第1話 ベータテスト当選のお知らせ。
ここからは主人公、瑞希の一人称、かつ1p3000文字~ベースになります。
あんな序を入れておいてなんですが、ガチで明るく軽い本編ですのでご安心ください。
ぴこん!とメールの着信通知が音を立てる。
ん?今日って、着信音設定するような連絡の予定、あったっけ?
メーラーをチェックすると、確かに私の名前、佳賀里屋 瑞希宛だ。
発信元は……おお!『まりあ・コーポレーション』だって?!
これあれだ!ベータテスト申し込んでた、新作MMO『5D!』の当否通知だ!
久しぶりに、ドキドキする気持ちを抑えながら、メールを開く。
当選の、お知らせ!!
やった!と、声は出さずにガッツポーズ。
いや、もとはと言えば、魚売さんが勧めてくれた奴だから、当たる確率自体はそこそこあったんだろうけどね。
『まりあ・コーポレーション』というのは、新進気鋭のゲーム会社だ。
なんと、世界初の完全体感型MMOをいきなり引っ提げて業界に参入すると表明した、異端の企業、とも言う。
MMO、つまり多人数同時接続型オンラインゲーム自体が、まだリリースされ始めて数年しか経っていないのに、どこからそんな、仮想現実なんて技術が生えてきたんだろうね、というのは社会的にも話題にはなっていたはずだ。
言葉自体は去年くらいにブレイクした小説で有名にはなってたんだけど。
でもあれ仮想現実に閉じ込められて出られなくなった主人公たちが脱出のために頑張る話で、仮想現実にマイナスイメージ付いた気もするよなあ、話自体は面白かったけど。
要するに、概念が生まれてから実装されるまでが早すぎってレベルじゃない?って話だけども。
流行物は抑えるべく、その小説も読んだけど、近未来設定だったよ?現代じゃなかったよ?
まあ答えは簡単で、一人の、不世出の……というか不条理レベルの天才が、この国にいるからなんだけども。
まりあ・コーポレーションの技術監修と相談役には、その天才、デタラメにジャンル幅の広い博士号をいくつも持っている科学者にして医師、松田博士が就いている。
博士の下の名前、なんて言ったかな。
割とどこにでもいそうな名前だった気がするけど、文字があんまり見ない感じだったせいか、どうも覚えきれない。
社名はその松田博士の奥さんの名前から取ったらしいけど。
金髪碧眼のちょーとんでもない美女なのだけは、知ってる。
ゲームタイトルとシステムの発表会見を本社でやってたんで、ちょろっとだけ姿が映ってたのよね。
なんと、このゲーム会社のメイン開発者が、その方だ。
というか、記者会見の折の松田博士の発言がこうだ。
『彼女の創る世界をこの国で公開し、その世界で皆さんに遊んでいただく為に、まりあ・コーポレーション社を作りました』
ラブいわよね。
博士が愛妻家なのは有名だったけど、そこまでするのか!というのが世間でも一般的な感想だったっぽい。
新聞やネットで調べただけだけど。
凄いんだよ、学生時代に奥さんと出会って、その顔の怪我を治すって誓って、その為だけにいくつもの特許や発明をして、実行したっていう。
「瑞希さん、荷物届いてますよ」
私専属のお手伝いさん兼護衛の一人である魚売さんが、ドアのノックの音と共に、小さな宅配用の箱を持って現れた。
今日もタッパはあるのに、足音と気配が薄い美女だなあ。
「ありがとう。あ、例のベータテストのやつだわ」
「あ、当選されたんですね、良かった。私は外れたのでどうなることかと」
魚売さんはこのVRゲームのベータテストの事を教えてくれた本人なので、これだけで話が通じる。
って魚売さんも応募して外れたんだ。
いや、多分三人とも応募だけはしてるな、きっと。
箱書きを見るに、どうやらこの、その気になれば片手で持てるサイズの箱の中身が、VRゲーム対応端末である『ブラックボックス』らしい。
随分なネーミングだけど、実際これがどうやら、ガチのブラックボックスらしいんですよね、技術的な意味で。
内部機構は非公開。クローズドベータの時に開けようと試みた輩がいたらしいけど、失敗した上に秒でアカウントを特定されて参加資格を剥奪され、端末も速攻で回収されたとかなんとか。
なので今判っているのは、恐らくGPS的な機能が付いていることだけ、だそうな。
開けようとしたり、海外に持ち出そうとしたりした物全てが完璧に回収されたそうなので。
クローズドベータでそれやるのってかなりの度胸よね。
そもそも金払って買ってる訳じゃないから、自分の物じゃないのに。
そう、この『ブラックボックス』、全部レンタルなんだ。
正規サービスも、この機材のレンタル料を支払うことが月額課金という扱いになる予定。
ベータテストの間は無料だけどね!
