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「婚約○き」←五十音全て入ることが明らかになりました

掲載日:2026/06/17

【あ】


 黒髪で切れ長の眼を持つ伯爵令息ベルフ・オーソンと金髪セミロングの伯爵令嬢エアルナ・マベーラが、道を歩いていた。

 ベルフが並木道を眺めながら、ささやく。


「エアルナ、紅葉が美しいね」


「そうね、ベルフ」


「こんな季節にこそ、君に言いたい言葉がある」


「え?」


 ベルフはエアルナに向き直り、まっすぐに言葉を紡いだ。


「婚約しよう」


「はい……!」


『婚約秋』



***



【い】


 ある日、ベルフが言う。


「エアルナ、俺たちが婚約を交わした時にサインした書面はどうした?」


 エアルナが答える。


「あ、いっけない。間違えてどこかに遺棄しちゃったかも!」


 ベルフが慌てる。


「おいおい、あんな大切なもの捨てるなよ!」


「ごめんなさーい!」


 エアルナは舌をペロリと出して謝った。


『婚約遺棄』



***



【う】


 海岸で、エアルナが釣りをしている。

 ベルフが後ろから声をかける。


「おっ、釣りをしてるのか」


「ええ」


 ベルフが水面にある浮きを見る。


「あの浮きはもしかして……」


「婚約した時、あなたがプレゼントしてくれた浮きよ」


「エアルナ……!」


 自分のプレゼントを使ってくれているエアルナを見て、ベルフは喜んだ。


『婚約浮き』



***



【え】


 ベルフとエアルナは、列車に乗り、並んで座っていた。

 暖かい気候もあり、二人ともウトウトしている。

 車内アナウンスが流れる。


『次は~婚約~、婚約~。お降りのお客様は忘れ物にご注意ください』


 二人は慌てて立ち上がる。


「やべっ、次で降りないと!」


「乗り過ごすところだったわね!」


『婚約駅』



***



【お】


 昼下がり、ベルフとエアルナはカードゲームに興じていた。

 エアルナが竜の描かれたカードで、攻撃を仕掛ける。


「プロミネンスドラゴン、火炎ブレスよ!」


 しかし、ベルフは――


「罠カード『婚約』発動! 俺のモンスターとお前のモンスターは婚約するから、その攻撃は無効だ!」


「なんですってぇ! 罠カードを置いていたなんて……!」


『婚約置き』



***



【か】


 エアルナが、ベルフに果物を手渡す。


「お、なんだこれ?」


「新種の柿よ」


「いただきまーす! お、甘くて美味いな! 名前は?」


「婚約柿って言うらしいわ」


『婚約柿』



***



【き】


 ある日、ベルフとエアルナは大喧嘩していた。


「このバカ女!」


「このアホ男!」


 二人は息を荒げながら睨み合う。


「お前との婚約、どうやら考え直した方がよさそうだな……!」


「そうね!」


『婚約危機』



***



【く】


 花壇でエアルナが植物に水を与えている。後ろからベルフが声をかける。


「へぇ~、珍しい植物だな。特に茎が美しい」


「でしょう? 茎の美しさでは世界一なんて言われる植物なのよ」


「ところで、この植物の名前は?」


「婚約って言うのよ」


『婚約茎』



***



【け】


 ベルフが叫ぶ。


「エアルナ、俺と婚約してくれ! けきーっ!」


 エアルナが叫び返す。


「いいわよ! けきーっ!」


「けきーっ!」


「けきーっ!」


「けきーっ!」


「けきーっ!」


 しばらく奇声を発し合うが、我に返ったベルフがつぶやく。


「なぁ……まだ九文字目でこのザマってどうなんだ?」


「ベルフ、それは言わないお約束よ」


『婚約けき』



***



【こ】


 ベルフが告白をする。


「エアルナ、お前に婚約を申し込……コォォォォォ……」


 独特の息の吐き方をするベルフに、エアルナが解説を加える。


「あれは……プロポーズの成功率を上げるとされる伝説の呼吸法だわ! まさかベルフが会得していたなんてね……」


『婚約呼気』



***



【さ】


 ベルフが大きなチーズを持っている。


「よし、チーズを二つに裂こう」


 ところが――


「あら、チーズが変な裂け方をして、婚約って文字になっちゃったわ」


 エアルナは目を丸くした。


『婚約裂き』



***



【し】


 エアルナがベルフに話しかける。


