くなった時代があって、
その後戦争にまで発展した挙句男が生物兵器まで投入し、その時、遺伝子を書き換えられ、すべての男に生殖能力が無くなったらしい。
その時に男は不要論が上がって、自然にできた子供は全て女の子になるように遺伝子書き換えが行われたようだ。
戦争は終わったが元通りになるかと言えばそんなことはなく、男の大半は全戦争のトラウマで付き合うことさえしなくなったようだ。
そこで女性陣が神頼みに境界で祈っていると、そのとき祈りを捧げていた人の一人が男を出産し、
これは神の贈り物だということで、それからずっと男の誕生は神頼みにしているらしい。
わかったぞ、どうやらあの天使がクビにならないように自分に祈りを捧げている奴らに転生者を誕生させたんだな。
どうしたもんかな、この状態。
そりゃあ転生だって少なくなるだろう。
主な過疎の原因は、女社会で男は冷遇されていた時代の意識のままの年齢層がまだまだ多いから
数少ない男と結婚しようと考える人も少ないのが理由のようだ。
ハーレム……なのだろうか?
それにしたって過疎化がそこまで進むのか?と思っていると、新聞のような紙の社会面だろうか、
「進む少子化、妹政策の是非を問う」
という記事があった。
その記事によると、
「国民を全員兄妹にする政策は確かに男女間の融和をすすめた。
しかし一方で、兄妹という関係で満足しお互いにそれ以上の関係になろうとしなくなったのではないか」
どうやら政策の失敗らしい。しかし俺に尻拭いを頼むのかあの天使……。
深く考えるのはよそうか。
前向きに考えればあの天使の言ったとおりハーレムを作りやすい環境のようだし、悪いことばかりじゃない。
せっかく転生できたんだ、良い方に考えたほうが建設的だな。
俺は、腹をくくった。
妹上等だ、この世界でハーレムを目指してやる!見てろよあの天使!
こうして俺の異世界生活が始まった。