箱から取り出した端末の本体は、名前通りの、真っ黒い立方体だ。
側面に各種接続端子と裏面に直付けの電源ケーブル、それにステータス表示ランプが一つ埋め込まれているだけのシンプルなサイコロ型。
付属品の方は各種ケーブルと近未来感あるけどシンプルな黒のヘッドセット。目を覆う構造だから内部にディスプレイかな?
ヘッドセットが見た目よりだいぶ軽いのは助かるな、プレイ中はつけっぱなしになるもんね。
あれ?手首用血圧計みたいなやつもある。
ってほんとに血圧計でもあるらしい。
成程、身体的不具合がないかチェックするバイタルサイン測定機。
本業は医師の、松田博士らしい発想ね。
あれ、この本体、ソフトウェア用のメディア突っ込む口がないな?
そもそもソフトが付属してない気もするけど。
えーっと、こういう時は取り扱い説明書!
うわあ、ガチの『5D!』専用ハードなのか、これ!
ソフトはベースが内蔵で、アップデートやバグフィクスは全部通信でダウンロードかあ。
まずは電源を繋いで、通信ケーブルを接続して、ベータテスト用アップデート。
微かなモーター音、点滅する電源ランプ。
うん、なんだかワクワクするわね。
この点滅が緑の常時点灯になれば準備オッケーだけど……あ、オレンジだ。
なになに……あ、オープンベータ、明日からか!プレイサーバに繋がってません表示、把握!
あ、ローカルでのプレイヤーアカウント作成は先にできるから、そっちをやっちゃいましょうね。
どうせやるならスタートダッシュのりこめー!したいじゃん?
いそいそと付属機器を全部繋いで、ヘッドセットも装着、モニタをオンにする。
おお!なんかいい感じの位置に書類作成画面が出てきた!モニタも仮想領域か!すごい!
なんと『やることリスト』っていうチェックリストも付いてる!親切!
デフォルトで、届け先、つまり申し込み時に書いた住所と氏名が記録されているので、そこは訂正とか特にしないで、そのまま使用する。
訂正していいのは、申し込みから到着までに住所や氏名が変わった人だけ、だってよ。
最新機密の詰まったゲーム機で、しかもレンタルだから、そこらへんの管理は厳重なのだそう。
それとは別に何県在住かを表示するかどうかと、表示用のニックネームとアイコンを選べる。
これはキャラクターネームとはまた別だ、と説明がある。
お、性別は隠していいのか。一応女子だし、全部隠そうねえ。
で、ニックネームだ。
『プロフェッショナルニート』……は流石に現状を表しすぎててだめか。
十五文字までだから使えなくはないんだけど、こういうのは真実とはかけ離れたものに限るよねぇ。
中二病っぽい奴いっとく?でも流石にフレンドできたりしたら恥ずかしいよなあ?
うーん、瑞希……ミズキって木があったなあ……水木とか苗字っぽい字面だけどかわいくないなー。
み、み、美、みみみちゃん。みみ美ってどうだ?あ、だめだ、みの字がゲシュタルト崩壊起こす。
みず・き、み・ずき、ずきじゃなくてづき、なら、美月、いやどうせなら海月……くらげ……
いや、悪くないぞクラゲ。海月ちゃん。これでいこう。
クラゲっぽいアイコンあるかな?あるある!いい感じに可愛いミズクラゲいた!これにしよ!
その他の登録項目も一通り埋めて、なんかデータスキャンもあるのか、ここまでは今日中に済ませておこうね。
データスキャンは……ヘッドセット端末を装着してまっすぐ横になって待機?
ここは指示通りに……20分くらいかかりましたね、流石に。
最後にモニタ内のチェックリストがちゃんと埋まっているか確認して……
うん、準備万端!明日はキャラクリからスタートだ!
それにしても、こんな所謂オーバーテクノロジーなゲームぶっこんできて、タイトルが『5D!』って、シンプルにも程があるんじゃないかなあ?
取説には、
『ダイナミックに欲望を!決定的な多様性!突き抜け体感する第五の次元!それが【5D!】』
とは書いてあったけども。
……いや?そういや発表会見でも一回だけ、そう言ってたかな?
VRMMOってとこに気を取られてて、覚えてないだけだな?
3000文字ベースじゃないとな、リザルトが入らんねん。
Q:あの序はなんだったん
A:あの状況でああいう虚勢を張るならまだしも、ホイホイふざけられるJCとかないない。