「ベルフ、この間コンサートやったんだって? どうだった?」


「“婚約行進曲”って曲の指揮を担当したよ。大成功だった」


「おめでとう!」


『婚約指揮』



***



【す】


 お茶をしながら、エアルナが笑う。


「私ね……“婚約”って言葉、大好きなの!」


 ベルフも笑顔で答える。


「俺もさ! “婚約”大好き!」


「“こ”で始まり“く”で終わる! 言葉の響きがいいわよね~」


「ああ、座右の銘は“婚約”にしたいぐらいだ!」


『婚約好き』



***



【せ】


 ベルフとエアルナが二つ並んだ席を見つける。


「なんだこれ?」


「婚約者同士が座る席だって」


「へぇ~、座るとそのカップルは幸せになれる、みたいな言い伝えがあるとか?」


「別にないんだって」


「ないのかよ!」


 とりあえず、二人は席に座った。


『婚約席』



***



【そ】


 エアルナが息を弾ませて、走ってきた。


「ベルフー!」


「エアルナか。どうした?」


曽木(そき)さんが婚約したんだって!」


「曽木さん!? あの東方の国から、我が国に引っ越してきたっていう曽木さんか!」


「めでたいわよね~」


「ああ、今度曽木さんにお祝いを贈ろう!」


『婚約曽木』



***



【た】


 ベルフとエアルナは大きな滝を見に来ていた。


「婚約者と見る滝ってのもいいもんだな」


「本当ね」


「俺たちも滝のように、高いところから落ちても大丈夫なカップルになろう!」


「……まず落ちたくないんだけど」


『婚約滝』



***



【ち】


 ベルフが報告する。


「俺の知り合いが婚約することになったよ」


 エアルナはふと思い出したように言う。


「そういえば、知り合いって、“知己”とも言うわよね」


『婚約知己』



***



【つ】


 夜の庭園で、ベルフとエアルナは空を見上げる。


「月が綺麗だな……エアルナ」


「本当ね、ベルフ」


「愛する婚約者と見る月は格別だ」


「……もう。ベルフったら」


 エアルナは顔を赤らめる。

 二人は甘いムードを漂わせながら、静かに寄り添った。


『婚約月』



***



【て】


 ベルフが顔を真っ赤にして怒る。


「伯爵家のマディンの野郎が、俺たちの婚約をバカにしてるらしい! 許せねえ!」


 エアルナも憤る。


「私たちの婚約を侮辱するなんて……あいつは“敵”ね!」


「今度あいつのワインにたっぷりスパイス入れてやる!」


『婚約敵』



***



【と】


 カフェで向かい合うベルフとエアルナ。


「なぁ……俺たちそろそろ婚約する時だと思わないか?」


「そうね、今ぐらいがちょうどいい時だと思うわ」


『婚約時』



***



【な】


「エアルナ、婚約しよう!」


 ベルフの言葉に、エアルナは涙をこぼす。


「うっ、ううっ……!」


「どうした?」


「婚約を申し込まれたことが嬉しくて、嬉しくて……うぇぇぇぇん!!!」


 釣られてベルフも泣き出してしまう。


「俺も嬉しいよ……えぇぇぇぇん!!!」


『婚約泣き』



***



【に】


 ベルフが知識を披露する。


「遠い遠いどこかの国には、男性を“ニキ”って表現する文化があるらしいぞ。何とかニキみたいな具合に」


 エアルナは首を傾げる。


「“ニキ”ってなに?」


「“兄貴”の略らしい」


「じゃあ、ベルフって婚約ニキじゃない」


「だな」


『婚約ニキ』



***



【ぬ】


 ベルフがエアルナに呼びかける。


「注文いいですか?」


 エアルナが答える。


「どうぞー」


「俺と付き合ってください! 愛とデート多め、婚約は抜きで」


「あいよー!」


 こうして二人は付き合うことになった。


『婚約抜き』



***



【ね】


 エアルナが知識を披露する。


「遠い遠いどこかの国には、女性を“ネキ”って表現する文化があるらしいわよ。何とかネキみたいな具合に」


 ベルフは首を傾げる。


「“ネキ”ってなんだよ?」


「“姉貴”の略らしいわ」


「じゃあ、エアルナって婚約ネキじゃん」


「そうね」


 ベルフたちはつい本音をこぼす。


「ネットスラングで二枠も埋めることができてラッキーだよな」


「ええ、助かったわね……」


『婚約ネキ』



***



【の】


 ベルフとエアルナは一本の木を見上げる。


「この木の下で婚約すると、その夫婦は幸せになれるらしいぞ」


