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恵人生 その2

恵口家自宅アパート



昨日、桐谷さんの話してから

自宅まで帰り連絡を待つことになった。


そして昼の12時あたりにやっと連絡がきた。


「やあ、おはよう恵口君。ごめんね、遅くなって」


「おはようございます。

いえ、自分は久しぶりに家で寛げましたので。 」


「そうかい、いやぁいきなりで悪いんだけどさ

今日入社の手続きとかしたいんだ。」


んっ、急だな。別にいいんだが


「いえ、自分は大丈夫です。」


「まあ時間はそうだね。

午後4時に事務所がいいかな。来れる?」


「えぇ、わかりました。」


「よし、じゃあまた事務所でね、バァイ」


プツりと電話が切れた。


まあ暇だし、テレビでもみようかな。

最近あまり見る時間なかったな。

あまりバラエティーは好きではない。

ドラマも毎週見れるわけではないので好きではない


自分は見るとしたら、旅番組かニュースぐらいか。


『ニュースばっかみて、

たまにはバラエティーとか

お笑い番組とか見たらどうです?

眉間に皺よせまくった

オジサンになっちゃいますよ。』


と後輩に言われたのを思いだし笑いする。



テレビをつけ、チャンネルを変えていくと

結局またニュースに落ち着いてしまう。


「おっ、ゴールドマン、最年少で大将に就任か。

やっぱあの人はすげぇなあ。」


自分は警官にいた頃

ゴールドマンが魔獣との防衛戦で

活躍したというを度々聞いていた。


数多くの戦場へ出て輝かしい戦果を修める。

最年少の部隊長、傑物と騒がれ

甘いルックスで度々CMにも出演していて

自分の幼い頃から彼はスーパースターだった。


自分がゴールドマンに憧れるのも普通のことだ。

だって彼は勝ち組なのだ。

それも年も少し年上なぐらい。

向こうは30後半で俺が24歳……

あと10年であの位置はさすがに無理かな……。




警官ではなくなってしまったが

まだチャンスはある。

俺はこの会社でトップになる!



