とりあえず自分について知ろう
さて、ここで例えばの話をしよう…もしも、人が上空1万メートルから落下したらどうなるだろうか?その人は、地面に迫る恐怖を感じながら今までの人生について走馬灯のように思い出すだろう…
ん?なんでこんな話をしているのかって?
それは………
「実際にそんな場面だからな…」
俺は今も落下を続けている。多分、そろそろ5000メートルを切るんじゃないだろうか…
しかし、俺は思ったほど焦っていなかった。何故だかわからないが、着地できると思えてくるんだ。多分、魔神ヴェールと名乗った少女がくれた力なのだろう…
「…そろそろ1000メートル切るな…あんなに小さかった森や川がかなり大きくなってきた」
そして、俺は地面に足をついた。そう、物音一つ立てずに…はっきり言って以上だ。地球にいたころ俺はこんな達人じみたことできなかったし、何より運動は得意どころか不得意だった。50メートル走も8秒後半だし、握力も20k程しかなかった。
「…どうなってんだ?この体?」
俺は、地球にいたころとほとんど変わらない容姿(髪や目線の高さも変わっていなかった)なのは確かだ。鏡がないから正確にはわからないけど…
「まぁ、いいか…とりあえず街の見えた方向に行くかな…砦があったから恐らくそれなりに大きな街だろうけど……検問とかありそうだな」
俺は街の見えた方向に歩き出した。
それから数時間後…
「街まであと10キロくらいか…ん?なんだあれ?」
俺の目の前には、灰色の毛をした2メートルぐらいある狼がいた。その目には、こちらに対する警戒心がうかがえる。
「飛びかかってこないってことはそれなりに知恵があるか野生の勘かな?」
「ぐるるる…」
狼は威嚇するように唸り声を上げた。まるで、|後ろにある何かを守るように(・・・・・・・・・・・・・)…
(?何か後ろにいるのか?こいつが守りたいほどの何かが…)
とりあえず俺は、数十メートル先にいる狼に歩み寄った。
「がる!ぐるるるぅ…っ!がぁぁ!」
さっきよりも威嚇の声が大きくなるが俺は構わずに進んでいく。
「がるぁ!」
狼は数十メートルある距離を一気に詰めてきた。その速さは圧巻だ。初速は恐らく時速40キロぐらいだろうか…
「だけど…見える!」
俺は、軽く体を右にずらして狼の頭を掴み地面に押し付けた。そのまま、俺は狼をほっておき何かの元へ向かった。
そこにいたのは…
「獣人…?それにしても…」
十二歳ぐらいの小さな獣人の女の子がいた。髪の色は耳や尻尾と同じ灰色で形は犬耳ぽかった。顔はあどけなさが残っている。目を瞑っているから、恐らく寝ているのだろう…
「この足はどうしたんだ?」
足には無数の青あざが出来ていて、所々内出血もしている。よく見ると、足首には何かが嵌っていた痕のようなものがある。
「この子は奴隷だったのか?」
とりあえず俺は女の子を抱えて俺が地面に押し付けた狼のところへ行った。
「あちゃ、狼気絶してるよ…この子のこともあるし連れていきますか…」
俺は狼を脇に抱えて歩き出した。目的地は、俺が来た道の反対側にある湖だ。そこで、女の子の傷をいやそうと思う。
「さて、行きますか。今回はちょっと飛ばす…」
俺はそう言うと一気に駆け出した。その速度は、まるで風のようで土埃や木の葉を巻き上げながら森の中に戻っていった。
俺の走った後には、風になぎ倒された草木が転がっていたとか…
それから、数分後…俺は湖にいた。え?早すぎるって?それにさっきは数時間かかったって言ってたって?うん、俺もまさか走るとこんなに速かったなんて知らなかったよ…最初っから走ればよかった。体力のほうもまだまだ余裕があるし…
「ぐる…?」
「お、起きたか?」
「ぐる!?がるるぅ…」
「警戒すんなって、あの子だって連れていたから…」
俺はそう言い自分の隣にいる女の子を指さした。
「ぐるるぅ…」
狼はどこか安心したような声を上げた。
【スキル:魔獣の知恵を入手しました】
【ステータス画面でご確認お願いします】
軽快な音楽とともに俺の頭の中に文章が現れた…