南瓜と妖精 1
最後の投稿から三年が経っていた事件。
びっくりしました。
今日はハロウィンだ。
普段あまりイベントごとには興味はないが、ハロウィンはなぜか好きだったりする。
パーティーしたり、仮装したり、トッリクオアトリート!とか言ったりして楽しむイベント。
といってもクラスで『根暗』とか言われてる僕にはそんなイベントをやってくれる友達がいない。
ちなみに憧れのイベントベストスリーはクリスマス、バレンタイン、ハロウィンだ。
べ、別に女子とのラブイベントとかそんなの期待してないんだからね!
・・・言っててキモイ。やめよう。
冒頭にあった通り、友達のいない僕は少しでもぼっちハロウィンを満喫しようとし、考えた結果、南瓜を買ってくることにした。
理由は簡単。ハロウィン=南瓜という僕の単純な発想による。
ともかく南瓜を包丁で―――
「あれ?」
硬い。硬すぎる。
確かに南瓜というのは野菜の中では硬い方だがいくらなんでも硬すぎだ。石か、これ。
でも南瓜をせっかく買ってきたのに食べないというのは僕のちっぽけなミジンコサイズのプライドが傷つく。
ぐぐぐと包丁を無理やり押さえつける。手が痛い。(良い子はまねしちゃダメだよ!)
そしてきっと焦ってるからだからだろうが、中から声っぽいものが聞こえる気がする。
なんか『ちょ、家が裂ける!』とか『どこの馬鹿よ!』みたいな。
ははは、やべーな、末期だわ。友達いなさ過ぎてついに妄想しだしちゃったよ、僕。
そんなことを思っていると南瓜がひとりでに割れた。
こう、パカっていう擬音語が付くような感じで。
さてそこから生まれたのは桃太郎ではなく、一人のちっこい女の子だった。しかも羽付き。
「だからやめろって言ってんでしょ!これ食べれないし、あたしの家だって!・・・まあ聞こえないか。にしてもさっきからめちゃくちゃ目が合うんだけど、何こいつ」
「・・・」
「あーあ、家が壊れた。もう、弁償してよね!ていうかそういえばここどこ?周りの物とかでかいんだけど。てかこいつ誰!」
なんとも忙しい奴だ。
怒ったり、驚いたり、ころころ表情を変えている。
「おーいそこの巨人、聞いてる?ってやっぱり聞こえてるわけ、」
「聞こえてるよ」
この時の彼女の驚いた顔を僕は一生忘れないだろう。
顔を真っ赤にした彼女は早く言えよとたいそうご立腹だったが、すぐにこちらの人間の世界に興味を持ち始めた。
「で、あれが電子レンジ。温めることができる」
「へーいちいち火を使わなくていいなんて便利ねえ」
ここらで一つ、はっきりしたいことがある。
それはずばり、『君の背中の奴はマジもんですか?』だ。
これがもし本物だとするならば彼女は妖精ということになる。
違うのならばコスプレしているイタイちっさい女の子というそれはそれで問題があるのだが、とにかくこの真相を確かめねばならない。
「と、ところで君の背中のは、羽は本物ですか!?」
いかん、なぜかどもってしまった。完全に変質者だ。
彼女は少し嫌そうな顔をしながらそーよ、と答えた。
「てことは妖精・・・?」
「うん」
「空飛べるのか!?」
「うっさい、だまれ、消えろ」
何で罵倒!?
空飛べるか聞いただけなのに!
・・・まさか、いやそんなことは・・・
「君、飛べない?」
びくっと肩が揺れる。どうやら図星のようだ。
まさか飛べない妖精がいるとは。
彼女は俯きながらぼそぼそと言った。
「・・・ねえ、あんたもずっと妖精って空飛べると思ってた?」
「まあそうかな」
「普通はそうよ。皆はすいすい空が飛べる。だから妖精は木の上の方に家を作るの。でもね、私は飛べなくて地面にしか作れなかった。その姿を見られるのが恥ずかしくて南瓜の中に住んでたの」
そんな経験があったのか。妖精にも色々いるんだな。
人間も、同じ。一度劣等感を感じるとそのことをいつまでも悩んでしまう。
たとえ周りからそんなに思われてなくても、自分の中では大きな問題だから。
「・・・皆は羽を動かすと、呼吸をするみたいに飛べるって言うのよ。あたしには無理。ていうか何で飛べるのって感じ」
「あるよな。僕は運動が苦手でさ、走るのがくそ遅くていっつも馬鹿にされるんだ。球技も球がおかしな方向に行くし、運動音痴がとかじゃなくてそういう能力そのものがないのかも」
「私は運動できるわ。下で暮らしてるから」
何この子。人が慰めてやってんのに傷口えぐってきたんですけど。
しかもさっきよりも落ち込んでるし。めんどくさいな。
でも、なんとかしてやりたい。見ていて可哀想になってきた。
「よし、練習しよう!僕が飛ぶのをなんとかしてみてみる。で、君はこの僕の運動音痴をちょっとましにしてくれ」
「はあ?あんたなんかに飛び方の何が分かるの?」
おまえだってわかんなくてこんなことになってるんだろうが!というのは心の奥にしまって言葉を続ける。
「大丈夫だ、僕は怪我した雀を飛ばしたことがある」
「私と雀を一緒にすんな!」
かくして僕と妖精による練習が始まったのである。
続きます。