テレビでは軍部、警察と

この国を守る組織について

説明し始める。


まあ自分が簡単に要約しようか。

ついでに自分らの国以外のことも

かいつまんで話そう。



西の町ダックス、東の町バーナード、

北の町ボルゾイ、そして王都シェパード


この4つの街の対する外からの攻撃を守るのが

軍部の主な仕事の一つである。


この4つの街を合わせてフェンディという1つの国

だということ補足しておこう。


外からの攻撃というと、魔獣や魔族の襲撃もあるが多いのが他国、もしくは他種族からの侵略。


西の町の更に西には魔獣達の国があったり、

東の町の更に東にはもう1つ人間の国があったり、

北の町の更に北には竜の国があるらしい。

そして南にも海を越えた先に魔族の国があるらしい


この4つの国以外にも国はあるのだが、

数が多くなるし、小国ばかりだ。


一つを除いてはどの国も摩訶不思議な国らしい。


まあ写真や画像が資料としてないのが現状だ。

おそらく軍部、警察が情報統制でもしてるんだろう。


他国との関係もあまり良くないとニュースを

見ていてよく思う。

他国の良い所を全くあげずに

悪いところばかりを拾うあたりを見てると

そう思わざるを得ない。



そしてその国々周辺には村や集落があり、

それらは国に税金もしくは作物や鉱物を支払うことでその国の傘下に入り国の保護を受けることができる。


国に守ってもらわなければ、

どの国からも侵略されてしまう。

世界全体が敵になるわけでなのでほとんどの村は

どこかの国に税金を支払い続けている。


少なくとも自分たちの国フェンディは

領地拡大するためにあれこれ軍部が動いている。


軍部にも大将2人に部隊長、

その下に兵士といった階級制度がある。

人数、部隊数に関しては公表されていない。




次は警察についてだ。

彼らは町の治安維持、反社会勢力の撲滅などが

仕事としてある。


内部からの攻撃を防ぐのが役割だ。


部署ごとに仕事が分けられていて

主に大多数の警官が所属する治安課

事務課、そして特務課の3つがある。


それぞれの課も細かく分かれて

おおよそ100班ほどの集まりであり

班ごとに任務が異なる。


5人1組でそれを纏める班長、

その4組を管理する警視

警視25人を管理するのが警視総監

といった具合の階級制度がある。


実は班の数や人数は実際のところではない。

警察官はもっと多いし、班や警視の数も

例えばの話で話しただけだ。



てまあこんなとこか。

細かい話は追々していくとする



テレビを見ている内に時間が過ぎ、午後2時。


そろそろ準備しておいていいだろう。


遅めのお昼を食べ、歯を磨き、髪を整え、

スーツを着て時間は2時30分


部屋に一礼し家を出る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



約束の時間30分前に事務所についた。


携帯の地図アプリを利用して来たので

間違いはない。


1階がカフェになっているのもサイトの方で

確認済みなのだ。


だが事務所の入口がない…どこだ?


カフェの従業員に聞こうか。



ガラス張りの扉を開けると

何人か客がカウンターの前にいて

奥にスーツを着た屈強そうな男がいる。

胸筋でパツパツのスーツの胸には金バッチが輝く。



おそらくマスターだろう。

すごい悪人な面をしている。


実はこの建物の地下で

フェンディ最強決定戦が開催されて

そこのファイターじゃないだろうか…



そういえば桐谷さんも胸に金バッチつけていたな。

会社の人間はみんなしているんだろうか?


警察では警視しかバッチを付けることが

許されなかったのでとても付けてみたい。


少し怖いが聞いてみよう。

このままでは埒が開かない。


「すいません、ロックフェラー人材派遣会社の

事務所へ行きたいのですが入口ってどこですか?」


「んっ、君から見て右側の階段を上がってくれ。

そしたらその先は受付だ。」


「そうですか、ありがとうございます。

自分は入社の手続きをするために来ました。」


マスターらしき男の片方の眉がピクッと動く


「すると、あんちゃんが恵口竜也か?」


なんだ、自分なんか悪いことしたのか

まったく覚えがない


「はい…そうですが……」


男の顔が二パァとにこやかになる。


「おぉ、あんちゃんが恵口か!

桐谷ならもうすぐ戻る。一服していきな」


なんだ良い人じゃないか、

正直パッと見は犯罪者顔だから怖かったが


「いいんですか!?いただきます。」


マスターは奥へ行き用意を始めた。

珈琲の良い香りがする



「おまたせしました、カフェラテです。」


ニコニコしてもってきてくれたカフェラテの泡にはかわいい熊の絵が書かれていた。


「あはは、かわいいですね。

なんか飲むの勿体ないですね」


「そう言われると照れるな、まあ飲まないほうが

勿体ないんで飲んでくれ。味は保証しよう。」


口に含むと、珈琲の甘味とほろ苦い味が

まろやかに広がる。


「んまいですね。あまり飲まないですけど

これは美味いって分かりますよ。」


満足気に笑うマスター


外見は怖いが茶目っ気のあるいい人

これが自分のマスターに対する印象だ。


「そうかそうか。おっ、ところで恵口

お前元警察官だったんだったら

東城忍って警察官知ってるか?」


「えっ、そいつ昔自分の後輩ですけど……」


なんだあいつ、なにやらかしたんだ。

というか、なんでマスターは東城を知ってるんだ


「そいつ、昨日入社したんだ。

もしかしたらと思って 聞いたんだが……

当たりだったようだな。」


はうぁー、あいついんのか。

どのツラ下げて会えばいいんだ……


「そうですか、今日事務所にいるんですか?」


「んー、確かいたな。

クレアの研修受けてるとこだ。

あっ、クレアってのはうちの幹部だ。

まあ詳しい話は桐谷に聞いてくれ」


どうしよう、出来れば全力で会いたくないな。

先輩風吹かしまくった挙げ句解雇なんて


あれ?あいつなんでやめてんだ?

俺はともかくあいつはなんでだ?


