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調べ物ってとっても楽しい時間泥棒。  作者: 杜槻 二花/三稜


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3/3

記憶の山茶花は、八重咲きでした。

 今の季節に咲く花と言えば山茶花(さざんか)

 実家には子どもの頃から咲いていた山茶花があって、十一月頃から咲いていたような覚えがる。

 一重の、ちょっと青みがかった赤い花びらがピンと外側へと広がって咲いていた……ような覚えがある。

 覚えがある、覚えがあると書いているのは、実家の木々は大体切られたか引っこ抜かれたからだ。

 詳細は省くが、最近は姉の趣味で薔薇の鉢植えに席巻されている。

 それはそれで美しいのだが、どうやら日本古来からの木々が好きな私にとって、実家からいろんな花木が消えたのはちょっと悲しい出来事だった。家を出た人間としては仕方がないかなと思うのだが。

 閑話休題。


 その山茶花の近くに、山茶花に似た八重の花があった。

 その山茶花に似た花は、桃色に少しだけ白色が混じったマーブルカラーの、ちょっと見は薔薇のような花である。実際は、薔薇よりも肉厚な花びらが、形良く整然と丸みを帯びて重なる姿がぽってりとしていて、上品なのに可愛らしい。葉の緑色は家の山茶花よりも少し薄くて葉脈がわかりやすく、表面の艶も少なくて、縁の反り返しも緩かったと記憶している。

 こちらは、勝手に山茶花の亜種なのだろうと思っていた。

 違いはあったものの、花びらの独特な肉厚感が良く似ていたからだ。

 わかりやすい違いがあるとすれば、八重の花はポトリと花ごと落ちること。

 ああ、これ椿に似てるなぁ、なんて思ったのは当時のお話だ。


 さて。


 残念ながらどちらももう姉に引っこ抜かれた後なので、私の記憶が間違っている可能性が高い。

 写真でも撮影していれば良かったのだが、実家住まいだった時の私に、いつも身近にある存在を撮影して残しておこう、などと言う考えは当時芽生えていなかった。実家に戻ればあると思いこんでいた私が悪いのだが、返す返すも残念である。


 ところで椿の花姿って最初に思い浮かべるのはどんな見た目だろう?


 私は日本原産と言われる藪椿や、茶室なんかで飾られている侘助を思い浮かべる。

 所謂一重咲きで楚々とした、それでいて濃い赤色に白い雄蕊が対象的に映える、凛とした姿の花を思い浮かべる。日本画なんかで良く描かれているあの姿。

 山茶花はちょっと開きすぎていて、個人的に好きな度合いは椿の方に軍配が上がるかな。と言う個人的な好みの差は横に置いても、私は自分が椿と山茶花の見分けがついていると思っていた。……椿祭りというものに遭遇するまでは。


 実家を出て引っ越し先の神社に足を運んだ時、三月に椿祭りというものを開催しているのを知って足を運んでみた。

 神社内に藪椿が沢山自生していて、開花時期に祭りとして愛でるようになったのが始まりらしい。

 境内では椿の販売他、品種改良した椿が作者に名付けられた品種名と共にずらりと飾られている。なんと海外からも参加しているのには吃驚した。

 その姿………、


 椿?え?これ全部椿なの?

 

 と、思わず呟いた程、椿に見えない。特に海外からの刺客はほぼ八重咲き、ひらひら。

 薔薇だ牡丹だラナンキュラスだと言われたら信じそうなほどに華やかかつ綺羅びやか。

 葉っぱがあるからああこれ椿なんだねとわかるものの、どうやったら君達そんなに見た目が変わることになったんだい?と言いたくなるくらい藪椿や侘助と違う。


 あれ、じゃあ実家にあった山茶花の亜種、アレ椿?そういや花の形でごっそり落ちてたような気が……。でもなぁ、葉っぱも椿と全然違ったしなぁ……。むしろなんとなく山茶花似。いや、でも花びらの質感が似てると言ういう以外、類似点……ええと、(たね)の形?


 ……えーと、そもそも、椿と山茶花、近縁種だよね?(そこから?)


<ツバキ(藪椿)>

目:ツツジ目 Ericales

科:ツバキ科 Theaceae

属:ツバキ属 Camellia

種:ヤブツバキ C. japonica


<サザンカ(山茶花)>

目:ツツジ目 Ericales

科:ツバキ科 Theaceae

属:ツバキ属 Camellia

種:サザンカ C. sasanqua


出典:Wikipedia


 おお、(しゅ)以外は一緒だ。成る程それならば類似性あって当然か。

 学術上の話では、藪椿のことを一般的に椿と呼ぶそう。園芸品種的に言うと、山茶花以外を椿と呼ぶらしいが、総称で言うならば、山茶花も椿の一種となる。先程例に上げた侘助や品種改良された八重の椿と同列ということ。


 うん、山茶花、君、広義の意味で椿なんだね……!(知ってた、知ってたよ!)


