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鷹人生

東の街バーナード

国中の農産物、畜産物の約70%が生み出される街

つまりド田舎である


もちろん、街の中心には学校や病院など

生活に必要な施設はある


しかし街中の10才~17才の子供が集まる

学校が1つ

街に1つしかない病院と

生活用品を買うためのデパート

あとはせいぜい子供が遊べるアスレチックぐらい


そこを中心にあとはほとんど牧場や畑

それと街に住む人々の住宅ぐらいしかない




よく言えば自然豊かな街

悪く言えば国中の食糧生産を押し付けられた田舎



しかし悪いことばかりではない

国中の食糧を生産するので

生産すればするだけ売れる


この街限定で完全消費経済が成り立っている

なので、この街の住人は意外とリッチなのだ




ただ桐谷曰くこの街の住人達は

あまりお金の使い方が

上手い方ではないらしい


依頼してきたらできるだけふっかけて だそうだ




私、鷹野 巌 は金勘定が少々苦手で

この街に回されたと言われても仕方ない……



今現在、ボスの娘の真奈を預かり

ロックフェラー人材派遣会社バーナード支部の

事務室兼自宅で共に生活している


他にも従業員が数名いるが彼らは

別のところに住宅を与えてもらっているようだ



主に街の農業の手伝いが主な仕事になる

他にも納屋の掃除や王都への運送の手続き

街の老人達にできない力仕事はほとんどやる


私は案外このような生活も嫌いではない

むしろ好きだ……



今日は仕事を他の従業員がやってくれている

たまには休んでくれとのことだ

仕事をしたあとのお茶が格別に上手いというのに




私は晩御飯の下拵えだけ済ませて

事務室の居間でお茶を飲んで寛いでいる


しかしお茶はいつ飲んでも美味いものだ

温めても冷やしても美味いのだ!

お茶を考えたやつを褒めてやりたいと常々思う





ガラガラァーー





事務室の入口のドアが開いた音がしたので

とりあえず客間にでる。


一応、客間の真ん中に机と両側に椅子を4脚


そしてその奥に机と椅子、パソコンがあるが

拙者は基本パソコンに触らせてもらえない




客間に出たはいいが誰もいない……

なんだ……悪戯か


最近の幼子は親に怒られることがないから

人の迷惑を考えずに悪戯をする

困ったものだ……



ドアを閉めるために近寄る

ドアの前には白い封筒が一枚ある

中を開けて見ると一枚の白い紙が入っている


紙には六望星とその周りを

見たことのない文字が囲んでいる


永年生きてきたが、このような文字は知らん……


そのまま破って捨てる

よくわからん物を家に置きとうない


幼子の悪戯であればよいのだがな

まあなんでも構わぬ



そろそろ真奈が帰ってくる時間のはずだが




そう思い、紙をゴミ箱に捨て外を覗くと

遠くのほうで学生服の少女らしき姿が見えた


向こうも気づいたらしくこちらに走ってくる


速いな、駆け足だろうが

50メートル7秒ジャストと行ったところか

200メートルほどの距離をグングン詰める



目の前まで来てから、

彼女の飛び蹴りを軽く手であしらう


「ただいま、おじさん」


「おかえり、真奈」


全身白いセーラー服に色白い肌に白く短い髪

中性的な顔つきに目は青色

17歳には見えない美貌を持つ彼女は

私やピコ、桐谷のボスの娘だ



「おじさん、聞いてよ!

私王都の犬星学院の人に

スカウトされちゃった!

私すごくない!?