コツコツと革靴の足音が聞こえ

姿は確認しなかったが自分の隣りの席に座る。


「いやぁ~、遅くなったぁ。

ジャガさんコーラいれてくれ。」


「おい、金払えやコラ」


「おっ、コーラだけに いでっ!!」


ゴチッと硬いものが当たる音がした。


「おい、コップは投げるもんじゃないよ。

はやくここにコーラを注いでくれよぉ~」


この人をバカにしたしゃべり方は……


「こんにちは桐谷さん。」


「おっ、恵口君!こんちわ。早いね感心感心

じゃ手続きしちゃおーか」



桐谷の後に着いていく。


2階の受付フロアについて

依頼はここで受けるようにと説明をうけた。


そして3階へ


おそらく、この会社の上層部の部屋と見る。


「この通路の突き当たりが社長室だよ。」


あれ?桐谷さんて社長だったのか…

どえらい人に巡り会えたものだ。


壁の修繕をする女性社員にあいさつをして

桐谷についていく。

どっかで見たな、あの人。


プレートに社長室と書かれたドアの前にやってきた



「じゃ中入って。」


「はい、失礼します!」


内装は、シンプルだがお金がかかっているのが

伺える机や、ソファに本棚、

1立方メートルほどの金庫

窓は赤黒い色のカーテンで閉めきられている。


桐谷は机を挟むように置かれたソファにドサッと

座り自分にも座るよう促す。


失礼しますの一言と共に座ったが

月並みな言葉だがフカフカで気持ちいい。



「さてと、今日呼んだのは僕が君を雇うにあたって

書類を書いてもらうために呼んだ訳じゃない。」


「じゃあなぜ呼ばれたのでしょうか?」


「うん、どこの会社もそうだけど

部署ってあるよね

ロックフェラー人材派遣にもあるんだよ。

でもどの部署に配属するかなんて

仕事してみないとわかんないじゃない?

だから短い間だけど僕の下について

働いてもらうよ。

適正を判断するといった感じかな。

ちょっと今新人さんを見れる人が

忙しくていないんだ。

だから僕が君の適正を見て入れる部署を選び

配属する運びになる。質問ある?」


口調は優しいが雰囲気が変わった。

職業安定所で会った時…

人の心をえぐり、中にスッと入る圧迫感?



