第77話 まさかの:メインシナリオ?!
短期ログアウトついでに掲示板に書き込みしようとしたら、推定我々が、GMさん達にいろいろ言われている真っ最中だった……
ってマジか、今やってるこれ、メインシナリオ?!
いやいやいやいや、ストーリー関連って未実装じゃなかったの!!?
「花枝さーん、えらいことになってたよ」
「ベータテスターを舐めておられたようですねえ」
例によってトイレ前で遭遇した花枝さんに話しかけたら、なんか満面の笑顔だった。
この状況、めっちゃ楽しんでるよこの人!!
「まあ不具合や問題点は随時報告上げてるんですし、我々に問題はないんですよ」
「そうねー、朔夜がいるおかげで報告頻度かなり高くなってるわ、私」
「掲示板を見る限り、どうもそれもプラス補正になっている気配がしますね?
まさかAIにご機嫌の概念があるとは思いませんでしたが」
「NPCもAI制御なんでしょ?彼らの好感度を得るのと同じことじゃないかな」
そもそも何か特別な小細工なんてしたわけじゃないし、今後もやり方を変えるつもりはないしね。明朗快活かつ誠実に、だよ?
まあ青玉槿の現状は、既になんとか解決しとかないとまずいレベルらしいから、掲示板の内容はあまり気にせず、まだまだ頑張るけど!
翌ログインは豪華な寝室からのスタートだ。
本日の3ログ目は、青玉槿の領主様のお屋敷からお送りします?
なお、私たちのパーティだけ豪華寝室、他のメンバーは従士さん用のやや簡素な寝室だったらしいですよ。
サウル::おはよう諸君。これアラリーダーが誰かとかは参照しないんだなあ。
玉兎::おはよう。そりゃ個人クエだからね、お使いの方は。
ミケ::だがパーティやアライアンス自体は認識してるんだよな
ひまり::こないだの威力偵察の称号処理を見る限り、参加履歴も見てるよね?
アン::NPC好感度を推定する限り、NPCは結構あれこれデータ参照してますよね。
北斗::思うんだけど師匠があんなボロ家にいるの、フラグ隠し?
ひまり::ありそう……端っこの方だったとしても、王族の人がいる場所じゃないよね、あれ。
でも今思うと、おばあちゃん師匠、家はぼろぼろだったけど、お布団はいい奴だった気がするんだよね……絹の肌触りだった気がする。お洗濯とかもされてて綺麗だったし。
「おはようございます。朝食のあと会見を、との当家の主の意向でございますが」
「おはようございます!それで大丈夫です、急ぎだとは聞いていませんので」
とりあえず館の従業員?みたいな人に聞かれたことには補足をつけて返す。
少なくとも、いつまでに持っていけ、とは言われなかったのは確かだ。
急ぎなら、期日指定くらい付いてきそうなものですよね?
ミケ:部屋割り直前に見て思ったんだがひまちゃんさん?
ひまり:ミケさんがなんか変な呼び方するー!
おもむろに、ミケさんがパーティ会話に切り替えたのでこちらも合わせる。
たまにミケさん変な呼び方するんだよねえ?
北斗:台詞の割に口調が真面目だな?
ミケ:いや、称号がな?その[カンペキ☆回避☆]ってなに?
ひまり:……わかんない。翡翠のユーザーイベント終わったときに付いたんだけど。
玉兎:わかんない、じゃなくて説明、読もうか。
くっ、玉兄さんはごまかされてくれないか!ですよね!
ひまり:えーっと、『長期作戦行動中、ターゲットされても一度もダメージを受けなかった証』
アン:まあ納得ですね。ひまりさんだけ完全ノーダメでしたからね……
ミケ:もしかして、【確定回避】ってその称号ないと出ない……?
ひまり:えぇ?まさか?
(そのまさかじゃな。【イヴェイジョンスタンス】は他の称号効果でも出るが、【確定回避】は☆付きでないと出ないぞ)
うわあ、朔夜の解説、それってつまりあれ、オンリーワンスキル??
ぴこん!と更新音が鳴る。
玉兎:更新……ワールドファースト称号と固有スキル……?
ミケ:オンリーワンスキルは草不可避
アン:盾職の人たちがじたばたしそうですが……
ひまり:称号の取得理由からして、盾士じゃ絶対無理だよこれ!
北斗:確かにそれはそう。
あの人たちは受けてダメージを減衰するジョブ、私はうっかり受けたら瀕死になるジョブだよ!
いや耐久ないのはジョブじゃなくて種族だけど!
そして掲示板で仲間を見なさい、みたいなことを言われたので、朝食の席で全員チェックしたら、ミケさんの称号、よく見たら☆付いてるのがあった。
[天峰金工師の弟子☆]
うむ、職人系ワールドファースト称号ですねえ!
ひまり:ミケさんにも天☆が。
アン:あら本当ですね。☆弟子仲間?
玉兎:3人もいることになるのか。
ひまり:いやまって、私のこれ符術師のほうだから!作成士じゃないから!
北斗:確かにそれもそう。俺ら符術師の弟子、だよな?
