第56話 紅玉椿の町と謎モンスター!
レベリングしようとしたら。
相談で意見が一致したので、まずは紅玉椿の町に入る。
りんご~ん!とシステムメッセージが起動する。やったね!
《西部第二階位の町:紅玉椿に到着したプレイヤーが現れました。但し条件の一部が未達につき、現段階での機能解放はありません》
う、ちょっと残念な結果付きだ。足らないのなんだろう?レベル?
(未達も確かだが、そもそも未実装じゃ)
そして朔夜からはつれない答え。未実装か、そっか……
(リアル3月のうちに第二階位到達はそもそも運営が想定しておらなんだからな。趣味人は突っ走るものだから設定しておけとは言ったんじゃが……)
我も所詮テスターじゃからなぁ、と朔夜がぼやく。
未実装って、もしかして朔夜の進化先もだったりする?
(いや、そちらは次の段階は実装されておる。その先はまだだが条件がベータ版では達成不可能なものだからな、致し方ない)
我のレベルも足らんしなあ、と、今日の朔夜はぼやき節全開だ。
玉兎:モフさん何か言ってる?
ひまり:条件未達も事実だけど達成してても未実装だって。
ミケ:想定より進みすぎた?
アン:割と突っ走ってましたからねえ我々。
ミュー:わたしの都合のせいでごめんよー。
北斗:いや、混みあう前に駆け抜けられるのはむしろラッキーだから問題ない!
ファイトファンシーの時に、どの鯖でも優良狩場がイモ洗い状態で不良狩場になるの、散々体験したもんね、私たち……
黄金桜近辺も今は混みすぎでどこに行っても効率が悪いので、パーティ組んでちょっと遠足する人が多いらしいし。
なので北斗さんの意見には全員頷いてしまうのだ。
紅玉椿の町は、白い漆喰壁に黒い瓦屋根の、如何にも和風の……今までで一番、和風と断言できる光景だ。
それでも道路は敷石が敷き詰められてて、馬車が通ってるけどね。
町のあっちこっち、屋敷の敷地にも街路樹にも椿の木。
リアルだと今咲いてる気がするけど、ゲーム内は時間の流れが早いから、もう花は咲いていない。
でもここの椿は、植物鑑定の結果では全部『紅椿』と出てくるので、赤い花が咲くんだろう。
今はところどころに小さな実が付いている。
ゲームでも椿油の原料になる、らしい。鑑定結果に書いてあった。
玉兎:町の中の木がほぼすべて紅椿か。
北斗:町の名が先か、椿が先か。
ひまり:白金樺の本屋さんで見たけど、地名が先らしいよ。この北の翠玉茶花の茶花って山茶花らしいの。まず地名を付けて、それに合わせた植物を植えてるんだって。
アン:お茶じゃないんですね。
ミケ:茶も山茶花も椿も、同じ仲間ではあるけどな
ひまり:うん、茶花では高級なお茶も栽培してるって本には書いてあった。
クエの合間にそういう場所も探索してましてね、私。
ゲーム内の本屋さんなのに、読める本が複数あったのでチラ見してきたんだ。
買うのはちょっと無理だったけど。本の値段、すっごく高い。
店主さんに聞いたら、手写本だからね、という返事だったので納得だ。
なお本を読むのは有料です。貸本屋と一般書店の中間みたいなお店だったよ。
ミュー:ポータルチェックして、今回は登録はしない?
玉兎:カンストしたらランク上げを真面目にやって王都を目指せるかチャレンジしたいから、なしで。
ひまり:ですよねー!ここ第二階位だけど明らかに王都から遠いし!
北斗:よし、今回は大丈夫。
ミケ:俺はどうせなら鉱山に行ってみたいが、どっちみちランク上げは必要だろうしな
アン:そうですね、生産職の場合は王都に関してはランク以外にも入れる条件が別にあるようですが、鉱山は恐らくランク必須ですね。
ミュー:ああ、わたしの師匠、冒険者としてはDランだけど呪符作成士が殆どいないから王都に入れるとは言ってた!多分大師匠の代理とかそんなんだけど!
なんだかんだで王都もダンジョンも行きたいよね!と意見が一致。
でもまずは目の前に迫っているはずのLv30、カンスト狙いだよね!と、一旦町を出る。
「おや、もう出かけっちまうのかい?」
「はい、もう少しでレベルが上がるので、狩りをしてきます!」
「恐らく今日中にもう一度こちらに戻ると思います」
「そうか、ここまで来れたなら問題ないだろうが、気を付けて頑張れよー!」
門番さんの問いには、私と玉兄さんで返事をして、お見送りされながら出発だ。
この町のNPCさんも親切だなあ!
来るときには全力で急いでいたから確認もしていなかったけど、この町でも、周辺にうろうろしているのはLv18前後の大羽根兎と、こちらはLv20前後のクッカドゥーだ。
恐らく夜になったら同レベルのオオガエルとクックルーになる奴。
なおカエルも食材です。ドロップは皮とお肉だってよ?
そこら辺はもう我々にはスキル的にも格下になった素材しか提供してくれないので、さっさかと街道を戻る。
狩場はコンバットイーグルが降ってくるようになる辺りからだ。
といってもこの辺もLv30以上はあまりいないから、多分相当数を狩らないといけないんだけどね。
ミケ:なあ、荷物整理忘れてねえか?