「はい、1つだけいいですか?」


「うん、どうぞ。」


「依頼のシステムにして教えて頂きたいです」


「そうだね、後で説明しようと思ってたけど

今するからちょっと待っててね。」


桐谷は立ち上がり机の引き出しを開けて

紙を取り出す。


「依頼はこの会社、もしくは個人宛に来るんだ。

もし個人で依頼された場合はうちには

個人で依頼されたとの報告だけを

してくれればいい。

内容の報告は絶対にしないでね。

クライアントの個人情報だからね。


個人の依頼の報酬は自分で1人締めして構わない

まあこれは名が通ってないと依頼はされないから

今の君にはあまり関係ないことだよ。」


確かに今は関係ないがいずれは……


「なるほど、個人の仕事が来るまで会社経由で

仕事をこなしていかないといけないですね。」


「そういうことだね。それで、

会社経由で仕事して

成功したときの報酬金の2割を

会社に納めてもらうことになってるんだよ。」


ぬぅ、やっぱそうだよな。金取られちゃうのか。


「すごい嫌そうな顔するね、

そうでもしないと会社が儲からないんだよ」


「まあそりゃそうですね、わかりました。

あっ、後仕事失敗したらどうなるんですか?」


桐谷はニヤリ笑う


「うん、失敗した時のことを考えて

行動できるのも能力の一つだよ」


なんだか誉められたようだ、なんだか嬉しいな。

大人になってから誉められても

素直に喜べなくなっていたが、

今回はやたらと嬉しかった。


笑っていた顔が真剣な顔に戻り


「失敗すれば報酬金額の2倍を支払い請求する。

支払えない分は会社が融資するが

金利は10日で3割で単利だよ。

利息も払えない場合は会社から出す仕事を

やってもらって払い終えるまで続く。

そうそう、請け負ったのに飛んだら10倍ね

萬田さんの如く回収業者が追いかけるよ」


顔から血の気が引いていくのがわかった。

自分はとんでもない所にきたかもしれない。


「それから3連続で仕事を失敗すれば解雇ね。

そんなやつうちにはいらないもん。

もちろん、手荒な方法で

金を作ってもらうことになる。」


やばい、めちゃくちゃ怖い。

でも危ない橋でも渡らなきゃ大物になれない。

……やってやるぞ、まだ何もやってないのに

尻尾まいて逃げるわけにはいかない

頭の中でなにかキィィーンと聞こえる

なぜかわからないけど自信が湧いてくる




桐谷の口元が緩んでいるように見えた


「まあ君は請け負って逃げ出すタイプでは

ないだろうから大丈夫だろうね。

ごめんね、脅すみたいなこと言って、

でもルール説明は必要だろ?」



ここで桐谷は一息つく。


「まあ言わないといけないのはこんなとこかな」


「じ、自分の初仕事はなにをするんでしょうか」



桐谷はアッ、という顔をする。


「あちゃちゃ、依頼なにしよ。決めてないや。」


大丈夫なのかこの人……。



「ちょっと下行って依頼見て、受付の人に

『受付オススメ依頼』を頼めばいいよ。

あと多分その時に説明あると思うから

ちゃんと聞かないと怒られちゃうよ~」


「はい、わかりました。失礼します。」


自分は立ち上がり、部屋を出て待ち合い室へ向う。




廊下ではまだ作業の途中のようだ。

周りはアンティークな加工がされた木材なのに

彼女の直すところだけ、ベニヤ板になっている。

いくらなんでも不恰好だ。

中途半端な仕事なんかして大丈夫なのか……


穴を塞ぐベニヤ板に釘を打ち込みたいようだが

ベニヤ板を抑えておくのが

上手くできていないようなので声をかけた



「あの、大丈夫ですか?よければ手伝いますよ」


突然声をかけたのでビクつかれて


「えっ!? あっの、あぁいいんですか?」


「はい、ベニヤ板抑えとけばいいんですよね。

それぐらいならできますよ。」


自分はベニヤ板の中央を両手で支える


「そうですか、助かりま……」


んっなんだ?急に黙って。




「もしかして、先輩ですか?」




!?


懐かし響きだな、先輩か……

んん!


「もしかして……東城か?」


銀のバッチをつけたスラックスを着て、

似合わない金槌と釘をもった東城歩がいた。


自分の後輩で、5人組の中にいたメンバーの1人だ



「せ、先輩……先輩……あ……会えるとは

思わなかったですよ。」


「……」


「なんで急に居なくなったんですか。

なんで家族同然だった私達になにも言わずに

出てっちゃうんですか。」


「心配したんですよ……みんな

八王子さんも、新堂さんも、ロビー君も……私も」


なんて返したらいいんだ…………わからん。



「あ、あのな東城。色々理由が「なんですか理由って!」」


「……まだ言えない。」


「……」


「でもいつか、言える時が来たらしてやる。

自分を信じてくれ。今はそれしか言えない……」


「絶対話してくれるんですね?絶対ですね?

約束できます?」


「自分ができない約束しないのは、知ってるだろ?

今回に関しては約束してやれる。」


しばらくの沈黙が続く…




それを東城の溜め息が沈黙を破り

「はぁ~ほんとですね?……信じますよ?」


「ああ、俺はそのためにここに来た。

勝ち組になって……まあ話すと長いからな。

やることがあるんで行く。

さっさと釘打って終わらせてくれ」


「勝ち組?……よくわかんないこと言いますね

了解です。ちゃんと抑えててくださいよ。」


納得してくれたように見える、良かった。

事が終わらしてから話そう。

これは自分1人の闘いだから。






釘に金槌を叩き込む。


ゴッ!!




「あれ? 」

間抜けな声が響く



「釘曲がっちゃいました、アハハハ……」


「ハァー、まじか……不器用炸裂してんな、貸せ

お前が抑えてろ。手間のかかるやつだ」


「エヘヘ、すいません。」


「なに笑ってるんだ、はやく終わらせるぞ。」


「いや、昔を思い出すなって……」


「うるさい、それは八王子さんの役目だ。

自分じゃない。そんなことよりはやくやるぞ。」



1分程で表を終わらせると


「思ったより早く終わりましたね。

下でコーヒーでもどうですか?」


「あほか、釘うったら裏はどうするんだ。

釘剥き出しの部屋で過ごすのかここの人は」


「おぉ、完全に盲点でした!