「ってことは私たち幸せになれるのね?」


「そういうことさ」


 ところが、二人の頭上に木から毛虫が落ちてきた。


「うわぁぁぁぁぁっ!?」


「いきなり不幸になったじゃない!」


「襟の中に入った! 入ったぁぁぁぁぁ!」


「こっち来ないでよぉぉぉぉぉ!」


 しばらく二人は悲鳴を上げ続けた。


『婚約の木』



***



【は】


「エアルナ・マベーラ、お前との婚約を破棄する!」


 ベルフが高らかに宣言した。


「そんなっ……!」


 エアルナは悲しげな顔をする。

 だが、二人ともすぐにいつもの顔に戻る。


「うーん……いい。素晴らしい。“やっぱこれだよな”って気持ちになれた」


 エアルナもうなずく。


「原点にして頂点――実家のような安心感ね」


『婚約破棄』



***



【ひ】


 ベルフがエアルナに頭を下げる。


「頼む、やっぱり俺と婚約してくれ!」


「引くわ~! さっき破棄したばかりなのに、やっぱり婚約してなんて引くわ~!」


「当然の反応すぎる」


『婚約引き』



***



【ふ】


 カフェでお茶をするベルフとエアルナ。

 突然、ベルフが言った。


「婚約しよう」


「ブーッ!!!」


 エアルナは驚きのあまり、口から紅茶を吹き出してしまった。

 それを全て浴びたベルフは、無言でハンカチを取り出すのだった。


『婚約吹き』



***



【へ】


 ベルフとエアルナがハァハァ言っている。


「こ、婚約してえよぉ……」


「わ、私も……」


「婚約ってやめられねえよな!」


「ええ、体が自然と婚約しちゃうわ!」


【婚約癖】



***



【ほ】


 エアルナが魚を持っている。体色は銀色で、非常に細長い。


「なに、その魚?」


「ホキって魚よ」


「へえ、そんな魚があるのか」


「婚約した記念にさばくから、一緒に食べましょ」


『婚約ホキ』



***



【ま】


 エアルナがベルフに声をかける。


「ねえねえ、幼馴染のマキちゃんが婚約したの」


「へえ、あのマキが? めでたいな!」


『婚約マキ』



***



【み】


 エアルナがベルフに声をかける。


「ねえねえ、幼馴染のミキちゃんが婚約したの」


「へえ、あのミキが? めでたいな!」


『婚約ミキ』



***



【む】


 エアルナがベルフに声をかける。


「ねえねえ、幼馴染のムキちゃんが婚約したの」


「へえ、あのムキが? めでたいな!」


 そこへ謎の筋肉男が現れた。


「貴様ら……三連続でそんなオチが通ると思っているのか」


 謎の筋肉男は猛ダッシュしてきた。


「貴様らを……制裁する!」


 ベルフとエアルナは慌てて逃げ出す。


「ひいいっ! ムキムキ男が追いかけてきやがる!」


「ごめんなさーい!」


『婚約ムキ』



***



【め】


 ある古い屋敷内で、ベルフは告白する。


「エアルナ、婚約しよう」


「……はい!」


 その時、どこかから異音が聞こえた。


「今メキッていったな」


「なにしろ廃墟だからね、ここ」


「そもそもなんで俺らはこんなところでデートしてるんだよ」


『婚約メキ』



***



【も】


 ベルフが愚痴をこぼす。


「婚約したはいいけど、いつ結婚するか全然決まらないな」


 エアルナもうなずく。


「お互いの家の都合もあるんだろうけど、ずっと助走させられてるようで、やきもきするわね」


「“婚約やきもき”……略して」


『婚約もき』



***



【や】


 ベルフとエアルナは新しい商売を始めた。

 二人で屋台を出し、鉄板の上でなにやら生地を焼いている。

 そこへ客がやってきた。


「婚約焼き、三つください」


「あいよ!」


 ベルフは『婚約』という文字が入った焼き菓子を箱に入れて手渡す。

 店は大繁盛である。


『婚約焼き』



***



【ゆ】


 寒い冬の日、ベルフとエアルナは街をデートする。


「婚約者同士、デートをするのもいいもんだな」


「寒いけど、あなたがいれば心まで暖かいわ」


「エアルナ……」


 見つめ合う二人。そこに白い物が降ってくる。


「雪だ……!」


「まるで私たちの婚約を祝福してくれているようね」


『婚約雪』



***



【よ】


 ベルフがしみじみと言う。


「婚約って良きことだよな」


 エアルナも同じように言う。


「婚約って良きことよね」


