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桐人生 その1

ロックフェラー人材派遣本社社長室



ボスとの通話を強引に終わらせ部屋へ

恵口竜也を招きいれる。



元警官であり、警察庁の班の一員だった男。

そして、最近ではあまり見られなかった

悪魔との関連がある事件を担当していた。

彼自身は悪魔絡みの事件とは

気づいてないように見受けられるが。


しかし、桐谷は彼自身のポテンシャルと

悪魔の力に目をつけスカウトした。


良質な人材を探していた桐谷がたまに通う

職業安定所に現れるのを調査で知り

網をはっていたら引っ掛かった。


桐谷いくつかの依頼をこなさせて様子を見て

自分が育てるか否かを判断するつもりだ。


この男に大器はあるのかどうか……


「失礼します」



「どうだった?なにか良い依頼もらえた?」


「貰うには貰えましたが怒られました。

銀バッジつけれるようなってからにしろって」


恵口は続けて疑問を投げ掛ける。



「その時に、“社員みな家族”と言われました。

良い社訓だと思いましたが

社員のみなさんが入るときにその話は

されているのでしょうか。」


「うん、みんなにはしてるよ。簡単にだけど。

ちゃんと覚えてる人は少ないじゃないかな。

家族よりもお金が大事な人いるもん。

まあいずれにしても君にはこの社訓を

大事にしてもらいたいと思ってるよ。」



「はい、そうですね……大事にします。」


桐谷はニコッと笑い 頼むよ と一言呟き



「さて! どんな依頼もらってきたんだい?

打ち子とかだったらいいな。

ハーデスとか打ちたいな~僕」


「そんなんじゃないですね、要人警護だそうです」


恵口君のお手並み拝見できるな

まあ元警官だから優秀なんだろうけど


「えぇ~つまんないなぁ~

経費でスロット打ちたいーーー」


反り返り両手を高く上げるその姿は子供のようだ


「そんなこと言わないでください。

それよりも依頼ですけど自分1人で

行く感じになるんですか?」


「あほか、君は……恵口君は警官の時に

要人警護の仕事したことあんの?」


「いえ……ないです……」


「だろうね、まあ君の所属しているとこが

警護を担当するようなとこじゃないってのも

あるのかな……多分そんな依頼はうちに来る」


「うちに要人警護の依頼出すってことは

自分の私兵がいない、

又は警察に警護を依頼することが

その人物の不利益になるからだと思わない?」


「敵を作りやすい職業で

しかも立場的に弱いやつなんてのが

当てはまるんだよ」


桐谷は恵口の頭に?が浮かんでいそうな顔に


「恵口君、理由がわからない?

それとも日本語がわかんないぬぅぉお~?」


とバカにしてみる


真顔で「……理由がわかりません。」

と答える恵口


あれ?怒らんないの?

怒られたくはないけど

一回クレアさんにやったら

杖でぶっ叩かれたなぁ

5メートルほど飛んでから先は覚えてないや


恵口君絶対なにやってんの?って思ってるよ

これは失敗だったな……

じゃあサービスしてあげようか


「そうか、今回だけ特別に教えてあげよう!」


「はい!ありがとうございます!」


恵口君はほんと素直ないい子だ。

腐れピコとは大違いだ……




「さて、敵を作りやすい商売、仕事をする人の中に 政治家ってのは絶対いるんだ。

だって人から税金とったり、

身勝手に法律を変えたり

それに裏工作だったりするやつだっている。

なぜ政治家が警察に警護を

依頼しないかといえば、

警察には監察の仕事も含まれているのは

知ってるよね?

