第103話 新規参入のみなさん。
製品版でやってきた人たち。つまり前部番外編その1の実質の続き。
ちょっと話が前後する部分はありますが、おおむねサーバーオープン初日ですね。
さて、製品版という事で、ベータでは落選ゆびくわ組だった魚売さんと藤垣内さんも、『ブラックボックス』を無事確保して、揃ってログインできるようになったんですけども……
藤垣内さんの帝紀泰華ことティキちゃんはすぐに合流できた。
キャラの種族はバグったけど、普通の女子エルフと一緒で商店街スタートだったのよね。
ところがだ。
アン:いませんねえ、小夜子。
ひまり:こらこら、ゲーム中だからファディって呼んであげなきゃ。
ティキ:ん?いないんです?ほぼ一緒にログインしたと思うんだけど。
アン:パーティに誘える範囲にいないんですよ。どこなのかしら。
そう、事前のユーザーフレンドには登録したんで、ログインしていることは判るんだけど……
なんと、検索しても、所在地がアンノウン表示。
つまり、私やアンが行ったことのない場所にいる。
そして、製品版で拡張されたパーティのお誘い機能は、射干玉大陸の地上にいるなら、どこであろうとサーチに引っかかりさえすれば、パーティに誘えるという仕様に変わったのだけど……
それにも引っかからないっていうんですよ。
あ、ティキちゃんは藤垣内さんが言っていた通りの、ちょっと小柄な、明るい金髪に地黒ボディがダイナマイトボンキュッボン!なかわいこちゃんでした。
確かに前にやってたFPSでもこんなキャラだったわ、判りやすい。
(うん?誰ぞかが、どこにもおらんとは?)
懐の朔夜が興味を示す。
アンの同僚の人で、ティキちゃんと同じ場所からログインしてるファディさんが見つからないのよ。真龍族らしいんだけど。
(……真龍族?選択者、おったのか)
そして朔夜は当然のようにベータ版で真龍を選んだ人がいないのは知っていた。
(あの種族、全ステータス優勢のぶっこわれもんじゃが、スタート地点がホーライの手前の離れ小島じゃぞ……ジョブ選択が治癒師だと、下手したら詰む……)
えええええ???まさに治癒師って聞いた気が!するんですが!
(GMコールを使う方がよかろうよ……)
ひまり:朔夜情報。真龍、スタート地点が射干玉じゃないって。
アン:ああ、今メールが来ました。ここはどこだ!!ですって。
ティキ:わあお!面白そう!
あ、私にもフレンドメール、来た。
なになに……『なんというトラップ!絶対自力で抜けてやりますのでGMコールなどしないようにお願いします!』?
わあ、魚売さん、ムキになってるぅ!
こうなると、あの人は絶対干渉拒否だからなあ……
(……成程、真龍がパーソナライズされるだけの人物じゃな……)
へ、へえ?真龍ってそんな種族なの?
(個体差は激しいが、頑固者が多いと感じることは多かろうよ)
そうかー。朔夜はアルファ辺りで真龍も知ってるんだねえ。
(一応程度じゃがな。ほれ、ムービーに出ていた青いのがおったろう。あやつはベータから実装されておるぞ。結局ベータの間には、こちらには飛んでこなかったがのう)
なんですとー?あの綺麗な真龍、実装済み?!
何時かは会えるかもしれないんだ!楽しみだな!!
なおファディさんは離れ小島を抜けるのにリアル一週間かかりました。
朔夜曰く、その期間で抜けてきただけで奇跡的、だそうですが。
「あんの老害耄碌ジジイ、レベルが追い付いたら絶対シメに行く……!」
「お疲れ様です魚売さん。とはいえ自力脱出を選んだのは自己責任ですよ?」
初日終了後、ログアウトするなり、珍しく、らしくもない、どっちかといえば藤垣内さんが口にしそうな唸り声を上げる魚売さんに、炭酸水を手渡す。
正直ね、魚売さんから老害とか耄碌ジジイとかいう単語が出てくるの、想定外です。
「……ええ、ええ、判っています。私の悪い癖ですね。障害は大きいほど燃える質でして」
「小夜子はほんとそういうところ変わらないよねえ」
「いやでも本当に、真龍には気を付けてくださいね。私が言うのもなんですけど、あいつら、本当に根性が悪い……!」
うーむ、魚売さん、相当ひどい目に遭ったみたいだけど、流石に本人が語らないことは聞かない方がいいよねえ?
