第9話 草原エリアは3つある。
「呼ばれて飛び出たー。えーっと、石人のミケ・ランジェロだよ!宜しく!」
もう一人パーティに入れられるよ、というので、玉兎さんのフレンドから呼び出されたのは、どこからどう見ても、美術館にありそうなリアル系大理石の彫像がしょぼい初期服を着ているという、アンバランスな見た目の人だった。
「掲示板で存在は知ってたけど、本当に初期服似合わないんですね、石人さんって……」
そしてミューさんが辛辣だ。
確かに素朴というか粗末な、人系種族初期服は、このめっちゃヨーロピアンな華麗な彫像姿には似合わないけども……
「そもそも石像なのに服着ないといけないのも謎だがな!」
「だって流石に石像だから見える心配はないっていっても、動く野郎の装備が葉っぱ一枚はだめだろ……」
ガハハ、と見た目のイメージにそぐわない笑い方のミケランジェロ、もとい、ミケ・ランジェロ氏に、北斗さんがツッコミを入れている。
「タマさんにミケさん……ふふっ……」
そして隣でアンファルが妙なところにツボっている。
そういや花枝さん、笑いの沸点が割と低い人だったね……
「そもそもゲームとしては全年齢版だからブツは未実装ですぜ?」
「悪い大人に連想ゲームさせちゃだめだって話だよ!」
ミュー:さてパーティチャットの設定はできたかい?略称表示がおすすめだよ!
ひまり:3文字くらいが判りやすいかな。
アン:3文字だと座りが悪いので2文字で。
玉兎:2文字でもよかろうさ
北斗:俺ら普通に2文字だしな!
ミケ:じゃあもう俺もこれでいいな!ワハハ!
このまま暫く一緒に遊んでたら、普段の呼び方もこれになりそうだなあ。
なおミケさんの名前はミケが苗字という設定らしいですよ。
ミュー:じゃあ最初に術師にお札配っとくね!今日はキャリーしてもらう気満々ですので!
ひまり:わあ、種類がいっぱい!これ全部使え……ないな……闇と氷は使えません、だって!
現在実装されている呪符を全種類作ってきたというミューさんにトレードされたけど、闇と氷は適正がないらしくて使えない表示。
玉兎:俺は治癒がだめだな、防護も闇のみだ。
北斗:俺攻撃しか使えねえ!属性縛りはないんだけど。
なるほど、パーティのヒーラーは私だけ、把握。
という訳で、各自使えるものだけ預かって、余ったら返却するって話になった。
そもそも各種1スタック99枚までしかセットできませんし。
これはかばん容量を圧迫しないため、術の触媒の保持は別エリアを使ってるということらしい。入らなかった余りはかばんに残ったし、セットしたものをかばんに戻すことも可能だ。
「えーっと、草原1が満員で草原2もそこそこ人がいる……ってことはフィールド定員は300人くらいだなぁこれ。草原3かな、とりあえず」
ミューさんが冒険者組合ロビーにあるエリア状況掲示板、というリアルタイム表示とにらめっこしている。
「草原3……はい、東の草原ですね。皆さんはパーティを組んでおられますか?
町の東は初心者ソロは非推奨のエリアになりますね」
私たちの話を聞いていた組合の受付さんが解説してくれる。
「はい、6人で組んでるんでリンクとかなければなんとかなるかと!」
「ああ、この町の周辺エリアにリンクするタイプのモンスターや動物はいませんよ」
お、初期エリアはノンアクノンリンクか、やりやすそう。
無事行き先も決まったので、そのまま組合の人に草原3でお勧めの討伐や採集系のクエストを確認して受注してから、いざ出発!
ちなみに草原1は西側。町に行くときに東に行けって言われたから、そこは間違いないだろう。
草原3はどこかと思ったら、東門から出るというので、西からどっちか回りで番号が振られている様子?
「西が1で東が3。北と南どっちが2?」
「南は麦畑と街道と、橋が架かったでっけえ川だよ!俺そっちがスタートだったんだ。
だから北が2だな!」
首を傾げてたら、北斗さんが答えをくれた。成程、時計回りかー。
そして種族がワニさんというだけあって、北斗さんは川がスタート地点だったと。
『番号は便宜的に振っていますが、微妙に不評ですので製品版では方角名称に変更の予定です』
あー、味気ないっていうか、如何にもデータです感あるもんね、草原1とか3とか。
東3は、初めてくるエリアだから、マップは真っ白だ。
歩いていくとだんだん色が付いて行くよ!
ミュー:予想以上に人がいないねえ!
ひまり:まだリアル初日だし、パーティ組むって概念がないんじゃない?