警察、軍部、そして政府が

三竦みの関係といってもいい。

つまり、睨みを効かせあってるんだね。

政治家は、横領や癒着してるとしても

弱みを握っている相手が一般人なら

その弱みを潰せるんだ 金や利権を使ってね……

だけど自分達と同じ立場の軍部、

特に監察でもある警察には通じない。

そんな警察がそばにいたら気が気じゃないよ。

だから、力のある政治家達には私兵がいるんだ。

そして、力なき政治家達は腕のたつ一般人に

依頼するって感じかな。」




簡単に説明すればこんな感じかな。

まあ……例外はあるんだけどね……

今は触れないでおこうか。


頭をポリポリて掻いて唸る恵口

たぶん、ある程度は理解できたが

疑問や納得してない部分もあるのだろう。


「そんなことがあるんだなぁって

漠然と覚えているだけで構わない。

なにかのきっかけで解る時がくるもね。」


「はい……わかりました。ほんとに漠然としか

理解してないですけど、ジャンケンみたいな

感じで覚えておきます」



「アハハ、そうだね、そんな感じだよ。」


こういう風な覚えかたは意外と大事だったりする



灰皿を取りだし、煙草に火をつける。


「そうだ、恵口君は煙草吸わないの?」


「はい、自分は煙草は吸いませんね。

お酒は……嗜む程度です。」


「ふむ……無理に勧めたりはしないけど

世間がいうほど悪いものではないと

思うけどねぇ~」


ふぅぅー吐き出された紫煙が部屋を漂う


「さて、話の続きだけど、

敵を作りやすい商売をする人って

どんな人のこと指してるか分かる?」


「そうですね…………麻薬密売人ですか?」


「それもあるかな……

まあ悪いことをする人たちだね。

麻薬密売、詐欺、武器密売etc

そいつらは警察に警護してもらったら

逮捕されちゃうから必ずしも

私兵が警護するはずなんだけど

自分が弱かったり資金力のないやつらは

僕らに依頼を出してくるんだよ」


だいたいそんなやつらは大きな組織に属しておらず

単独、もしくは少数で犯罪を行う。

組織や組織間の隙を見つけて商売する。

大概長続きしないし、消される可能性のほうが高い

バカしかやらないと思っていい。



「なるほど、犯罪者の方は

理解できたと思います」


これはなんとなくわかってくれるだろう。

なんてったって警察だもんね彼



桐谷は煙草を揉み消し、デスクに備えついている

冷蔵庫からビンビールと栓抜きをとりだし

栓抜きで開けてそのままラッパ飲み。


「ぷひゃーー!!仕事中に飲むビールはうまいなぁ」


うはっ、恵口君の目が冷たくなってる

黙りこむんじゃないよ、まったく真面目だな


「ふぃー……今回の依頼の内容は?」


「はい、今回内容は依頼人に会ってから

知らしてくれるようです」


ふむ、やっぱり普通通りにはいかないな……

ちょっと危ないかもね……


「よし、じゃあ依頼人に会いに行くよ」


桐谷はバッと勢いよく立ちあがり、

残り少ないビールを煽り

デスクからなにかを取りだして

背中とベルトの間に挟む


「桐谷さん、それ銃じゃないですか?

なにに使うつもりですか?」


「よくわかったね」


桐谷はニコッと笑いベルトに挟んだ銃を抜き

銃口を恵口に向けた瞬間

恵口は必死の形相で横っ飛び

ゴンッと飛んだ先にあった本棚に頭をぶつけ止まる



「いたっ!なにすんすか!?」


「アハハハ、なかなかの反射神経だね。

やっぱ銃には敏感なんだねぇ~」


ケラケラ笑い黒い拳銃おそらくグロック16を

カチャカチャと音を立てて

ジャグリングする


「危ないですから、振り回さないでください!」


銃に知識を持つものなら決してしないであろう事を

遊び半分にやる桐谷に多少怒りを覚えた恵口。


安全装置が作動していないかもしれないのに

ジャグリングしたり、ましてや人に向けるなど

逆に銃殺されても文句は言えない。



冗談だよ、怒んないでよ と笑い銃を投げ渡す。

恵口は慌ててキャッチするが、異変に気づく。


銃には、ある程度重量があり鈍器としても

活用できるように作られる……が


「あれ?これもしかして偽物ですか……?」


「そだよ、銃口を見せようとしたんだけど

こっちが驚いたよ」


「すいません、早とちりでした……」


「いいよいいよ、前もって言わない僕も悪い

というかちょっと悪意あったからね。

それ持っといてね。使うかもだから」


「これ、エアガンですよね?

