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boredom -退屈- ①



あぁ‥なんて僕はつまらない人間なんだろう‥‥。

誰もが一度は思った事があるであろうら。起きて、顔を洗って、学校に行って、帰ってきて、そして寝る。僕の人生はいつもこれの繰り返しだ。何の楽しさも感じられない‥‥。


七年前、あの自然災害「アブラプト」が突如として起き、謎のウイルス「C.O.Rウイルス」が日本全土に広がりパンデミックが起きた。財政は崩壊し、ありとあらゆる都市、交通が麻痺し、国内の全ての人間が”終わり”を予感したあの日‥

僕は何かが‥人生が変わると思った。だけど、七年経った今も何も変わらなかった。そこで改めて思い知らされた。

自分が変わらないと何も変わりはしないことに‥。



しゅう、愁ってば!』

その声は僕の意思を現実の世界に戻した。目前には艶のある長い黒髪、女子高生の平均身長よりも数センチ高いであろうほどの背丈。同級生の西村 栞菜かんなが居た。顔を覗き込むように背中を曲げ、こちらを見ている。その状況を再認識し、自分は電車で学校に向かっていることを思い出した。

『ゴメン‥考え事してた』

移動している窓の外を眺めながら、まるで独り言をささやいているかのような口調と声量で答えた。窓の外の景色は、七年前の災害で崩壊していた街があり、今では高層ビルやマンションが建ち、人が暮らすのに充分なほどまで修復していた。

昔と変わった所をいて言うならば武装した兵士やヘリが常にいることだ。

『それにしても、今日はいつもより兵隊の数 多くないか?』

兵士が常にいると言っても、街をパトロールしたり、空から異常が起きてないか偵察しているだけにすぎない。街には数名の兵士、空には二、三機のヘリが飛んでいるのがもう当たり前になっている。それなのに、今日はセル(遠距離操作方大型ロボット)が街を徘徊していたり、兵士の数やヘリの数も異常に多いことに

『ニュース見てないの?昨日の夜 国の研究所だったか忘れたけど襲撃されて、A+の非常事態宣言が発令されたじゃない』

『そんな事があったのか‥』

そう言った反面、

”研究所が襲撃されただけでA+ほどの非常事態なのか?”

という疑問が脳内を巡った。だか、問題事には手を出さないのが愁の決め事であった。疑問については考えるのをやめ、学校に向かった。



どの学校でもよく聞くチャイムと同時に授業が始まった。

が、教科書も出さず外の景色を眺めていた。別に勉強が嫌いなわけではないが、同じ事の繰り返しというのに飽きてしまったのだ。

”今日も代わりえのない一日が始まってしまった”

習慣化してしまった言葉を心内で呟き、重いまぶたを閉じた。


そこは花が咲き乱れていた。

”美しい”そんな言葉を遥かに超越している景色が目の前にひろがっていた。

もはや、”楽園”。この単語がかなり当てはまるほどだった。

”昔、ここに来た気が‥‥”

なぜだか、初めてこの景色を見た気がしなかった。だが、ここに来た記憶など一切ありはしなかった。

周りを見渡すと小さな男の子が一人。花畑の上で遊んでいた。よく見てみると誰かに似ている気がした。

”あれって小さい頃の僕‥?”

おかしな疑問を持っている事は分かっていたが、もう一度男の子の方に視線を向けた。すると、先ほどまでは気づかなかったが、隣に男の子よりも少し背丈が高く、年上そうな女の子がいた。女の子の姿は少しボヤけていて、どんな顔をしているか分からなかった。

”あの子は誰だろう”

二人で何か喋っているようだったが何も聞こえなかった。そもそも、先ほどから視界はハッキリしていたが、何の音も聞こえず耳の機能を使えていなかった。

すると、男の子は花で作った首飾りを女の子にプレゼントしていた。

『ありがとう‥‥愁』

先ほどまでのことが嘘かのように、耳元で話しかけられたかと思うほどに、女の子の声が突然ハッキリと聞こえた。その瞬間、足元にとてつもなく大きな穴が出現した。どこまでも続く、穴という名の闇の中へ俺は何も出来ず、ただ吸い寄せられるように落ちていった。


『‥‥ぅ‥‥愁!』

気づくと俺は元の教室に居た。先生も含め、教室中の生徒達がこちらを見ていた。

心配の目というより、まるで落ちこぼれ者を見下しているかのような‥そんな視線を。

だが、そんな事がどうでもいいと思えるほどの汗をかいていた。目の前には心配そうに顔を覗き込む栞菜の姿があった。

何があったのか聞いてみると、居眠りをし始めて間も無くに突然 うなされだし、一時的に高熱を出していたそうだ。

担任に念の為に昼からは早退して病院に行く事をすすめられ、愁は病院に向かっていた。


『特に目立った異常はありません。念の為、CTスキャンをしましたがC.O.Rウイルスも見つかりませんでした。多分、ストレスか何かでしょう。しっかりと栄養を摂取せっしゅして、睡眠を多くとってください。またら何かあれば来て下さい。』

随分ずいぶんてきとうな診断だと思ったが、反論する気力もなく、ただ

『分かりました』

とだけ答え病院を後にした。


診察も終わり、家に帰ろうとしたが現在の時刻午後2時。家に帰るには早すぎた。

彼処あそこに行くか』

その言葉を残し、愁はある場所へと向かった。

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