第25話 町のクエストをやっつけろ!
ミュー:私の職業クエストちょっと手伝って貰うかなあ。おつかいなんだけど。
アン:私もひとつお手伝いの欲しいジョブクエストがありますね!
玉兎:じゃあ今日はその辺を手伝うか。
ミケ:俺もー……って今引っ張ってるクエねえな
ひまり:私もなーし!
玉兎:クエストの場合もレベル補正は掛かるんだろうか?
そんな感じで、生産職組のクエストで遊ぶことにしましたよ!
経験値は多分貰えない奴じゃないかなー、とミューちゃんが言ってたし。
ミュー:私のは商店街の隅っこにあるっていう特殊な雑貨屋さんを探します。
アン:私の方は食材の調達ですね。ゼラチンか寒天を探さないといけないのですが、売ってなくて。
ひまり:寒天は海藻から作るから、内陸のこの町だとあっても高そう?ゼラチンなら錬金術師の人が作成できるかも?
アン:錬金術師ですか?
ひまり:膠を精製する過程が必要で、そこがちょっと錬金術っぽいかなーって連想なんだけど。
ミケ:膠なら普通にそこらへんで売ってるな。骨が主原料で、錬金術師の小遣い稼ぎだと
おう、膠の段階で錬金術か!煮込んで溶かすだけじゃないんだっけ?材料による?
玉兎:魚の浮袋を使うって話もどこかで聞いたね。
ひまり:日本だねえ。肉食しない系文化で毛皮があんまり流通しない国だったから、魚の鱗や浮袋からも抽出したんだよ!
ミュー:雑学王キター!
ひまり:でも流石に骨から抽出する方法までは知らない!
そんなわけで、まずは錬金術師さんってどこにいるの?となりまして。
判らない時はまず冒険者組合だよ!
というか、錬金術師さんと取引があるのは、毒キノコの買い取りの時に聞いてるからね!
「ゼラチンですか……?それでしたら、冒険者組合の契約錬金術師に依頼を出していただければ、1つ200エンで、材料となる兎皮、骨片などがあれば半額でご提供しておりますよ」
わあ!いきなり完全解決だ!
アン:骨片……ってスケルトンのドロップでしたよね……?
ミケ:こないだ集られたときに何個か出てたな
玉兎:あのスケルトン、頭に角があったから人類の骨じゃないぞ多分。オーガの成れの果てとかな気がする。
ひまり:人類じゃなきゃいいってもんじゃないんだよねえ……!
ミケ:人骨と言えばワーテルローの砂糖工場……
ひまり:ミケさんが知的なネタ振ってきた!
(ワーテルロー?古戦場ですよね?)
(戦死者の骨掘り起して焼いて、砂糖の脱色に使ったって話がですね)
アンが不思議そうにフレンドチャットを投げてきたので、百科事典系知識を披露しておく。
リン酸肥料として輸出されたりもしたらしいけどね!
いやこれ百科事典知識じゃないな?最新のなんかの論文だったような?まあいいや。
玉兎:ミケが知ってるということは、って、ワーテルローだもんな……
ミュー:なんだっけ?えーっとそうだ、ナポレオンが負けたとこか!
ワーテルロー自体は、確か中学の歴史の授業でもギリ習う範囲だったかなー?
玉兄さんの言い方からするとミケさんはフランスオタかミリオタの気配?
ミケ:現地行ったことあるからな、といっても戦争時と地形が結構違うって話だったが
ひまり:わあお。
玉兎:戦勝国が記念碑作ったりして、やりたい放題したからなあ、あの辺は。
ミュー:野蛮だわー。
ミケ:現地、戦勝国の戦没者墓地しかないんだぜ
ひまり:マジかー。負けた方野晒し?
ミケ:一応穴掘って埋めたけど、結局骨を利用したいって連中に軒並み掘り起こされたっていう話な
うーむ、なぜゲーム中でワーテルローの死体の話で盛り上がるんだ我々?
いや、ミューちゃんは引いてる気がするけど。
ひまり:で、話を戻すと骨片か兎皮。
アン:背に腹は代えられませんね……
ミュー:最終製品は精製されてるんだからへいきへいき。
「素材何個で半額です?」
「兎皮は5枚で1セット、骨片の場合は10個スタックが2つで1セットです」
アンが質問したらそういう回答だ。骨片、かなりサイズが小さい素材なんだな。
そんな訳で、結局骨片は全然数が足りなくて、半端が余ってた兎皮をメンバーで寄せ集めたら10枚あったので、ゼラチン2つを200エンでお買い上げだ。
サンドイッチうまうまさせて貰ってるから、このくらいの提供は屁でもないよ!
アン:あとは師匠に届けるだけなので、ミューさんのお店探し行きましょうか。
ミュー:わあい!多分符術師連れてないと見えない店っぽいから、皆で行ってみようー。
なるほど、符術師用のお札を作る呪符作成士だから、当然符術師もクエストに絡んでくると。
福引でお世話になった商店街を、皆で奥の方まで見て回る。
途中に屋台が出ていたので、串焼きをちょっと買い食いしてみたり。
アン:塩気が薄めですねえ。
玉兎:内陸部で塩が高いのかもしれないな。
ミュー:あー、確かにお塩は値段高いねえ。
おや?ミューちゃんも塩の値段を把握してる?触媒にでも使うのかな?お清め塩かな?