使うとこなんてあるんですか?」


「あるよ、一応腰に指して上着で隠しといてね」


そうですか と不思議そうにし、指示通り腰に指す。


「そうそう、すぐ出せるように練習しといて

いざという時にサッと出せなきゃ意味ないもんね」


真面目に何度か練習する恵口




やっぱこういうのは、飲み込み早いな

流石は元警官だね




「うん!そんな感じだね。さあ指定された場所まで

行こうか、恵口君どやっていくの?」


「自分は電車で行こうかと……」


…………


「あほーんめ、僕は歩くの嫌いなんだ

僕の車で行くよ、次の仕事までに車買え

金ないなら僕が融資してやるから」


「まじですか」


「当たり前だあほーん、

基本人の多い所は好きくない」


ほんとはヘリが一番なんだけど

止めるとこあんまないし、勝手に飛ばしたら

軍部の連中がうるさいからなあ……


「ほら、駐車場まで行くよ。きりきり歩けぇーい」


社長室を出て、廊下を歩く途中

クレアさんの部屋の壁は

他とは不釣り合いなベニヤ板が貼られていた。


東城さんダメダメじゃないか、

こりゃ専門業者呼ばないと僕が怒られる





階段を下り、待ち合いフロアがある2階へ

そこからまた1階を飛ばし地下へ続く階段を下る



防火扉を開け、地下1階の駐車場へ


地下の駐車場には、幹部や事務として働く人達の車と

来客用とでマックス50台ほどのスペースがある。


実は社長室から直接駐車場までダストシュートで

繋がっていたりする。

脱出用だったり、移動が面倒な時に使う。


だいたいの駐車場が殺風景なので

うちの駐車場は灰色のコンクリートの上に

スプレーを使ってストリート調にアートを描いて

できるだけ派手派手にしてる


ここの壁をバックに撮影を依頼されたり、

たまに雑誌の表紙にもなるので

宣伝や収益アップにも繋がるんだな。



しっかし、停めてる車は壁とは似合わない

高級車、スポーツカー、可愛い軽自動車。


キャデラックみたいな車は一台もない。



「さあ、乗って乗って」


僕の愛車、日産スカイライン・インフィニティQ50に乗車を促す

ハイブリッド車でリッター3,5

エマージェンシーブレーキ搭載

知り合いのディーラーから

150万で流してもらった

我ながら良い買い物だったな



そっとドアを開けちょこんと座る恵口


「座り心地いいですね、

桐谷さん、これ高級車じゃないですか?