ほめてほめておじさん!」




ぬぅ……ボスの娘だとバレてしまったか

そうなると政府主導の犬星学院に

真奈を連れていかれると

もし何かあったとき学院からの脱出が

スムーズに行えない可能性がでてくる

人質というケースも捨てきれない……

嫌なタイミングだ



ただ単に真奈が優秀だから

スカウトされたのであってほしい



「おじさん?」


「いや、真奈のスカウト祝いに

なにしようかと考えていただけだ

さすがといっておこう、真奈」


「えへへ、やるもんでしょあたし」


照れもせず無邪気に笑い

私の肩をバンバン叩いてくる

少女が親にやるようなことではない…気がする。



この子の将来を潰すような真似はしたくない

真奈が犬星学院の進学したいと言ったら

なんらかの手は打っておかねば……




「真奈は犬星学院に進学したいか」


「う~ん、考え中~ でも進学するかな~」


「そうか……なら来年から王都か

今のうちにたくさんの

思い出を作っておくことだ」


「うん、そだね!おじさんはここに残るの?」


「そうだな、私にも役目というものがあるんでな

ここから離れる訳にもいくまいて

真奈の母上との約束だからな」


真奈の母親、つまり私や

ロックフェラーで働く者達のボス

ディアブロと名乗っていた女性である


彼女はディアブロという名前が嫌で

ボスって呼びなさいと私達に命じた


昔は私が彼女のボディガードを

勤めていたのだが

まあボディガードするほど

ボスは弱くはなかったのだが

というかボスのほうが断然強いのだが……


今はまた別の者をボディガードにつけてると

桐谷が言っているのを聞いた覚えがある

確か名前はエルメスだったか……



そのエルメスを連れて王都よりも南

海の向こうに悪魔しか住まぬ国があるらしく

そこで仕事をしているそうだ



そこでなにをしているのかは知らぬが

恐らく大丈夫だろう

エルメスも悪魔だったはず

上手く立ち回ってくれているはずだ



「うん……また会いたいなお母さんに……」


「また会える、ボスの仕事が終われば

飛んで帰ってくる……それまで待てるな」


「…………うん、もう17歳だよあたし」


無理して笑顔を作っているのが

鈍感な私でもわかってしまう……

母親に会えないつらさは

本人にしかわからぬものだろう

私が言えることは何もない

せめて私も笑顔で答えてやるぐらいか


「そうだったな……そうであったな

夕飯の支度をしておこうか

もう少し時間がかかるが6時くらいにはできる」



「……もう……バカにしてるなぁ~

部屋で宿題してるよ、できたら呼んでね」


承知したと返し、支度をするため台所へ



切っておいたゴボウや里芋、にんじん、

鶏肉、こんにゃくで煮物を一品


醤油ベースの甘ダレに浸けておいた鶏肉を使って

照り焼きのようなものを一品


あとは、ほうれん草のお浸しでもあればよいか


お鍋に水を張り沸騰させる


待っている間に他のことを済ませようとするが

拙者の懐に入っている携帯電話が鳴る



2つ折りの携帯電話の画面には

『着信 桐谷大先生』と出る


携帯電話を買ったが使い方がいまいち分からず

桐谷にやってもらったところ

桐谷大先生で登録されてしまって

直し方もわからないのでそのままなのだ



『やぁ、鷹さん久しぶり~桐谷だよ』


「あぁ知ってる、何用だ?」


『ちょっと連絡することがあってね』


「ぬぅ、良からぬことでもあったか」


『いやいや、その逆だよ

寿ちゃんいるでしょ、あの子結婚するんだよ』


「んっ、寿とはあの教会の娘か」


『そうそう、なんでも王都の近くの

小さなエルフの国の王子様らしいよ』


「ほぅ、そうか。それは良かった

あの娘も結婚か……」


『うん、ボスが連れてきたときは

今の真奈ちゃんくらいじゃなかったかな』


「うむ、そんなところだったはずだ

だが早いものだな、あの娘が結婚……

真奈も…………いずれはするのか……」


『え、鷹さんもしかして親代わりして

真奈が可愛くてしょうがない感じなの?

……ンフ………ブ……おほん、おほん』


「今笑いを堪えていたなら桐谷そなた

次会う時が命日になると知れ……」


『なんでよ、ただ似合わないなぁと思ってさ

で、結婚式は出れんの

一応幹部は全員招待されてんだよ

多分鷹さんのとこに招待状は

行ってるはずなんだけど、

返事が来ないって寿ちゃん心配してたよ』


招待状なんて来ていたのか

さっきの手紙はないにしても

来ていた覚えがないな……


「いや、寿には悪いことをした

手紙が届いた覚えはないのだがな

出席させて頂くと伝えてくれ」


『りょ~かい~、じゃあそう伝えておくよ

鷹さん、そっちはどう。上手くいってんの?

ボスも心配してたよ、大丈夫かなって』


「よろしく頼む、こっちは大丈夫だ

お主の派遣してくれた人員のおかげだ

みな優秀で助かってる

お主こそ最近はどうなのだ」


『んっ、心配してくれてんの鷹さん

ほんと相変わらず優しいなぁ~もぉ~』


「ち、違うわ!サボってないか確認しただけだ」

『フフーン、大丈夫、超まじめだぞ僕

今新人育成に力を注いでいる最中だよ』


「嘘吐くな!やっていても何か裏があるだろう。

正直に申せ!!