さすが先輩、腕は落ちてないようですね。」


こいつは仕事はできるがどっかで

ポカをやらかす。心配になるのはしょうがいない。


「うるさい、後は自分でやれ。

俺は今から仕事だ。じゃあな。」


「はい、ありがとうございました。お気をつけて」


東城は昔と変わらず、敬礼をする。

昔からほんとに変わらない。

羨ましいよほんと……


自分は東城に背を向け、片手を上げその場を去った





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ロックフェラー人材派遣会社本社社長室




椅子に座り携帯電話で電話を掛ける男は

コールしている間にキャスターに火をつけ

相手が出るのを待った。




『桐谷、どーしたの?』


「出るの遅いよ、なにやってんのさ。」


『ごめんごめん、ちょっとね』


「まあいいよ、例の2人を会わせた。

これから時期をみてアクションを起こさせる

予定だよ。それから八王子邦彦と

ロビー・シャーストンの捜索と勧誘を

継続してるってのが今回の報告だよ。」


『わかった、みんな元気してる?

他国に出てる子達は大丈夫?

真奈は元気なの?』


「心配ないよ、あの人らは優秀だよ。

南は僕らが北は彼らがいる限り粗方大丈夫だよ。

真奈も鷹さんの報告聞く限りでは元気そうだ」


『そう……でもやっぱりみんなが心配よ……』


「ほんとにボスは心配性だね、ボスはボスの仕事

してくれれば万事上手くいくさ。」



コンコンとドアをノックする音がする。


「あぁ、また時期みて報告するよ。またね…… 」


強引に電話を切り、一口しか吸わなかった

煙草の火が根元まで来ていたのに気づき火を消す。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ロックフェラー人材派遣本社2階待ち合いフロア




自分は依頼について説明を受けるため

受付の女性に話しかける。



「あの、すいません。」


「はい、なんでしょう」


見た目は髪は緑色のミドルのストレート

目が青く、下だけ淵のあるシルバーのメガネをつけ

肌は白い。垂れ目で涼しい顔をしている

おしとやかそうで巨乳な女性だ。



「あの、依頼の説明と依頼をとって来るように

桐谷さんに言われて来たのですけど。」


「あぁ、新人の方ですか?確かぁ……」


「恵口です。」


「あぁ!そう恵口さんでしたね。

書類を用意しますんでお待ち頂けます?」


「はい、わかりました。」


そう言い、ファイルとメモ用紙とペンを取り出す

女性の胸についている

名札にはイルーナと書かれていた


名札とは別のところに目が行きそうだ……


なぜ、名札とは胸につける必要があるんだ。別に胸じゃないくてもいい気がするんだが、 いや待てこれに意味があるのか?いやあるに違いない!恐らく胸の位置に置くことで視線を集中させ、名前を覚えさせるためにあるのかもな。きっとそうだな。すると自分が彼女の胸を見ると言う行為は決して恥ずべき行為ではなく名前を覚えようと全力を尽くしているということになる。つまりそれは仕事をするのに一生懸命なのだしかし別の意味で捉えると胸を見るのに一生懸命ということでもあるぞ…。