ひまり:あ。
ミュー:いかん、気が急いてた。まずはお札配布タイム!
玉兎:ああ、ミューさん居ない間のお札の事も考えるべきか。
ひまり:狩りには出てもクエで格下狩るくらいだと思うから、自作分で行けると思う。
北斗:護符作れないんでよろ。
玉兎:護符といえば、闇護符の存在をすっかり忘れていたが、これ効果はなんなんだ?
ひまり:書いてない?私は闇護符は使えないから判らないけど。
ミュー:闇は魔法防御アップ……ねえこれツァーガンの時に使うべきだった奴?
玉兎:あっ。
ツァーガンの範囲スタン、何で対抗してるのか判らないと思ったら魔法判定の可能性?
そういえば魔法を使えないミケさんが食らう率、凄く高かった気がする。
ミケ:敵が魔法っぽいもんをあまり使ってこないんで気にしてなかったな
アン:そして今いる界隈だとツァーガン、いませんね。
北斗:つまり実用はだいぶ先。
ミュー:なんかフラグ立った気がするぞ。波山みたいな妖怪いたりしません?
ひまり:いる可能性は高いよね。
というかですね、さっきから懐の朔夜の毛が逆立っててくすぐったいんですよ。
(う、うむ……)
ひまり:というわけで兄さんちょっと闇護符ばら撒いて。
ミュー:なんで?って、あ、毛玉が膨らんでる。
玉兎:何か近くにいるのか。
そして全員に北斗さんと玉兄さんが護符を配ったところで、ぐん!といきなり周辺の温度が下がる。
(うぉさむっ!?)
私の懐にいる朔夜まで寒さを感じるってただ事じゃないわね?
私たちは護符のおかげでちょっとマシっぽいんだけど。
玉兎:お、モフもタゲれるな。お札投げとこう。
ひまり:ありがと、朔夜にもこれ寒いらしいから助かる!
玉兎:……なんか今めっちゃスキル上がった……?黒モフ、レベル高い?
ひまり:さあ?我々のログアウト中に自前でレベリングしてるとは聞いてるけど。
ミケ:中の人が居るみたいな挙動だな?
ミュー:でもゲーム的に女子の懐インはプレイヤーのしていいことじゃないよねえ?
アン:そもそもプレイヤーに非ヒト型種族は実装されていませんね。
なお朔夜は他人に名前を教えないので、皆からはモフとか黒モフとか毛玉とか言われております。かわいいのでこれはこれでアリですわ。
(おお、結構効果が高いものじゃな、我との相性も良いからそのせいかもしれんが)
そうねえ、朔夜って見るからに闇属性っぽいもんねえ。
ミケ:うーん?冷気を操る何か?
ミュー:冷気というか、湿気?いやでも寒いな?
ひまり:うわくさっ?!生臭いっ!来るよ!!
ちょ、いきなり泥沼の生臭さが降って沸いたんですがどこから!!
と思っていたら、いきなり上空から水魔法が降ってきた!!
ひまり:うわあ!……あ、水は臭くないや。
玉兎:魔法の仕様はモンスターも同じなんだな?
ミケ:これで臭いと正直継続的に辛くなるとこだった
ミュー:あ、わたしにも臭いが、これドブの臭いだ?
北斗:野良ゴイとアメザリしかいないドブ池の臭いがする!
アン:そこで種指定が入るんですか。
ずもももも、と、妙な音がすると思ったら、上空になんか底なし沼のイメージ画像みたいな黒ずんだ緑色と茶色の濡れたようなまだら模様で、長くてにょろにょろしたものが、これも黒っぽい靄を纏いながら浮いている。
冷気と謎の音を放出しながら、無理やり浮いているといった雰囲気だ。
顔は毒蛇系、鼻先と目の上に黒い角。アダーとかあの辺にこんなのいたかなって雰囲気。
ミケ:【蛟蛇】、Lv???
ひまり:ノーマルモブじゃないじゃん!!
玉兎:逃げるのは……だめだな、バトルフィールドから出られませんだと。
そう、冷気が降ってきた段階で、臨時のバトルフィールドが設定されてしまっている。
つまり、全滅するかこいつを倒すかしないと出られない!
アン:やるしかなさげですか。
ひまり:まあ水ダメージ見る限り、アライアンスレベルじゃないっぽい感じだし、いつも通りやるだけね?
ミケ:おっけー、【投石】!
ミュー:護符の効果時間切れる前に次投げてね!
北斗:りょ。
玉兎:そうだな、油断はできない。
そうしていつも通りミケさんがタゲを取って、我々がお札を飛ばす。
お、雷めっちゃ効く!
ただ、相手の攻撃が何と全て魔法範囲攻撃だったので、わたしがちょいちょい治癒符ばら撒きタイムを作らざるを得なくなり……
……治癒師の人たちが、治癒しすぎるとヘイトが来るって掲示板で言ってたの、ホントなんだな。
といっても、どっちみち全体攻撃なので、私がミケさん同様に皆から少し離れたところに陣取れば、そこまで問題は出ない。
ターゲットされてるヒトだけダメージ加算は想定外だけど!
自己治癒が!!捗る!!!おのれ!!!
ちょっとバトルが長くなったので分割します。
治癒魔法のヘイトの話は掲示板回のどこかに……あっなかった……




