忍人生 その1
私こと東城忍がロックフェラー人材派遣会社に
やってきた理由は、手っ取り早くお金を稼ぎたいからである。
王都のなかでも有数のオフィス街
というやつなのでしょうか。
昔の仕事場である東警察署よりも
立派で大きな建物がたくさんあります。
めちゃめちゃ緊張します。
なにせ今日は面接日なのです。
昔先輩に言われたことがあります
「やらなくちゃいけないことがある時に
120%の力を出せる人間にならなきゃ
上には上がっていけんぞ」
まさしく、今日がやらねばならない日。
120%出せるように
いつもより多く面接の練習もしたし!
履歴書もキッチリ書いた!
身嗜みもバッチリ!
あとは面接官に好印象の笑顔をフルパワーで
お見舞いすれば即合格でしょう。
はぁ~…そんな上手いこと行くわけ……
いかん!いかんよ私ッ!!
ロックフェラー人材派遣会社は見た目、
カフェのようなオシャレな建物。
というのも 1階はカフェで
その上が会社だとHPに書いてありました。
他の王都の優良企業の建物と比べ驚くほど小さく
3階建てだそうです。
頼りなさそうな見た目の会社ですが
かなりの実績があるようで、
派遣した企業98%が職場での問題改善、
売上アップという驚異の実績を誇り、
このオフィス街でもなくてはならない存在であるとネットに書かれていました。
私は木製のドアを開け、たくさんのテーブルを抜けカフェのマスターの元まで一直線。
ものすごく体格の良いマスターだ、
めちゃめちゃ怖いよぉー……だけどここで退いては
女が廃るというもの 東城忍推して参ります
意を決し
「私ロックフェラー人材派遣会社で
面接を受けさせて頂くことなっております
東城忍と申します。面接に来る際には
カフェのマスターに」と
途中まで喋ることができましたが
長かったのでしょう
マスターが無言で手を突き出し
話をやめさせカウンター横の階段を指差し
「階段はあっちだ、頑張んなお嬢さん」
と笑顔で応援してくれました。
私は笑顔で返事し、階段に向かおうとしたときマスターの声がして振り返りました。
「お疲れさん、今日どーだった?
活きのいいやついたのか」
とカウンターに座った若者に話しかけていました
若者の第一印象ですが……
んー、上手い感じを伝えらないな。
なんだろう、若いなりに気品があるなぁ
もしかしたら貴族の方かな?
そんな若者はマスターに
「うん、活きのいいやついたよ。
元警官で結構体格もよかったし
あと頭も回りそうだ。あとねぇ…」
私の頭で1人の先輩が頭をよぎりました。
その後はあまり盗み聞きはよくないと思い
階段を上がり2階へ上がりました。
2階は教室2つ分ほどの広さがあり、
奥に受付窓口があり、一つは企業
もう一つは個人用でした。
私は受付の女性に「面接を受けたいのですが」
と前の反省を生かし手短に話すと
「あっ、東城さんですね。
あの階段から3階上がっでもらって
通路の突き当たりが社長室です。
そこで面接してもらいます。」
なんといきなり社長と面談とは思いませんでした。人事担当のおじさんが面接官と思ってました。
むぅ~確かに予想とは違いましたが
練習通りすれば大丈夫、
絶対合格できる。私ならできる。
私自身に言い聞かせ3階の通路を歩いていく。
下には赤いカーペットが敷かれていて、
通路にはいくつもドアがありました。
まるでホテルのようです。
お金かけてる感じがヒシヒシ伝わってきます。
ドアにはネームプレートがついていて、
なかにいる人の名前を示しているようです。
私がツカツカ歩いていると
後ろの誰かが私の肩に手を置いて来ました。
ヒヤっと背筋が凍るの同時に
頭の中でガチン!と音がしたような気がしましたが全く構いません、この手の人物は危険だと
本能がアラートを鳴らしているのがわかりました。
こんな感覚、殺人犯と対峙したとき以来です。
すぐさま相手の手首を左手で掴み、
私の胸の方まで引き寄せ、
右手で相手の肩を掴み、
相手を背中に乗せそのまま足のバネにして、
気合いの声とともに相手を壁に埋めてしまう勢いで「でゃー!」と背負い投げ。
壁との距離が近かったので
壁に相手の顔面が当たるゴッと音がしましたが
関係ありません。
そのまま地面に叩きつけるだけです。
ですが相手を地面に
叩きつけることができませんでした。
なぜなら頭部が壁に埋まっていたからです。
正確にいえば壁を突き破ったという表現の方が
正しいように思います。
私は自分がやったのか呆然としました。
今まで訓練でもここまで威力のある
投げ技をしたことがなかったからです。
相手が心配になり
「すすすいません、大丈夫ですか?」
と声をかけたが聞こえていないようです。
この光景、かなりシュールだと思います。
誰か人が通ったらどうしようと思い
引き抜こうと近づくと、
相手の声らしきものと女性の声がします。
「あっ、こんにちはクレアさん。
今日も美人ですね、惚れ惚れしますよ。
クレアさんの半裸見れるなんて幸せだなぁー。
あはははは。あれ、なんで杖持ってんの。
危ないってば!」
「あら、私の半裸見れるなんて幸せ者ね、桐谷。
一生分の幸せを今得ることができてよかったわね それじゃ覚悟はできてるわよね?