大丈夫なのか。あれ自分は大丈夫なのか…………



意識が別の所に飛んでいたようだ。

いかんいかん、説明を受けようとしているのに

こんな考えを張り巡らすこと自体間違っている。

気合い入れろ自分。 巨乳に惑わされな。

ベチンッと自分に闘魂を注入する。



「あ…………の……準備できました。」

最初はつまり気味だがニコッとしてくれる。


うん、自分のビンタを見ても

水に流してくれたようだ。

良くできた女性だと素直に評価できる。

まあ自分の先輩になる人なのだが。



「はい、よろしくお願いいたします。」

自分も今までのことがなかったかのように返事する




「メモ用紙とペンを用意しましたのでメモを

とりながら説明を聞いてください。

説明は1回きりとルールで決まっていますので。

まあ難しい内容ではないのでメモを

とらなくても構いませんが……

コホン、では説明を始めます」


一応用意してくれたんだ、使わせてもらおう。


メモを取るときは、相手の言葉を

自分で噛み砕き短く

いつ読んでもわかるようにするのがコツだ。


自分さえ分かればいいのがミソだな。

犯人の身辺調査の時は役立ったな。



「依頼は、この依頼台帳の中にある

依頼用紙に内容、報酬額と備考の欄が

設けられています。

備考のところには依頼主との連絡の取り方や

依頼を受けそして遂行する際の条件などが

書かれています。」


見せられた空欄ばかりの依頼書を

指差しで教えてくれる


ほうほう、指輪はなしと……いかんいかん!




「依頼書のなかには依頼の内容が書かれおらず

報酬金と依頼主との連絡の取り方しか

書かれていないものもあります。」


「それらの依頼の内容は

大っぴらにできないものなので

危険な可能性がありますので初めのうちは

そのような依頼は受けないことを

オススメします。」


まじか、やっぱり殺しの仕事だったりするのか……

自分はそんな仕事したくないな。



「まあこんなとこです。ほかに質問は?」


「では、『受付オススメ依頼』とはなんですか?」


「…………それ言ったの桐谷さんですよね?」


おしとやかな女性がキッと怒った顔になった。


「はい、その通…り……です。」


ふぅ と溜め息をつき


「それは桐谷さんが依頼を選ぶのが

めんどくさいから受付の人に

選ばせているだけです。」


あんなチャランポランな人嫌いですと付け加える。



「あの……自分今回その『受付オススメ依頼』を

受けて来いと言われたんですけ……ど……」


女性の口がへの字になる。


「ふぅ~、それがどれだけ時間と手間が

かかるのかわかりますか?

あんたは新人でなにができて、

なにができないのかもわからない。

判断材料がないのにどうしろと言うのです?

受付だからって見下しているんですかね?

もし失敗したら私達のせいにするんですよね?

受付オススメ依頼なんて聞こえはいいですが、

あれは桐谷さんやクレアさんなんかの

幹部方が誰も請け負いそうにない仕事を

請け負っているに他なりません。」


今まで怒っていた彼女がクスッ笑い

目には狂気の光が灯っているように見える。


「たまにいらっしゃるんです……

私達受付を見下して適当に選ばせようとする

社員を家族として見ていないやつが……

そしたら、私はきっつーい仕事を回します。

もちろんの如く失敗、もしくは飛んで捕まって 借金地獄です。

そんな方々は私達に文句を言ってきます」


ここから彼女は悲しい顔になる。

どうしたのだろう、悲しい出来事でもあったのか?


「下手をすれば殺しにくるんですよ。

その被害にあった子もいました…


ちゃんと意味も理解せずに

幹部の方々がやっているのを

真似して地獄行き……マヌケですねぇ。

あなたは受付の私達を下に見てたの?

私達はロックフェラー人材派遣会社に来る

依頼のほとんどを管理してる。

あなたに死ぬ程厳しい仕事ふって失敗させて

賠償金払わせて借金地獄で過労死させるなんて 私達からすれば簡単なことなのよ 。

あなたはどうなりたいの?」


ッ!