北斗:去年流行ったファイトアンドファンシーとか、レベル10まではパーティ組むと逆に効率悪いからダメとかそんなんだったもんなぁ。
でも、この東側のエリアはパーティ組んでないレベル4未満のキャラは門番さんに止められるんだよね。
南の街道と川のせいで、外から回り込んでこっちに来る人も少ないっぽいし。
北側がまだ飽和してないっぽいから、こっちに来るのはレベル上がって効率悪くなった人だけじゃないかなあ。
そして多分、まだそんな時間帯じゃない、そんな感じ。
パーティ推奨エリアだけど、レベルが上がればソロでも殴れなくはない感じだって話とはいえ、ソロはどうしても時間かかるんじゃないかなあ。
玉兎:あー、ファイトファンシーなー。あのゲーム勿体なかったよなあ、いろいろと
北斗:運がないっていうか、流石にこんなオーバーテクノロジーぶっこまれるのはどのメーカーも想定してなかったんじゃね?
アン:皆さんも他のMMO経験してらっしゃる勢です?
ミケ:世界史初のVRMMOって時点でベータ申し込みするのは余程濃いゲーマーか例の小説かぶれくらいじゃねえかなあ!
アン:確かに……でも閉じ込め事故は困りますねえ。
ミケ:そこら辺はすげえセキュリティ雁字搦めにしてるらしいぜ。
雑談しながら獲物を探す。
程なくして、やたらでっかい羽根兎が2匹並んでいるのが見つかった。
……レベルでサイズ変わるのは割と想定外。
玉兎:でかくね?
ひまり:レベルでサイズが変わるんですかね?
ミケ:じゃあいくぜー!ヘイト管理とかよく判んねえが!【投石】!
ミケさんが宣言した途端に、ミケさんの髪の毛の端っこ部分(当然そこも石だ)が、ぽきっと折れて飛んで行く。
……ええ……?石人、どうなってるの……?
石が当たった兎はぴゃん!とでっかい悲鳴を上げると、ミケさんにまっしぐらに飛んでくる。
そこに術師組が一斉に雷と火と光のお札をぶっぱなす。
ミケさんが殴り、アンファルもどこで調達したのか大きなハンマーで殴り、術師組がもう一回お札をぶっぱなしたところで、兎がキラキラに変わる。
ミュー:戦利品は一旦プールされてから分配みたいね。とりあえず順番に配られるようにしておくね。
アン:兎肉はあとで融通していただけると助かります。無論お金は出しますよ!
ひまり:朝ごはんおごってもらった分はアンにあげるねー
玉兎:製品版だと空腹度も実装だったか……なあミケ、お前さんも腹減る種族なん?
ミケ:プレイヤーだから当然そうなるだろうが……食事の内容はどうなんだろうな?
北斗:本人が把握してないだと……?!
そんな雑談を繰り広げながら、パーティプレイは割と順調に進行していく。
ミケさんが殴ってもそれなりにダメージ出るせいか、ヘイト管理もあんまり考えなくていい感じなのよねえ。
ミケ:やっぱりファーストタッチヘイトあるな!
玉兎:予想はしてたががっつり来るねえ。
ひまり:実験するのはいいけど最初に宣言してくださーい!
途中でモンスターを引っ張ってくる、所謂釣り役を玉兎さんがやったら、一発目の一斉呪符で見事にターゲットが玉兎さんに張り付いたので、そういう結論になりました。
治癒符が3枚も飛んだよ!
4匹目の兎で全員レベルアップ!
生産者組もチュートリアルでレベルは上がってたみたいだから、揃ってLv3ですね!
玉兎:そういえば経験値の数字ってマスクデータなんだな。
北斗:パーティボーナスがあるのかどうかも現状謎!
ひまり:多分今の数字だとあっても誤差じゃないかなー
アン:ありそうですねえ。
ミュー:少なくとも貢献度で経験値が変動するって訳じゃなさそうね?
ミケ:あー、それを見るのに動いてなかったのか、ミュー
ミュー:うん、なのでこの後はちょっと動くねー!
ミューさん、動き出したらめっちゃ軽やかに短剣使う人だった。
エルフってなんか弓のイメージだけど、このプレイスタイルも悪くないなあ。
玉兎:エルフは弓のイメージがあるんだけども。
ミュー:予算がありませんねHAHAHA!
北斗:弓はともかく矢が消耗品だからなあ。
ミケ:俺の石は自前だからいいが、普通は飛び道具は消耗品だよな!
アン:その石ですけど、補充とかどうなってるんですか?
ミケ:寝たら回復!回復するまでは髪が短いぞ!
……それってつまりガチで身体削ってるって奴では……?
*****プレイリザルト*****
プレイヤー:稲見ひまり Lv2→Lv3
種族:狐ノ命
体力 14→18
魔力 30→40
SP 14→19
力 4→5
耐久 4→5
敏捷 10→12
器用 7→8
知性 11→13
知識 20
信仰 -
運 -
呪符魔法 Lv2→4
攻撃符:炎x99→80
護身符:光x99
治癒符:光x99→95
一般魔法 Lv1
称号
[漂流者]
[使い魔を労わるもの☆]
[聖魔のあわいを征くもの☆]※秘匿
[Eランク冒険者]
引き合いに出されてるゲームの既視感?気にしてはダメ^^