私はできているわ。」
どこかで聞いたセリフです、
すると埋まった相手は急に大声で叫び始めました。
「ぬおぉおーー、抜けぬぅうう
らめぇええええーー抜いてぇーー!!
誰かぁぁああーーへーーールプッ!!!」
……怖い、なんだこの人。
でも、埋めたのは私なので
必死に引き抜くために相手のベルトを持ち
全力で引っ張る。またガチン!と音がしました。
まただ、なんか嫌な予感がするなぁーと感じましたが今はそれどころではありません。
そして2、3回引っ張るとひっこ抜けました。
私はその拍子に尻餅をついてしまい、
桐谷と言われた男は壁に頭が埋まってしまった
マヌケとは思えないスピードで横っ飛びすると
穴から炎がボワッと出てきました。
なんなんでしょう、あんな炎初めて見ました。
黒と緑を混ぜたみたいな色の炎でした。
するとドアがバンッと開き、
アジアンビューティーな女性が
身の丈の1メートルほどの木でできていて
先に綺麗な鉱石のついた杖をもって出てきました、半裸で。
多分160㎝の私より10㎝ほど高く程見える。
髪は黒の肩辺りまでの長さのストレート。
THEキャリアウーマンですね、半裸だけど。
「あんなワイルドな覗きは初めてだわ。
だから久しぶりに変態相手に
ほんの少し怒ってしまったわ。
あら、誰このかわいいお嬢さんは?」
私は話しかけられてるのに気付きハッとなり
「私は本日、ロックフェラー人材派遣会社へ
面接を受けさせて頂くために来ました
東城忍です。」
思わず敬礼までしまう始末です。
恥ずかしくなり敬礼した手をササッと下ろします。
「ふふん、なるほどね。
ほら、そこで律儀に
正座している男が“一応”社長よ。
彼が面接官だから。
先に社長室で待ってなさい。」
あっどうも社長の桐谷です。と
私は正座中の社長桐谷は自己紹介された。
私はゾッとしました。
彼が面接官もとい社長だったとは
引きつった笑顔で言葉を返し
トボトボと社長室へ向かいました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人材派遣会社3階の廊下にて
「あの子どーする気よ」
少し気になり聞いてみた、あの子は使える。
名前は東城だったかしら
多分この男も気づいてるはず、あの子の才能に。
「どーもこうも僕を一本背負いしたんだよ、
痛たた、タンコブできてるよ~」
あんたの怪我なんか今はどーでもいいのよ
イライラするわ、いつもニヤニヤしてるのが特に
「不採用にするなんて言ったら溶かしてやるわ」
「そんな勿体ないことしないよ、
久しぶりのスキル適合者だよ
しかもすでに悪魔持ちときた。
やめたいと言っても採用だよ。
でもクレアさんが人に拘るなんて珍しいね、
どーたしたのさ?」
やっぱり気づいてた。そのあたりは目敏い。
それに変なことも聞いてくる。
正直うざい
私は東城忍について考える
あの子が悪魔持ちなのは
悪魔に触れ合った経験がある人間ならば
ある程度は分かる。
悪魔と触れ合った経験がないものでも
勘の良いやつなら悪魔と分からないまでも
何か良からぬ物、普通ではない物だろうと言う
察しがつくことぐらいがある。
しかも悪魔の中では確実に上位に入る部類
なぜあの子が従えているのか。
それはあの子を部下にして
過去の人生の出来事を聞いていけば
いずれは分かることだし、
あの子自体たぶん優秀だわ。
ここで私は本題に入る。
「桐谷、あの子私の部下にするわ。
ちゃんと手配しなさいよ。
無名にしては才能ある……ように見えたし
育てみるのも面白いと思ったわけよ。
あの子次第だけどね。もしかしたら化けるかも」
「東城さんねぇ、まぁ確かに才能はあるかもね。
恐らくは強力な悪魔持ちだと思うよ。
わかった、クレアさんの言う通り手配するよ。」
強力な悪魔だと分かっていても手放した?
この男は、優秀なやつを一旦自分の手元に置いて
適性を見てから、その後に他の幹部に預けるなり
他の街や国に派遣するのに……。
今回はそれをしなかった……
何かあるのは確かね…気になるわ。
交渉は悔しいけど桐谷の土俵。
私が上がってもどうにもならないわ。
なら、方法はひとつ。
「あなたは最近使える奴が入ったの?どうなの?」
そう、ド直球に聞く…これしかない。
答えてくれるかしら…?
「2週間前に入った新堂君は優秀だよ。
もう2つ仕事こなしてるよ。
それに今日も見つけてきたよ。
恵口君って元警官のやつなんだ けどさ。」
彼とそれから10分ほど話し込んで別れた。
これからの仕事が楽しくなってきた。
私は部屋に戻ろうしたが穴の空いたドアを見て、
修繕の依頼を出して仲良しの女の子
寿ちゃんの部屋へ泊まりに出かけるのだった。
まだ終わってないです。投稿のシステムがわからず試しに出しただけです。なので編集しまくりますのでなにとぞ今後の展開にご期待下さい。