 二人は幸せを噛み締めていた。


『婚約良き』



***



【ら】


「ラキーッ! ラキーッ! ラキーッ!」


 ベルフが嬉しそうに叫んでいる。

 エアルナが心配そうに声をかける。


「ど、どうしたの?」


「お前と婚約できてラッキーって叫んでたのさ!」


「ふふっ、そういうことね」


『婚約ラキ』



***



【り】


 ベルフが装置を発明した。


「エアルナ、これを見ろ!」


「なにこれ?」


「ここのボタンを押すと、音声が再生されるんだ」


『キミト婚約シタイ!』


 エアルナは感心する。


「今や婚約の申し込みも機械でする時代なのね」


『婚約利器』



***



【る】


 ベルフとエアルナが手を繋ぐ。


「婚約者同士、“気”を伝え合おう」


「そうね」


 二人は自身の気を操作し、お互いの体内に巡らせる。


「おおっ、気が流れてる、流れてるぞ!」


「感じる! 感じるわぁ!」


【婚約流気】



***



【れ】


 ベルフが履歴書を書いているので、エアルナがそれを取り上げる。


「履歴書? 見ちゃお!」


「おい、よせよ!」


「どれどれ、婚約歴の欄は……」


『伯爵令嬢エアルナ・マベーラとしょっちゅう婚約をし、時には破棄もしている。でもまたすぐ婚約している』


「……なにこれ。カオスすぎない?」


「事実なんだから、しょうがないだろ!」


『婚約歴』



***



【ろ】


 ベルフが豆知識を披露する。


「異世界にはロキっていう神様がいるらしいぞ。せっかくだから祈らないか?」


「いいわね。私たちを幸せにしてって祈りましょう」


 二人はロキに祈りを捧げる。


「ちなみに、どんな神様なの?」


「イタズラ好きで、トラブルメーカーみたいな神様らしい」


「……それ、祈らない方がよかったんじゃない?」


『婚約ロキ』



***



【わ】


 ベルフが爽やかな表情をしているので、エアルナが尋ねる。


「やけにスッキリした顔してるけど、どうしたの?」


「お前と婚約したから、記念に脇の手入れをしたら、スッキリしたんだ」


「へぇ~」


 エアルナは心底どうでもよさそうに答えた。


『婚約脇』



***



【を】


 ベルフが笑う。


「俺たちって婚約を機に成長したよな!」


 エアルナは微笑む。


「ええ、私たちって婚約を機にエレガントになったわよね!」


 ベルフはうなずく。


「そう、婚約を機に……」


『婚約を機』



***



【ん】


 婚約を交わしたベルフとエアルナは猿の真似をすることにした。


「ンキーッ!」


「ンキキキッ!」


 二人が食べるのは、もちろんバナナである。


『婚約ンキ』



***



 ついにベルフとエアルナはやり遂げた。

 「婚約○き」に五十音を埋め込んでみせたのである。


「やったな、エアルナ!」


「ええ、ベルフ!」


 しかし、ベルフは深刻そうな表情を見せる。


「だけど一つ重大な問題がある」


「なに?」


「埋めたのはいいんだけどさ、多分誰も内容に納得してないと思うんだよ」


 すると、エアルナは笑う。


「こういうのはね、内容はどうでもいいの。やり遂げたことそのものが大事なの。テストだって同じ0点でも白紙で出すより、何か書いておいた方がマシでしょ?」


「フッ……そうだな!」


 ベルフは真剣な眼差しでエアルナを見つめる。


「俺たちは偉業をやり遂げたんだ。今度こそ、正式に婚約しよう」


「二人で幸せになりましょうね、ベルフ」


 中身はどうあれ、納得できるものかはさておき、ベルフとエアルナはやり遂げた。

 確かな達成感に包まれつつ、二人は熱い口づけを交わした。






おわり

お読み下さいましてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
最後に「今度こそ、正式に婚約しよう」と言ってますが、五十音の婚約劇は全て偽りだった……と? 読んでいるだけのこちらも謎の達成感を感じました。ベルフとエアルナ、末永くお幸せに!
 発想を文章に起こして、物語にする。  その意気、グッド!
五十音が全て埋まった後は、次は濁音や半濁音がありますね。 「が」…婚約餓鬼 「ぎ」…婚約偽記 「ぐ」…婚約虞姫 「げ」…婚約劇 「ご」…婚約誤記 ガ行だけは取り敢えず思いつきましたが、半濁音のパ行は難…
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