ミケ:あれ?そう言われてみればそうか
全員、メインシナリオの件については触れないのが草というかなんというか……
いやでも本当に、どうなってんだこの状況感は否めないので、私もね……
なおアラチャの方は、メインシナリオ扱いであることに対する意見などは……あんまなかったね……
主に領主館の内装の話とか朝ごはんの話してた。
サウル::ではあとはよろしくー。我々呼ばれてないので!
ひまり::マジで?いやそうかお使いクエは我々だけか。
天童::そゆこと。一応護衛として待機とはなってるのでアラは継続。
そんなわけで、うちパーティだけで領主様のところにご案内されるよ!
この青玉槿のご領主様は獅子聖ターモイル華浪という男性だそうだ。
直系王族?なんだったかな?
そのためか、館の内部も質実剛健な部分と、立派な装飾が嫌味なく配置された、芸術品的なつくりの部分がそれぞれあって、なかなか興味深い感じ。
質実剛健部分があるのは、いざという時の避難所でもあるからだっけ?
「複数の様式が混ざっているんですね」
「はい、青玉槿はもともと第三階位だったものを、白金樺の第三引き下げに併せて第二に昇格したため、王族の方が入るに相応しい様式を後から追加したため、このような造りになっておりますね」
玉兄さんの質問にも、丁寧な回答だ。
「白金樺の領主屋敷はそこまで大きくなかったように思いますが」
「争乱で破壊されて、再建造した際に第三に見合った大きさに改められたものですね。
第二に再び上がることでもあれば、恐らく新規に領域を確保してここのように増築するのでしょう。そんな日が来るかどうかは現状では判りませんが」
この案内係の人はずいぶん突っ込んだ話をしてくれるなあ。好感度アップだよ!
「花蘭様からの使者殿、お連れ致しました」
「通してくれたまえ」
通された部屋は、豪華絢爛、というよりは、趣味の良さを重視したデザイン、そんな風に感じる。
案内役の人に答える声は、多分男性のそれだけど、少し高い声に感じる。
「吾が第二階位青玉槿の領主、獅子聖ターモイル華浪である。
君たちが花蘭様の弟子……漂流者だとは聞き及んでおったが、これはこれは……
いや、今はそれは置いておこう。恐らく断りの返事ではあろうが、確認しない訳にはゆかぬ故な」
一気に長い台詞を言いきったのは、三十代後半くらいの、色白で、結構ふっくらした男性だ。
髭は生やしていなくて、翡翠山茶のご領主みたいな鎧ではなく、カフタンに豪華なマント、という……多分この世界だと、文官系の衣装だ。
「はい、師匠からこちらを預かってまいりました。ご確認ください」
手紙はだいじなもの枠でかばんの枠を取ってはいないんだけど、イベントに入っているせいか、ひまりちゃんは例によって袖口から手紙を取り出して、歩み寄ってきた領主様の従者に手渡す。
ミケ::それって手動?
ひまり::イベント入ってるからオート!
玉兎::我々は動けないねえ。
アン::☆付いてるからひまりさんが一番弟子の扱いなんですかね?
北斗::多分そう?
サウル::現場にいてもイベントで自由に動けないのかぁ。
アライアンスでそんな会話をしている間に、手紙は従者さんによって領主様に手渡され、ご領主自ら封蝋を切りはずして開かれた手紙を一瞥した、まではよかったんだけど……
なんでそこで顔が宇宙猫?
「……つかぬことを聞くが、この手紙の内容は存じておるか?」
「いいえ?渡すように依頼されただけですから」
他人宛の手紙を盗み見するような悪い子ムーブはしません!
「……で、あろうなあ……まあ花蘭様の意向は判った。状況も状況だ、従うのが無難そうだな」
んんん?どうしたんだろう。領主様の表情がなんというか、読めない感じ。
「其方等は冒険者でもあるようだが、ランクは如何ほどか」
「先日Cランクに上がったところです。レベルは30です」
首をちょっと傾げていたら、穏やかな表情を作った領主様に聞かれたので、素直に答える。
「ほう、30か……単独では難しいだろうが、護衛達も同等であれば、あの忌々しい変異体、黒野干めも討伐可能であろうか……」
ほほう、タテガミジャッカルの変異体、野干なんだ!
ミケ::やかん?
ひまり::野干!ジャッカルとかドールの事って説が一般的。
玉兎::黒、と接頭辞があるということは黒くない野干もいるということか?
「絶対勝てる、とは申しませんが、状態異常持ちであるなら、対処方法は持っています」
ここは自分の言葉で答える場面だったので、ちょっと間をおいてからそう述べる。
流石にFMより変異体の方が強いってことはない、よね?
いや虎の変異体割と強いって聞いた気もする??
「まさに問題はその点でな。これ以上吾が兵も冒険者も損なうわけにゆかぬのだ。
其方たちの都合がよければ、黒野干、討伐を依頼したい」
わあ!領主様直々の討伐依頼だ!やるしかない奴!!
別に断ってもええんやで?(ちょっと好感度下がるだけだし。




