第73話 青玉槿の危機レベルは?
お札書きながらだべってる。
さて、買取り祭りが終わったら今度はいったん符術師組で黄金桜に移動だ。
ミケさんとアンファルも師匠に顔出しするというので同じく黄金桜へ。
ぎゅん太さんも飛んできたけど、彼はフレさんと白金樺のポータルを開けに行くそうなのでパーティを離脱していった。
「おはようございまーす!素材買うのでお札書く場所貸してくださいー」
「おう、朝から元気な子じゃな。最近孫弟子が来ないが……」
「ちょっと不都合があって暫く不在ですー」
そんな会話をしつつ、案内されて奥の部屋へ。
「今日は何を書くんだい?」
「書ける奴全部ですねー。ミューちゃん不在なのでできるだけ自分たちでも作らなきゃ」
「足りない属性の分は出来合いを買いたいのですが在庫はありますか?」
「それがねえ、最近術師の子が増えたのか、すっかり売り切れていてね」
そう述べると、我々の顔を見比べるおばあちゃん。
「あんたたちは全部じゃないとはいえ、一人前に札が書けるし、融通もしたことがありそうだねえ?」
「俺が護符書けないんで、だいたいこの二人かミューさんに都合してもらってます、ね……」
「水のお札書けないから交換したりしますね……」
北斗さんと私の回答におばあちゃんニッコリです。
「じゃあ出来高払いでちょっとうちの在庫にも協力して貰おうかねえ。素材代はあんたたちが使う分も全部ロハでいいよ!」
もしかしない:これクエスト生えてる!
玉兎:はい『符術師のお札3』。
ひまり:わはははは……
北斗:がっつり書かされる奴キター!
というわけで今ログインの残り時間はお札書きのバイトに全ツッパだそうです。
余分を書けるだけ書いたら、書いた分だけ報酬が出ますよ!
普通にお仕事だこれ。
ひまり:リアルでこの枚数書いたら腱鞘炎だ。
玉兎:ゲームでよかった感。
北斗:流石にゲーム内夕方までだと信じたいが……
アン:マルデラさんは宵っ張り型です。
そして無情なアンの情報。我々ログイン時間ギリギリまで拘束される奴!
……神殿に帰してもらえませんでした。お札を書いてた部屋でばたばたと寝落ちする我々。
翌ログインはおばあちゃんちでお目覚めだ。
隣でおばあちゃんがまだ寝てる。男子二人はいないから、私だけおばあちゃんの寝室に連れてこられたっぽい?
玉兎:おはよう。寝落ちたほぼそのままだな。毛布はかかってるが。
ひまり:おはよー。私おばあちゃんの隣だった。
北斗:あ、そうか、ひとんちだから野宿扱いじゃない把握。
そしてクエストは完了しておらず、朝ごはんを食べたらまた労働です。
ひまり:種類がそれなりにあるとはいえ、どんだけ書けばいいのか。
玉兎:ひまりさんは光護符も治癒符もだから忙しいね?
北斗:そういうタマも3種均等に増産中じゃん。
玉兎:オマエモナー。
北斗:水は身内の分しか書いてないぞ。
なんでも攻撃符、氷と雷が弱点突きやすいと噂になってて特に需要が高いんだそう。我々だれも氷書けないけど。
光攻撃は対スケルトン用ですね、多分。
「うむうむ、このくらいあれば今週分の在庫にはなろうかの」
そして午前中丸ごと使ってようやっとクエスト完了でっす!
『クエスト:『符術師のお札3』クリア!評価:Exellent!報酬に中級符セットが加わります。また、SPと取得エンにボーナスを得ます』
ひまり:よっしゃエクセレントー!
玉兎:無事エクセレント。
北斗:またベリグなんだが!!お札セットは嬉しいけど!
ひまり:もう少し丁寧に書きましょう!ギリ発動はするけど!
お札が雑だと、発動時にレジスト率が上がるんですよ!
水は使う場面が比較的少ないから影響は薄いけども。
なお中級符セットはベリグ以上なら貰えるらしい。よかったよかったといいつつ、自分が使えない氷と闇のお札を男子に押し付ける私であります。
「ところであんた達、最近はあっちこっち出掛けているようだけど、さすがに青玉槿に行く用事はないかねえ?」
報酬にむふむふしてたら、なんとおばあちゃんから青玉槿の名が?!
「あ、近日中に行こうと思ってます。なんかめんどくさいモブがいるらしくて手伝いしにいくです」
「ヘルマニビスという面倒なものがいるとかなんとか」
「ヘルマニビス……むぅ、普段はそんなものいないはずだがねえ」
私と玉兄さんの説明に、難しい顔になるおばあちゃん。
「甥から連絡が来ていたけど、流石にこの年で行くには遠すぎるんでね。
済まないが、ちと手紙の配達をしてもらおうかね」
はい!クエストが!増えた!
玉兎:このおばあちゃん何者だ?クエストフラグ持ちすぎだろう?