見るからに高そうですよね。」


「まあね、僕レベルになればユーヨーなのよ」


「すごいなぁ、自分もいつかこんな車に

乗れるようにならないとですね。」


恵口君には、車に乗ってもらうことを願いたい。

僕は車かヘリで移動するのだが

幹部の中には長距離移動を

馬やドラゴンや戦闘機でするやつ

ルンバで空飛ぶバカもいる。


でもさすがに自分の投げた柱に乗って移動する

タオパイパイ並のやつはいない。

いたら即採用なんだけど……



「よぉし、行き先ナビに打ち込んで」


恵口は、ナビに行き先を手惑いながら打ち込む。

行き先は王都のオフィス街から、

東に10キロほど離れた

下町のような所だった。


「地区でいったらパレス地区か……

まあいいや、シートベルトしてね」


「あれ、そーいえば飲酒運転じゃないですか

ダメですよ、危ないですって」


ニコッと笑い

「大丈夫、ノンアルコールだから」





桐谷は車内にあるリモコンのスイッチを押すと

出口のポールが降り始める。



車は静かに発進する

あまりエンジンが激しく稼働するような音がしない

ので車内は会話がない限り無音に近い状態になる


車が発進してから5分ほどで

桐谷はオーディオをいじりだす


無音の車内が耐え難かった、

もしくは恵口に気を使ったからか……



ナット・キング・クール L-o-v-e


のんびりとした曲調だが、

歌手本人の優しく力強い声が桐谷は好きらしい。


この曲には歌手本人が数ヵ国語で歌うバージョンが存在するがやはり原曲が一番と桐谷は言う




そのまま音楽をシャッフルでながし続け、

車窓からか流れる景色がビルやマンションではなく一軒家やアパート、交番や学校に変わって少し経つと


『目的地につきました、運転お疲れ様でした』

ナビから無機質な声が響く


目的地は公園だったようだ



依頼人への接触手段は

公衆便所の便器のタンクの中に

隠してある封筒の中に入っている

紙に書いてあるそうだ


「恵口君、取ってきて

僕煙草吸って待ってるよ」


恵口に封筒を取りに行かせて

待つこと数分、帰ってきた恵口から

依頼人の家へ行くことを伝えられ

車を走らせる数分で依頼人の家についた。



「ここかな、着いたね。

なかなかに良い家に住んでるなー

2階建てに駐車場と庭つきか……

野原家みたいな家だな

恵口君、報酬金いくらだっけ?」


「3日間の警護で9万ですね……」


「ふむぅ、もう少しふんだくれそうだけどな……

まあ今回はいいや、恵口君報酬金ってのは

交渉次第で変わることも覚えておいた方がいい

いずれ交渉しないといけない場面が出てくる

相手が値切ってくるときだってある……

まあ君の報酬金だからどっちだっていいけど

覚えておいて損はないよ。

心構えは大事だからね」


恵口君は、人が良さそうだから必死に頼まれたり

泣き落としには弱いだろうな……

脅しにはきっと強いんだろうけど


「はい、覚えときます。ありがとうございます

じゃあ行きますか?」



依頼人の家のインターホンを鳴らす


ピーン……ポーン

甲高い音が鳴りしばらく経つと

2階のカーテンが少し開き

人が覗いているのが見えた



桐谷は封筒を2階の人間に見えるように見せる


カーテンが閉まり、階段を降りる音が聞こえ

ドアが小さく開き姿を見せずに

「入れ」っと桐谷達を招く



桐谷達は門を開けて依頼人の家の中に入る




玄関まで入ると目の前には

左右にスライド式のドアと

目の前には階段、そしてその階段に

ラコステの銀ワニの黒いポロシャツに

ジーンズを穿いた50代の男


「あなたが依頼人の方ですか?」


「あぁ、私だ。さぁ、上がってくれ

そっちのリビングで話そう」


男が右側の部屋へ案内する。



部屋は、入り口近くにシステムキッチン

真ん中に机と椅子4脚、

そして左側にソファに大きなテレビ

右側には食器棚と

トロフィーや、どこぞで買ったお土産などが

飾ってある棚があった。



実によくある小金持ちな家の間取りだねぇ

だけど、表彰状や風景画はあるのに

家族写真とか置いてないな……

ある程度想像はつくけども……




「かけてくれ、今茶を出す……待っててくれ」


「いえ、お構い痛ぇ!「頂きます~」


「ん?さっきなにか聞こえたが」


「えっ、頂きますしか言ってないよね?」


「……はい、自分は話してません。」


「そうか聞き違いか……いかんな、

最近自分が老いてきたせいか、耳が遠くなってな」



男はワハハハと笑いキッチンへお茶を淹れに行く



その間に恵口が小声で

「さっきのなんですか、びっくりしましたよ」


「相手が淹れるってんだから断るな

話しやすい環境を作ろうと気を使わせてるんだ

それは客商売してる僕ら的には良くない」


はぁ…… と気の抜けた返事を返す恵口。


まあわかんなきゃいいよ

君に客商売をしてもらう気はない



お茶を淹れ終えた男が戻ってきて

人数分の湯飲みを出し注いでいく。



「おっ、茶柱!こりゃいいことあるかもなぁ♪」


「おぉ、それはそれは。ワハハハハ」


「フフン、もう良いことありましたよ、

間違っていたら失礼ですがもしかして

法務省の方ですよね?名前は~忘れた……

テレビに出てた人に会えるなんてラッキーだ……」


桐谷は笑ってはいるが目が笑ってはいなかった

男も桐谷の変わり様に気づかないわけがない


笑っていた男も顔つきが変わり

