6日目 ミライとの未来
カルマという変な奴がいきなり現れて、俺を殺そうとした。そしてノルマとかいうまた変な奴が現れて、カルマを銃で撃ち抜いたのだ。そのままミライを連れて、目の前で姿を消した。
「おい、しっかりしろ!」
虚ろな目をしたカルマは、口から血を吹き出しながらも俺に何かを伝えようとしている。
「もう喋るな! 死ぬぞお前!」
「俺……ミライが……好きだったん、だ……」
カルマの目からは涙が流れていた。ミライへの愛がひしひしと伝わってくる。
「だが、俺には……愛する、権利が……ない……!」
「あるさ! お前にはミライを愛する権利が……!」
「感情を失った……あいつを……救ったのは、お前……だ……!」
そう言うとカルマは少し微笑んで、俺にタイムステッキを手渡した。
「俺の、片道切符だ……あいつを……ミライを救ってくれ……」
「カルマ! お前……」
「頼んだ……」
そのままカルマは息を引き取った。手が冷たくなっていく。
「未来で会おう」
もし違う出会い方をしていれば、こいつとは仲良くなれたかもしれない。
俺は託された。未来の事、そしてミライの事を。
ステッキを振りかざし、こう叫んだ。
「ミライの元へ!」
思い出せない記憶、靄がかかっていて分からなかったが、今全て思い出した。それは忘れてはいけない大切なもので、俺にとっての全てだった。
俺は昔にミライと出会っている。それも何度も。
過去にミライは俺の所にやって来て、世界を救おうとするが、失敗に終わる。そして過去に戻って、世界を救う為に何度も繰り返してきた。
その度に俺達は、何度も恋をしたんだ。
何でこんな大切な事を忘れていたのだろう。今となってはどうでもいい。
目を開けると、前の俺だったら知るはずのない景色が広がっていた。全てを思い出した俺には分かる。ここはミライの生きる世界だ。
大きな城が分かりやすい様に聳え立っている。あそこにミライはいる。
警備隊の様な奴らがそこら中にいて、全ての目を盗んで城へ向かうのは至難の技だ。俺も警戒しながら進んで行くが、これでは拉致があかない。日が暮れてしまう。
「侵入者だ! 隈なく探せ!」
このままでは。何か良い方法がないか悩んでいると、誰かが遠くから手招きしているのが見えた。
「こっちじゃ……!」
バレない様にトーンを抑えて俺を呼んでいるお爺さん。
凄く長い白髭を生やしているお爺さんの方へ走った。
「あ、あんたは……ミライのお爺さん?」
「君がここに来る事は分かっておった」
そして、お爺さんから俺の手に渡されたのは録音機。
「これは?」
「これは世界を救う情報が入っているものじゃ。手に入れるのには苦労したわい……」
「これを……あいつに聞かせれば良いんだな?」
「そう言う事じゃ」
お爺さんは警備隊の目を集める為に囮となってくれた。その間に何とか掻い潜り、城の目の前まで来た。中に入り、馬鹿みたいに長い路線階段を登る。
これで、世界は救われる。ミライの事をもう忘れずに済むんだ。
ひたすらに走る。ミライの元へ。
ミライとの未来を取り戻す為に。
今度こそ終わらせよう。そして、何回だって言ってやる。
『何度だって、君に会いに行く』
『残り2……1日』
カウントダウンは加速する。