「ムービーでは普通にカッコイイドラゴンでしたよねえ?」
「あいつは比較的人類寄りの外れ値個体だと思うんですよね……」
「個体差、あるんですね」
「そりゃあプレイアブルになるくらいですし。
ただこの種族、ゲーム内かつプレイアブル種族のくせに守秘条項が多い……!」
なんでも、種族違いのプレイヤーには喋っちゃいけないことがいろいろある種族らしい。
なんでそんなのプレイアブルにしたんですかね?とは魚売さんの純粋な疑問だ。
「朔夜はアルファ版で真龍もテストはしたって言ってたから、それでも問題ないって結論にはなったんじゃないですかね……実際魚売さんは口が堅いタイプだから、向いてる気がするし」
「そこはまあ……自覚もないではないですが」
「でもそれベータ版ではテスト、やってないってことですよねえ?」
魚売さんへの私の返事に、今度は藤垣内さんが疑問を呈する。
まあ確かに? ……といってもなあ。
「ベータだと一人だけ選択肢に出た人が選ばなかったんですよねえ……」
「しかも推定あの方、製品版で出てもやらなさそうでしたものね」
「魚売さんの食らった初見殺しを見るに、その人が正解な気もしないではない……」
これは初期のベータ版掲示板情報だ。
そしてパーソナライズ種族のセレクトは、ベータでも製品版でもそれぞれ最初の一回だけで、選ばなかった時点で、その人は通常種族になったはずだから、最終的に真龍を『選ばなかった』プレイヤーが誰だったかなんて判らないし。
そして多分魚売さんみたいな人に出たのなら、その人は自分だったとは言わないだろうなという予感もある。つまり、判らんのです。
「あとトレイラーに出てた青い真龍さんはベータ版では実装はされてたけど大陸に来なかっただけって話も聞きましたね」
朔夜から聞いた話は、基本的に喋ってもオッケーなので、この話はしておく。
「……ああ、彼は射干玉には来ないでしょうねえ。あれ、流行ってないし……」
「あ、なんかフラグがあるんだね、把握しました」
魚売さんの台詞から察するに、どうやら彼が訪問するためには、何かのフラグが立ってないとダメで、現在の射干玉にはそれがないっぽいね。
「掲示板には流さない方がいい奴なんですかね」
「どうかしら?実装済みの方は朔夜に聞いたから、これはお出ししてもいい情報のはずだけど」
「そういえば朔夜さんとは?」
「ひまりちゃんの懐の黒いモフですね」
「ああ、眷属ですか……なぜ狐に眷属が要るのか……」
花枝さんの掲示板の話からの流れで、朔夜の話になる。
そして魚売さんは、狐ノ命に眷属がいることに疑問を呈した。
そうだねえ、我々も二陣以降で眷属持ちが増えた辺りから、その疑問は持っている。
狐ノ命と和邇以外の眷属持ち、殆ど空飛ぶ系なんですよ。
あ、金狼も例外だな、あれは流石に飛ばない気がする。……飛ばないよね?
「そこは現状不明ですね。狐ノ命、相変わらず二人しかいないし」
「そういえば後続にもおりませんね」
「いないといえば和邇も結局北斗さんだけだねえ、オンリーワンではないって話なのに」
「あの種族は難しそうですよ。尻尾問題は解決したとはいえ」
確かにノの字としてはアンバランスな種族だものね、和邇……
ノの字種族は結構多岐にわたるけど、今でもジョブが符術師と、その派生といえる呪符作成士だけだ。
これがミスマッチになる種族が結構多いんですよ。和邇もだし、サンガ君の土竜やミステルちゃんの槍蛇もそうだ。
ただ、その原因はわかりきっている。
符術師というジョブが良く言えばオールラウンダー、悪く言えば器用貧乏の極みだからだ。
弱体と物理攻撃以外、だいたい全部やるからね、符術師……
そして符術が参照するステータスは知性の時と耐久の時があるからね……
更に製品版になったら治癒符の性能が落ちたので、何かのステータスを参照するようになったのでは疑惑、なうであります!
なおひまちゃん、一番低い数字は信仰の2だよ!ステポは振れなかったし!
あと運のステータスは正式に削除になりました。南無。
というかですね、レベルキャップが上がったら、北斗さんはとうとう武器を持って殴る方がダメージ出るようになっちゃってね……持てる武器が限られてるけど……
そして最終的に合流できたファディさんは小島を出る前にLv30になったんだそうで、ステータスを見せてもらったら、体力も魔力も370越えという、見事なぶっ壊れだった。
知性+知識でもひまりちゃんがまさかの敗北だよ!!
「あー、真龍、知識+10がデフォルトで付いてますね。その代わり信仰がグレーアウトですが」
「現状だと信仰の数字がなくても、神官職に就けないだけ……かなぁ……?」
「ステポは何に振ったんです?」
「敏捷と器用ですね。低いところを補いました」
そうそう、製品版だと初期ステータスポイント、倍に増えたんだそうで、ひまりちゃんも追加で3p貰ったのよ。
当然知性に振りました。優勢のステータス伸ばすのが鉄板でしょう!
後でステータスを見たいつメン全員に、なんで耐久にしないって言われたけど!!!
何度も言うけど、2レベルで1しか上がらないステータスに振っても誤差ですってば!!
なおティキちゃんは通常種族扱いでステポ10Pだったそうだ。うらやま!
アンファルは器用に全振りしたそうですよ!料理がより捗るのかな!楽しみ!
知性+知識は真龍のLv30と狐ノ命のLv31が同じ数字だそうで……<敗北
なお治癒魔法系の判定は知識+信仰に変わった。
信仰の数値が絶対上がらない真龍治癒師、ちょーピンチである。