お茶を一口飲み一息つく。



「ふぅ~……ばれてたか。

まあいい自己紹介してなかったな。

私の名前はダン・デリンジャー

法務省の役人だ、君らの名前も聞いておきたいな」


小物の顔付きには見えない……

まだ芽がでてないのか、

上が強烈なのかどちらだろうな……



桐谷はほんのコンマ数秒相手を値踏みするが

思いとどまる



いかんいかん、これは恵口君の客

今回は恵口君の顔繋ぎと研修をすることが目的

交渉も警護も恵口君がする

僕は警護のサポートとアドバイス。



桐谷は恵口に目配せするが全く気づいてないようだ


それもそうか、打ち合わせなんてしてないし……



「自分が今回の依頼を受けた恵口竜也です。

そして彼が今回「あっ桐谷って言います。

今回は彼のサポートにつきます。」


また桐谷が恵口の話を切り、自分で話す。


「サポート?じゃあ彼はまだ未熟だと言うのか」


「いえ、彼は合気道の玄道流の免許皆伝でして……

まあ人を守るために

生まれてきたみたいやつでしてね……

ただ、今回の依頼は内容がわからないので

彼にサポートについてくれと頼まれまして」


「あなた達の会社は、詳細不明なものでも

報酬金次第で引き受けてくれると聞いた

なのに、サポートを頼むとは実力が


「あるからこそサポートを頼むんですよ。

確かにうちは報酬金次第で

どんな依頼も受けます。

ですが失敗すればペナルティがあります。

ペナルティがあるのに詳細不明の依頼を

何の準備もなく受けるなどありえない。

そんなやつ僕らの会社には要りません

その点からすれば

彼は優秀だとは思いませんか?

依頼を全力でこなそうとする

彼の努力を買っては頂けませんか?

彼があなたの期待を裏切ることはないと

保証します。いかかですか、デリンジャーさん」



桐谷は捲し立てる。

相手から発言を奪い自分が叩き込む

これが桐谷の常套手。


「…………わかった、いいだろう。

今回の依頼の内容が要人警護というのは

知っているとは思うが、その要人は私ではなく

私の息子だ」


「息子さん……ですか。

なぜ警護しなきゃいけない

状況になってるんですか?

その説明はしていただけますね?」


「ふむ、そうだな

私の息子は暴走族の一員でな。

最近抜けようとしたようだが

許してもらえなかったようで

逃げ出したが、粛正を受けそうなのだよ。

だから、息子を守ってほしい

私も立場的に息子を守ってやるのは難しい

ゆえに、あなた達に依頼したんだ」


「そうですか……ですが三日間だけでは

どうしようもないのではないですか?」


「何回かやってくるやつを撃退すれば

諦めると思っていたんだがな……」


「この手のやつはしつこいです。

掟だなんだのと全力で狙ってくるでしょう。

あなたのこの家に来る可能性もある。

撃退してもきりがないし……」


恵口は内容を聞き思案するが

良い方法が思い浮かばないようだ


そこで桐谷はある提案を持ち出す


「サリンジャーさん、息子さんが暴走族に

完璧狙われないようにすることもできます。

今の報酬金プラス11万でどうです?」


「どのようにやるのか教えてくれないか?」


「はい、息子さんの協力が必要ですが

もし可能性がであれば後は上手くいくはずです

方法としては、暴走族の解体ですね」


ダンの顔付きが怒りに満ちてくる


「貴様、私の息子に危険な目にあわすつもりか

ならば私は許すわけにはいかないぞ」


桐谷はその顔を見てクスクス笑う


「サリンジャーさん、

ならあなたが息子を政府の力を

使って守ってやればいい。

息子が大事なんだろ?あんたにはできるはずだ

何故やらないんだ?」


恵口はどう治めていいかわからず焦り

あたふたするのを横目で見て無視する


「貴様……」



「あんたが本当に大事なのは、息子か?立場か?

あんたが息子をちゃんと

見てないからこうなった

自分で息子の尻も拭いてやれない

そりゃ奥さんもいなくなるわな」


ダンは立ち上がり、自分の湯飲みを桐谷に投げつける

桐谷は顔に目掛けて飛んできた湯飲みを

首をかしげるだけで避ける


後ろでパリンと湯飲みが砕け散った


「言わせておけば調子にのりおって……

貴様になにがわかるんだ!!

私は家庭を守るために、家族を守るために

この法務省の役人の立場を守っているのだぞ!

なぜこの家のものも貴様もわからんのだ」



「あんたには一生わからんだろうね………」


桐谷はため息をつき、勝手に話を進める


「まあそれはいいとして、

息子さんには協力してもらうが

危険な目にあわすつもりは

毛頭ないから安心してほしい。

なんのために僕らがいるんですか?

あなたにも息子さんが大事ならほんの少し

協力してもらう。

大丈夫だ、汚職は初めてじゃないでしょ」


「!?……なんのことだ、

失礼にも程があるぞ貴様!」


「まあまあ、そう怒らないで下さいよ

息子さんもあなたも協力してくれますね?

今の立場と息子さんも守るんですよね?

どうするんですサリンジャーさん?」


ダンは押し黙り考え込む






壁にかかった時計の針の音だけが響く










ダンは決意を固め口を開く


「…………どうすればいい?」






桐谷はいつものようにニコッと笑う













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