アン:マルデラさんはこの国の王族の分家の分家出身の人ですよ。
北斗:予想以上に偉い人ktkr
ひまり:ってことは甥っ子さんって……
アン:青玉槿のご領主の獅子聖ターモイル華浪様の可能性?いや姓が違いますね?
ひまり:獅子聖ってガチ王族じゃないっけ。
玉兎:だね?
流石に第二階位の町の王族系ご領主にCランクが会える気があんましないんですが?!
ミケ:なんかおもろいことになってるようだが獅子なんとか全部王族系NPC?
ひまり:貸本で見た限りはそう。
玉兎:王都と第二階位の町の領主は直系王族かその兄弟が占めてるというね。
ひまり:第三は分家筋ばっかりらしいけど。
アン:そこまで人数がいないんだと思いますよ。内戦してた歴史もあるようですし。
北斗:でもあれだな、引退したばあちゃんにまで呼び出しがかかるのって普通じゃないな?
ひまり:危機レベル高め想定でよさそうだねえ……
いや多分あのおばあちゃん、かなりの手練れだとは思うんだけども。
でもノの字じゃないと符術師にはなれないよねえ?
(漂流者はそうだが、地元民はそうではないのだ。作成技能を持っておるGMもヒューマン種であったろう?)
あ、そういえば魔法師のGMさんだったもんね、カンタータさんだっけ。
玉兎:そういえば符術師はノの字じゃないとなれない気がしていたが、関連クエに出てくる地元民は全部ヒューマンだな?
ひまり:ノの字制限は漂流者だけの仕様だって。
北斗:お、モフ情報?
ひまり:うん。
ミケ:そうだよなあ、需要がなければ作成士なんて地元民にいるはずねえもんな
言われてみればそれもそう。
ということは我々にもいずれ弟子入りイベントが……
……いや、既に弟子入りしている疑惑。おばあちゃん、多分術師でもある、よね?
ぴこん!と通知が小さく鳴る。
『称号[天元符術師の弟子☆]を獲得しました』
玉兎:……ん?称号が、このタイミングで増えた?
ひまり:考察してたら生えました。なお☆。
北斗:俺にも出たけど☆ねえぞ?
アン:天元符術師……?弟子部分は判りますが。
そういうアンの称号には、割と最初の方に[天覧調理人の弟子☆]が付いている。
弟子入り自体は第一号なんだね、アンファルさん。
(その称号があれば、他所はともかく、青玉槿の領主には会えるであろうよ)
朔夜さんから解説。つまりこれあれか、名刺みたいなもんか!
なお移動のために神殿ポータルに向かったら、神官さんたちにどよめかれた。なんだ?
「花蘭様がお弟子を?!」
「フィルシアさんですら術の方は無理だったのに!」
なんて声が年配の神官さんがたから聞こえたので、どうもあのおばあちゃん、一定世代より上にはかなり有名な人らしいぞ!?
ひまり:フィルシアさんって誰だろう。
玉兎:ミューさんの師匠じゃなかった?
北斗:ああ、術の才能なくて作成士しかやってないとかなんとかいう。
アン:手抜き癖のある人ですね?
「なななななんですってええええ!!……ってああ、確かに術師でそのレベルならしゃーなしですわあ……」
知らない人の声がして、我々全員を眺める気配。うん、イベントだこれ。
声の主は、きれいな黒髪の巻き毛の、そこそこ歳のいったお姉さんだ。
神官さんのざわざわ辺りからイベントに入っていたので、おそらくこれがフィルシアさんだろう。
「未来を担う符術師の次代が漂流者なのはちょっと不安ですが、うちの弟子も出来はいいし、おそらくそういう世の流れなのでしょうね。
不肖の弟子、ここ数日見ないようだから、もし中級符の必要があったら私、フィルシア・カリネットが販売しますわよ!」
どうやらミューちゃんのお師匠への顔つなぎイベントだったらしい。
フィルシアさんは言うだけのことを言うと、我々の返事を待たずに商店街の方に走っていってしまった。
玉兎:ミューさんの師匠かあれ。
北斗:あれって言うな、これから世話になる可能性あんだぞ?
ひまり:でもおばあちゃんに中級分けてもらったしなあ?
そう、フィルシアさんのイベントはちょっと出遅れているのだ。
クエコンプの報酬に中級符セットもあったので!
なんとなく、なんとなくだけど、この人出遅れ属性持ってそうだな?
つまり役回りとしてはコメディリリーフっていうか、そういう枠。
なおクエストの途中イベントでしかなかったようで、このイベント完了自体には、特にアナウンスなんかは付いてこなかった。
北斗:あの人不憫属性付いてそう。
玉兎:ミューさんの師匠、手抜き癖、師匠があの方。
ひまり:残当。
手抜き癖が致命的だと思うんですよねー。
なお軽く流してしまったけど、あとで調べたらカリネット家って王都のお貴族様だった。わあ。
追加:SP+4
というわけでおばあちゃんがクエフラグ貯めこんでる理由の話でした。




