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街でうわさの転移の母娘  作者: 荒草むつ
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8.「魔法語も機械語も一緒です」①

「ぬおおお……」

 シャワーを浴びてあとは寝るだけという段になっても恵津子は唸っていた。相手は一冊の本、魔力の起動源となる魔法語の本である。手が大きいのでどんなに分厚い本や図録でも簡単に扱えるのが自慢だったが、今回の魔法語の本はそれでも手に余る。しかも魔法語自体の解説はこちらの文字で書かれており、ひらがなと漢字に近いながらも微妙に形が違うので違和感を逐一押さえ込みながら意味を掴んでいく必要があった。


「魔法の力が込められた道具、と一口に言っても用途によって力の込め方が違う」

 安眠枕を作りたい、と猛烈アピールした恵津子にシーラは説明した。

「言葉で起こして素材だとか色だとか、そういうもので補強する。これは人が唱えて使う場合も道具に織り込む場合も一緒だね。だけれど道具にする場合は折り込み方が色々ある」

「織る、染める、縫いとる……?」

「そう、あとは単純に唱えながら、とかね。まあ唱えるのは発音が難しくてもうほとんど廃れてしまったけれど。染めたり抜いとったりするにしても、言葉の並びや図案、工程の単純な出来によって大きく効果は変わってくる」

「効果によって呪文が決まっていたりしないんですか?」

「言葉は決まってるけど呪文にはなってない……わかりにくいか。お腹が空いているとして「めし」「食べたい」と「おいしいシチューを出して欲しい」の二つを並べると、前者は最低限の欲求を単語で並べたものだ。後者は条件をつけて文の体裁に整えた形だね。前者と後者の使い分けが肝心だ」

とりあえず、これで魔法語の勉強でもしておきな、と渡されたのがそれはそれは分厚い本だった。


「苦戦しておるようじゃのう」

 風呂上がりの美代子が覗き込んでくる。

「おー分厚い」

「この本の角で頭打って死ねる…」

恵津子が突っ伏しているとうりゃうりゃと母が肩をもんでくる。

「まー一朝一夕には生きませんわな。頑張りなされ」

「はーいー……」

 違う世界に来たというのに母はまったく平常運転だった。持ち前のマイペースさと密かなスキルフル加減で今日もドドー工房の人々の腹を満たし、建物の隅々まで程よく整え、今日からカイと一緒に買い出しまでこなすようになった。娘とのスキンシップも、それぞれ成人した今でも欠かさない。

「そういや親方が昨日のお昼のシチュー最高に美味しかったから伝えておいてって」

「あれね。きのこからいいダシが出たのよね」

さっききのこっぽい魔法語があったなー、と思いながら、親方にレシピを伝えるべく恵津子はメモを取り始めた。

今日・明日と少し短めです。すみません。

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