それと貴様、真面目という言葉を調べてこい

私は嘘吐きが大嫌いだぞ」


『そうっすか、知ってます』


「…………」


『冗談だってば!違うよ、才能ある若者だから

育成してるだけだよ。

うちにほしい逸材だったからだよ』


「ほんとだな…………」


『ほんとほんと、ワハハハーー』


「…………今後も私に嘘吐くなよ」


『あい…』


「うむ、よろしい。

では、寿によろしく伝えてくれ。

新人育成もしっかりやるのだぞ」



やれやれ、あやつはよう分からん


嘘か真か分かったものではない

私のことを特に騙しやすいとほざいておった


戦場で傭兵の仕事をしていた時もそうだ

私達は会社を立ち上げる前は傭兵集団…とは名乗ってはいないがほぼそれに近いことをしていた。



金払いのいい国相手の仕事といえば

殺しか壊しぐらいしかなかったのでな


で、その頃に一度単騎で300人大隊に

突っ込まされた


時間差で横から桐谷率いる兵力で叩く作戦

だったはずがあやつは相手部隊の隊長を暗殺して

そのまま助太刀もなく自陣に帰っていった


その間拙者はずっと一人で敵を斬り続け

隊長が暗殺されたのに敵方が気付くまでに

大方100人は斬った


私が帰って問いただせば

『適材適所、目標達成のため最適な配置だった

鷹さんが陽動で僕が本命

最小限の戦力で最大の効果が得られた

鷹さんがいたからこの作戦にした

やっぱ鷹さんすごい、鷹野さん最高っ!』

とまとめればこのようなことを言ったのだ


最初は腹をたてたが

話を最後まで聞くと何故か

悪い気はしなかった


自分でも単純だと思うが

自分の好きなところでもある


いつも思うのだが

あやつは人の心というものを良く知っている

人を怒らせたり、喜ばしたり、悲しませたり

どう仕掛ければどう動くのか

洞察力と判断力は会社の中で一番だ


ただいたずらに使うのはやめてもらいたい………




話をしたり、考え事をしている間に

お湯も沸騰してきている。

よし、料理をするか………




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




宿題を済ませて、スマホをいじいじ

適当にニュースを見ながら時間を潰す


ほんと外で友達と遊ばなくなった

昔はアスレチック行ったり、釣りしたり

飛び込みしたり、外でしか遊ばなかったけど

最近は友達のお家で駄弁ったり、ゲームしたり

お泊まり会みたいなことしたり



正直もっとはっちゃけたいし

もっと色んな事をしてみたい。



この街はのどかで良いとこだよ

だけどどこか退屈……

同じことの繰り返しで

なんだか狭いとこに閉じ込められてる感じがする


鷹さんは良い人だし、友達もみんな良い子

だけどやっぱり物足りない


あたしの可能性というか、夢というか

なんかよくわかんないけど

そんな将来的なものが時を追うごとに

ガリガリと削られてしまっている気がする



そんな不安を吹き払う、一報があたしに来た

内容は王都の犬星学院への入学生募集のスカウト

あたしはその報せに飛びついた


やっとこの街を離れる理由ができたと


重ねて言うけど、この街が嫌いな訳じゃないし

鷹さんだって嫌いじゃない


ただ環境?が不満なだけ


このバーナードを離れて

王都を見てみたい、

もっと言えば世界を見てみたい



なんだかドキドキする

どんなとこなんだろう

テレビで見るようなとこかな

有名人に会えるかな


色んな妄想がモクモクと雲のようにできていく

考え事が頭いっぱいになり気がつくと

6時になりかかっていた


夕食の時間だ

おじさんの呼び声もするし

あたしは部屋を出て居間へ向かう



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




テーブルに出ている料理に手を出しながら

おじさんに聞いてみる



「ねぇ、おじさん。おじさんって

昔はお母さんと色んな国を

渡って歩いたんだよね?

