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街でうわさの転移の母娘  作者: 荒草むつ
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EX1.死網病

一方その頃、どこか遠くで。

 ーー母娘が飛ばされたイコンカウ大陸から遠く離れた、ただ確かに地続きであるその土地では今まさにひとつの王家が、国が滅びようとしていた。戦争や政争ではない。病がその国を襲ったのであった。


 この大陸では時折、国を滅ぼすような流行り病が人々を恐怖の渦に突き落とす。大体数年〜十数年の間隔で流行するその病は、最初にぽつりぽつりと臀部に赤い点が生じ、続いてみるみるうちにあらゆる皮膚に赤く細い血管のような腫れが広がり、腫れにのたうちまわる間もなく高熱であっけなく命を落とす。祈祷師や薬師が有史以来手を尽くしてもいっこうに収まりはしない。そして屍を埋めても、焼いても、一度生じてしまうとあっという間に広がってしまう。


 人々はそれを死網病と呼ぶ。一度この網にかかると、生還することはできない。


 その王家が連なるザーンドウ家は大陸でも最古の血筋を誇る家柄であった。家柄だけではなく、血に連なる人々は皆誇り高く、それでいて民草に優しい施政を大陸で敷いた。険しい土地の多いその地で連綿と血を分け、国を分けることでじりじりと人々の居住地を拡張し、崩落や決壊で失われる前に街を移転させ、それでも厳しいときは縁者の治める地の助けを借り、どうにか民とそれぞれの国々を守ってきた。


 ザーンドウの者達にはまことしやかに伝わる魔法があった。今際の際に呪文とともに願いを唱えると、次世代でそれを叶えてくれる者が現れるという。


 そして今、また一人死の網にかかり息絶えようとしている王族がいる。3日前に嫁と娘を看取ったばかりの若き王であった。高熱の苦しい息の中、おそらく斃れた血族達が何度となく唱えたであろう願いを呪文とともに口にする。


 この死の網を打ち破る手段を教えたまえ。

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