のんびり話しながら歩いていたら、自然と足が大通りを外れていく。
お、これ多分イベント入ってる?
ミュー:あれ、ひまりちゃんそっち行くの?
玉兎:僕もそちらに行きたいから、多分フラグ……あ、イベントだこれ。
ひまり:イベントだねえ!ミューちゃんも付いてきてね!
アン:あら?皆さんが見えなくなりました!
わあ!符術師か関連スキル持ってないと弾かれるイベントとかあるのか!
いや、前提フラグを持ってないキャラがハブられるのはクエストあるあるだな?
ミュー:アンちゃんごめんよー!フラグないとイベント発生しないやつっぽい!
アン:いえいえ。しっかりこなしてきてくださいねー。
ミケ:俺も居残りだから!俺の事もちょっとは!
ひまり:そういえばそうだった。
玉兎:スレに報告だけ頼む……いやリザルトも投げたいし、終わってから自分でやるか。
そんな感じで大通り居残り組と符術組に分かれて移動だ。
イベントの自動操作でやって来たのは、大通りから2本ほど裏手に入った、路地の更に裏の……本当に隅っこにある、小さな……正直に申し上げればボロくて今にも潰れそうな、多分お店だ。
多分なのは、この商店街では珍しい引き戸が、閉まったままだから、ね。
「ごめんくださーい」
ここでもまだイベント、というか私からも他のパーティメンバーが見えなくなったので、どうやら符術師自身にも個別イベントもしくはクエストが用意されているパターンだったみたい。
ひまりちゃんが挨拶と共に引き戸を開けると、思いのほかするんと、音もなく開く。
「……おや、『境界の子』がこの土地に現れるとは珍しい」
きょうかいのこ?状況的に、プレイヤー通称でいうノの字族の事かな?
如何にも店番しています、的な場所に座っているのは、白い髪のおばあさんだ。
服装は……括り紐があるから水干っぽいねえ。頭には何も被っていないけど。
ちなみに狩衣っぽい恰好、と称しているひまりちゃんの服は、実際は狩衣じゃなくてちょっと時代が遅い頃の布衣のほうが近いかもね。無地だし。
「きょーかいの子?私、漂流者だからよくわからないです」
「ほうほう!漂流者かね!更にさらに、珍しきかな!」
突然コントロールが戻って来たので、素直に漂流者だから地元の専門用語は判らないとド直球で述べたら、おばあさんは面白そうに笑った。
「お前さん、種族の名にノの字や聖の字が入る者を他に知っておいでかね?
あの難解な名の種族を纏めて、『境界の子』と呼ぶのさね」
「そうなんですね。お友達に何人かいます。あと同族の子もひとり」
問われたので正直に回答する。
NPCはサーバーデータもある程度読んでるんじゃないかと憶測したりしているんで、隠す意味はあんまりないかなって。
「おやまあ!漂流者が急に増えたとは聞いて居るが、同じ種族の『境界の子』が出る程とは!
ともあれ、此処に来たという事は、呪符の事で聞きたいことがあるのじゃろう?」
「初期符しか自分で作れないのは不便だなって」
実際にはミューちゃんの手伝いで来ただけで、自分の目的がある訳じゃなかったけど、クエストイベントの性質を考えると、これは一応確認した方がいいよね、という辺りを聞いてみる。
「むしろ、最初から持っている分を作れるのが世界の恩情じゃよ。
『境界の子』は、この世界と合わない要素を持ったままこの世界に来てしまった子じゃからの」
おおう?思いのほか設定が重くないですかノの字族?
いや、確かに他種族に対比させると、ノの字族も大聖も、異質だよね。
獣人種族もいるのに、敢えてカテゴリ分けされたレア種族の私たち。
しかもパーソナライズ種族って、リアルのデータを反映させたそれでもあるからして。
「あんまり深く考えずともええよ。選ばないこともできた道を選んだだけなのじゃから」
ん?あ、そうか。
私も、他の特殊勢の皆も、自分で選んだんだよね。
ベータで80%の人に出たのに、その出た人の95%が選ばなかった種族、それが私たちだ。
うん、充分変わり者の資格があるね!!
おばあさんは、符術師のお札を作る呪符作成士の古株で、引退間近なんだという。
跡継ぎ候補ができるまでは入手の難しい呪符と、初級の素材を売ってくれるそうだ。
ミューちゃんが跡継ぎになるのかなあ?
でもまだベータ版だしどうなるだろうね?
『クエスト:巫術師のお札1をクリアしました。評価:VeryGood!【初等呪符作成】が解放されました!』
……ん?んんん?
あ、もしかして、このクエやらないと持ち呪符作成、できなかったのか!!
しょっぱなからミューちゃんにお札作って貰ってたから気が付いてなかった!!
取得:技能【初等呪符作成】
せやで。別に技能欄に書き忘れたわけちゃうねんで。