もう一度行きたいとこってある?」


あたしの素朴な疑問

あたしは外、他の国がどんな所か知らない

この国に住む人はだいたいそんな感じらしい

ずっとこの国で生きて死んでいく

あたしはそんなの嫌だ

退屈だし、色んなことを経験してみたい

色んなものを見てみたい

それが建造物であれ、動物であれ、死体であれ



おじさんは里芋をつつきながら

お酒をクイッと煽り

「そうだな……この国より西に

獣達の国があってな

そこは大層空気が旨く、新鮮だったな

食べ物も……まあ調理すれば旨かったな

とにかく自然を肌で感じる事ができる

夜の星空もよかった……

星空を見ながら酒を一杯、

その辺に生ってる果物を食べながらまた一杯

いやぁ……最高の一時であったな」


ボスは浮かない顔だったなと

ポツリと溢したのを

真奈は聞き逃してはいなかったが

あえて触れなかった。

鷹野の過去を振り返る顔が

いつもより嬉しそうで幸せそうだったか

またその顔を見ると真奈も幸せな気持ちになり

質問する気になれなかったかもしれない。



「まあ真奈も大人になったらどこでも行ける

今は人生の下積みだからな、

ここを怠るやつはロクなやつにならん。」

真奈は怠るでないぞと何故か少し説教が入る


真奈もいつものことなので、

そうだね の一言で返し、料理に手を出す。



「おっ、そうそう。真奈は寿を覚えとるか」


「うん、寿姉ちゃんなら知ってるよ

小さい頃たまに遊んでもらったし

たまに学校に講習会で来るよ。

寿姉ちゃんがどうしたの?」


「その寿なんだがな、結婚するそうでな」


「えっ、寿姉ちゃんが!?結婚!?

いいないいなぁ~♪

相手は?おじさん、相手は誰なの!?」


「相手は小国のエルフの王子だそうだ」


「えぇっ!!じゃあお姫様じゃん!

いいないいないいなぁ~!!」


椅子を飛び上がり、鷹野に注意されるまで

いいなぁ~の掛け声とともに回り続ける


おぇ~きもちわる~ と席につき

グデーンとなっている真奈を少し咎め


「それでな、結婚式の招待されたのでな

日取りも場所も聞き忘れてしまったから

いつかはわからんがとりあえず

行くことになった。真奈お前も参加するな?」


「もちろんだよおじさん。

学校休んでも行くからね!」


「その時ばかりは許そうか

日程は、また桐谷に聞いておく」


「桐谷……? あぁ、キリィね

うん、わかったらすぐに教えてよ!?」


一瞬キリィの本名忘れてたわ

たまにあるやつね

名前とあだ名が入れ替わっちゃうやつ


「任された、少し外の風でも浴びるとするか」


おじさんが休みの日には大抵

夕食を食べ終えると外に出る

散歩をするのが好きらしい。

たまにあたしも付き合うけど

今日はそんな気分じゃないかな


「真奈、食器は水につけて置いてくれ

帰って洗うからな」


「あーい、いってらー」


おじさんは帯に扇子を挟み、サンダルを履いて

シャカシャカと家を出て行った。


どんどん足音が遠くなるのを確認して

自分の部屋にダッシュで戻る。



部屋から財布、携帯電話

そしてバックを持って出て家を飛び出す



携帯電話を開き友達に電話を掛ける



「ハァイ奈美、準備はできてる?

今向かってるから先行かないでよ!」


『真奈二等兵早くしたまえ~

我が二輪駆動車が荒ぶってしまう~

はよ~真奈はよ~!』


「うっさい、今走ってるから

ん~、後5分、5分待って」


『三等兵はよ~はよ~は』


聞いているのもウンザリなので切ってしまった


今通話していたのは、芦屋奈美

普段は明るく軍曹っぽくはないのだが

調子に乗ると軍曹になってしまう女の子

顔は可愛いのだが、少しポッチャリで

黒髪、長さは肩にかかるくらいの普通に

クラスに2人くらいいそうな女の子だ



とにかく待ち合わせであるアスレチックスの

駐車場についた。やっぱりこんな時間には

ほとんど車は止まっていなかった

だから奈美を見つけるのも簡単だった



「ごめんごめん、お待たせ~」


「おっそい!四等兵おっそい!

遅刻とはけしからーんですな!

連帯責任でももあげ50ッ回!」


誰と連帯なのよ、しかも地味


「ごめんて、奈美。なんか奢るからさ」


「……よかろう、チョコサンデー辺りで

勘弁してやろう、後5分遅ければ

パフェになっていたぞ、危なかったな!」


パフェじゃなくてよかった……

この子のパフェはスケールが違うからね

3人で食べるパフェを1人で平らげるもん


まあこの子がポッチャリな理由も

スイーツに目がないからなんだけど。


多分、教室にカステラ付けた釣り針垂らしたら

真っ先に掛かるのがこの子……大物である……



肩をポカッと殴られ

「ほら早くヘルメット被って」と

急かされたので、ササッと被って後ろに座る


彼女がテンションが高いのは今回の旅の目的が

スイーツ巡りの旅だからなのだ。



そして行き先は王都、そう王都

一度も行った事はないけど

行き慣れてる奈美がいれば問題ないでしょ



部屋にもちゃんと置き手紙してきたし

学校はちょっとお休みすることにしてる



バイクの後ろに乗り、奈美の服をつまむ


「よ~し、じゃ出発するよ

ちゃんと捕まってなさいよ。

落っこちても拾いに戻んないからね」


何故ならスイーツが待っているからぁ~!