なにか心臓を一突きされた感覚だった

自分はずっと黙ることしかできなかった

今の自分と彼女とはこんな差があるなんて。


依頼を受ける際に受付オススメにした場合、

その人の実力から大きく離れた依頼を故意に

受けさせられてしまったら

拒否できる可能性はほぼ0に近い。

受付に団結されてしまえば

カメラのない待ち合いフロアでは

証拠すら上がらないだろう。



「…………」





「ただし、今回は勘弁してあげます。」

口調や顔がいつものイルーナに戻っている。



「えっ?」


「……私達、我々社員幹部

全員家族なんだそうです。

私がここへ来た時に

幹部のクレアさんに言われました。

その言葉を忘れたことがありません。

私達はたかが受付嬢ですが

ここの社員の一員です」


彼女の青い目に怒りの意志が宿っているのが

こんな俺でも分かった。


「そのことに私は誇りに思ってます。

そして私は私や仲間を見下されても

黙って仕事するなんて

私には死んでも絶ッ対にできません!」


イルーナは一息つき続ける。



「ですが、あなたも新人とはいえ家族の一員です。

あなたにきつく言ったのは

あなたもここの一員であり

家族あることを確認してほしかった。

桐谷さんが連れてきたあなたは

私達のことを見下さないでほしかった。」



「私の尊敬する人が連れてきた人に

マヌケなやつらと同じミスを

またしてほしくないわ」


桐谷さんが連れてくるやつらは

みんな特別なんだろうか?

俺は確かに元警官だから経歴としては

少し変わり種かもしれないな……


「…………ごめん、全く考えたことなかった

あなたの気持ちを考えずに

無礼なことを言ってしまって申し訳ない。」



「……えぇ、100万とあなたが銀バッジを

つけれるようになったら許してあげます。」


「そうか、許してえぇえ? え?

なに100万円払うの?家族どこいったおい。」



イルーナはいかにも危なそうな巻物を取り出し


「払えないんですかぁ?

私あなたが嫌いになって今から無理矢理に

ドラゴン討伐の依頼とか

勝手に依頼受けちゃいそうですねぇ。

ふふ、あなたの名前で。

あれ?あれ、腕が勝手に…」


彼女のイメージは、おしとやかなお姉さんから

鬼畜なお姉さんにチェンジされた。


「えろばぁぁぁああ!!!

すいません!自分頑張りますから!」


自分は巻物に自分の名前を書かせまいて

上半身だけを巻物にだいぶさせる。


イルーナはさっきとは違い、冗談混じりに笑う。


ぬぅ~、かわいいじゃないか……くそぅ

あと聞きなれない単語があったな、銀バッジ。


「それはやめてくれ、イルーナさん。

銀バッジってなんだ?」


「んっ、知らないんですか?

銀バッジは幹部の直属の部下の方のみ

つけることが許されたバッジなんです。

ちなみに幹部の方々は金バッジですよ」


なんか怖い人がやりそうなことだな。


「恵口さん、あなたはチャンスが

目の前にあるんですよ。

今依頼を100%以上の成果をあげることが

できれば銀バッジも夢じゃないんですよ」


たぶん、桐谷の直属の部下になれるという話だろう


「それに他の社員の方々のほとんどが

『受付オススメ依頼』なんて知らないはずです 今まで桐谷さんの連れてきた方が

依頼を初めて受ける時もそんなこと言ったのを

聴いたことないですから。」


そうなのか、俺だけなのか。なんでそんなことする。



「なにか特別な思いでもあるのかもですね」



うん、なんか怖いなBL的な意味で……

深く考えないでおいたほうがいい。

変に聞いたら俺のお尻が危ない



「どうだろうな……

イルーナさん、いい勉強になった。

100万は将来絶対払ってやる。約束だ。

足りない分は体で払ってやる。」


自分もイルーナさんに負けないぐらい

冗談を混ぜて笑って見せた。


イルーナさんもニッコリ笑う。

くそかわいいなおい


「いらないです。

早くこの依頼持って消えてください。

銀バッジをつけれるようになったら

受付オススメ依頼してあげますよ。

御武運を祈りますよ恵口さん。」


言い過ぎたかと怖くなって依頼書を見た。

内容は要人警護の仕事のようだ。

自分でもできそうな仕事を選んでくれたようだ。


「あぁ、がんばって来る。またな。」


イルーナさん、見た目だけおしとやかな

受付の巨乳な女性だが

彼女の心には太い芯があるように見える。





彼女のお近づきになるために

取り敢えず銀バッジだな。


そして金バッジだ。まだその次もある。

その道は決して楽な道じゃないだろう。

だが、今回は決して逃げない!

イルーナのため、

東城、新堂さん、八王子さん、ロビーのため。

そしてあの時から止まっている自分の針を進めるため




自分は社長室のドアをノックする。








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