気合いの雌叫びとともにアクセルを捻る



わっ と少し悲鳴を上げ

奈美の胴を抱き締めてしめて

顔を背中に埋めてしまう



「あははは、びっくりした?

いやぁー可愛かったなぁ~」


後ろを向きニヤニヤ笑う奈美の背中を

照れ隠しでバシバシ叩く


「うっさいうっさい!早く前見て運転してッ!」


はいはいと笑いながら前を向く


恥ずかしことしちゃったな

ものすごく後悔した。

多分学校で言い振られるんだろうな……

ちょっと鬱だわ……



道は田舎なだけあって真っ直ぐで

ほんとになにもないので安心してきた


少しだけ緊張が溶けて溜め息がでて

壁にオデコを付けるように奈美の背中につける



「真奈~いつまで私のお腹抱き締めてんのよ

ちょっとそっちに目覚めそうになるから

やめてくんないかな?」


ハッ! しまったまだ抱き締めたままだった

うぅ~、だけど怖いよ~。

ものすごいスピードで

地面も気色も流れていってんだもん。

落ちたらほんと死んじゃうよ。


「無理……無理無理!怖いってぇ~

そんなこと言わないでよぉ~」


「さすがの優等生も慣れていないものは

怖いと見えますなぁ~」


「私だってハンドルあれば怖くないわよ

奈美の背中にハンドル付いてれば

全然平気なのになぁ~」


「普通の人の背中にハンドルはないのよ

ボケるにしてももっといいボケがほしいなぁ」


今のは少し腹立ったよ、私プッツンよ


「あっハンドルみっけ」


私は奈美の右側の肩甲骨を鷲掴みする


「あぎゃゃああう!」

バイクがグワンと右に逸れて

田んぼに突っ込みそうになる


なんとかバイクを左に傾けるため

重心を左にずらし奈美の肩甲骨に指を引っかる


「いだだだだだぁ!」

今度は左に傾き、また田んぼに

突っ込みそうになる

だから今度は右に重心を置き

右の肩甲骨に指先を引っ掛ける


「ぶらぁぁぁぁう!」

次は右に傾き、また田んぼに突っ込みそうになる

だから次は…………というのを2回程繰返し

暴走族よろしくな蛇行運転をして

元の通常運転に戻ることができた。



「はぁはぁはぁ……真奈…あんたね

こんなボケ続けてたら命はないわよ」


「そうだね、でももうお腹を抱き締めずに

済みそうだよ。私もハンドル見つけたからね」


「わかったわかった抱き締めてていいから」


「わ~い」



こうして私は安全?の確保に成功し

王都につくまでに不安で死ぬことはなくなった



奈美の話によると王都につくには

街を輸送用路から出て半日だそうだ。



さて、王都についたら何しよーかな

まだバーナードからでていないから

周りは木、畑、田んぼだが

王都の近くまで来たら景色は綺麗だそうだ。


奈美の話を聞くごとに王都に早く行きたくなる

はやる気持ちを抑えきれず


「もっと飛ばさんかーいッ!」

「あぎゃゃああぅ!」



少女2人の笑い声を乗せて

バイクは日の沈んだ暗い道をひたすら突き進む



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私が異変に気がついたのは

散歩と用事を終え帰った次の日だ



全く起きてこない真奈を起こしに

ノックをして部屋に入ると置き手紙が1枚



内容は、今から王都に友達と出かけます

一泊して帰ってくるので心配しないでね

といった感じで書かれていた。



その友達が奈美だと言うのは書かれていたので

非番の者を使い、奈美という友達の家に

向かわせ話を両親から聞いたところ

午後7時頃にはもう家にはいなかったそうだ


午前7時の今現在、王都についた頃合だろう。

なにもなく旅を満喫できていればいいが……



王都の本部に連絡を入れて、

真奈の捜索と護衛をつけておいてもよかろう。


もし万が一にでも何かあったら

ボスに顔向けできん。


さっき家に向かわせた者が帰ってき次第

事務所に依頼を入れよう


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




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