 じゃあ椿と山茶花の違いはどこに?というと、椿がポトリと花が落ちるのに対して、山茶花は一枚ずつ落ちる。花の開き方も、椿は軸側がすぼまった形から徐々に広がるのに対し、山茶花はぱっと軸側から開いて咲く。雄蕊(おしべ)も、椿がすっと立ち上がって内側向き、山茶花は外側向きにまばらに成長する。椿の葉は大きめで艶があり、縁のギザギザが少し見られる。山茶花は椿より小さめの葉に艶が少なく縁のギザギザが椿よりしっかりあって、子房にうっすら産毛が生えている。

 ……ということらしい。


 じゃあ、案外わかりやすいのでは?と思うでしょう。私も思いました。そうね、藪椿と山茶花だけならならね。

 ここで登場するのが、日本原種の椿、雪椿ちゃんと寒椿ちゃん。

 因みに雪椿ちゃんは育成した環境が違った為に藪椿が変異した物、寒椿ちゃんは藪椿と山茶花の雑交配したものではと言われている。更に藪椿と雪椿が雑交配した雪端椿(ゆきばたつばき)ちゃんがいるそうで、私はここらへんで嫌な予感がした。

 嫌な予感とは当然、それぞれの特性を引き継いだ、間を埋めるような品種があるということだ。


 さて。

 雪椿ちゃん、姿形が結構藪椿ちゃんに似ている。違いは、山茶花に近い形で花びらが広がること。そして若干藪椿よりも雄蕊がまばらに立つ。でも多分、山茶花よりも広がらない。そして花の形ごとぼとりと落ちる。

 そして寒椿ちゃん。まず、八重。そう八重!どうして八重になった?そして雄蕊は短めで山茶花に近い生え方をする。そしてそれ以外は山茶花に似ていて葉が小ぶりでギザギザがわかりやすく、花びらが一枚ずつ落ちる。花びらが、一枚ずつ、落ちる……!因みに子房に産毛は生えない様子。

 どうやら他の椿は、予想通り山茶花の特徴を持ってたり、藪椿の特徴を持ってなかったりする子達がいるらしい。

 ほらぁ、やっぱり見分けがつかなくなってきた、困る。


 さて、ここで実家に植わっていた、山茶花の亜種かもしれないを振り返ってみよう。

 

 花びらは八重。ここは寒椿ちゃんの特徴と同じ。

 花の落ち方は、花ごとポトリと落ちる。これは、藪椿と雪椿と同じ。一枚ずつ散る八重の寒椿ちゃんとは違う。

 雄蕊はどうかというと、実は最後まで咲ききった記憶があまりなく。中央が開ききっていないイメージしか残ってない。どうなってたの?君。

 じゃあ葉っぱはと言うと、色が薄めで大きくギザギザがはっきり。大きいは椿の特徴だが、ギザギザがはっきりは山茶花の特徴。そして椿も山茶花も深い緑色をしていて、どちらにも似ていない。勿論雪椿と寒椿にも。

 えええ、全てに共通の葉色が違うとか、もう別の花の可能性あるぅ?


 そう思った私は『花がポトリと落ちる 椿以外の花で』とGoogle検索で質問してみたところ、椿以外勧めてこない。

 ならばと『葉の色が薄い椿』と聞いても出てこないし、『赤色に少し白が入っている八重咲きの椿』と聞いてもなんか違うとしか言えない候補がずらりと並ぶ。どちらかと言うと白にちょっと赤が入ってるタイプばかり出てくる。聞いてるのは逆なんだって!あ、菊更紗(きくさらさ)ちゃんは形が結構似てる気がする。でも色味がやっぱり逆!


 万策尽きたか……と思ったが、これが最後だと園芸品種も揃った椿の品種一覧がないかなとGoogleさんに聞いたところ、沢山掲載しているサイトをひとつ教えてくれた。

 品種の名前がわからないので、記憶の花と合致する写真を見つけるまで、ひたすら、スクロール!

 ここに、無かったら…………諦める!


 因みに、スクロールバーの短さが、頁の長さを物語っている。果たして何品種載っているのでしょう。(数えてみたら、およそ百三十でした)

 

 リトル・スラム・バリエガタ、君は色と整い方がちょっと似てる。でも花弁の開き方が外向き過ぎる。こう丸っこく……。

 絞乙女ちゃんだいぶ近い!でも、色が、反転!

 津川絞ちゃんもだいぶ近い!特に赤すぎない桃色っぽいところが似てる!でも白い斑が見当たらないし、こう……なんか花びらの形が違う、気がする。

 スクロールも後ちょっと……もう無いのかしらん……とか思っていたら。


 ……あ、あった!君だ!紀州司(きしゅうつかさ)!探していたのは君だぁぁ!


 関西原産の千重咲(せんえざ)き。桃色に近い赤に白斑が入る大輪の花。

 私、千重咲きって初めて知りました。八重より重なっている花びらが多いから千重。

 一応寒椿の分類に……入るんですかね……?

 因みにGoogle AIちゃんによると、


・八重咲き (Double-flowered):

通常の花弁(5枚など)よりも花弁数が多い状態。

雄しべや雌しべが花弁化(花びらになる)していることが多い。

八重咲き品種は種ができない場合がある(ストックなど)。

 

・千重咲き (Full-double/Imbricated):

八重咲きの極端な形。花弁が極めて多く、中心部までギッシリと重なる。

花弁の重なりが美しく、見栄えが良い。

ツバキのオトメツバキが代表例で、雄しべがほとんど見えない。 


 雄蕊が殆ど見えないのか。成る程、だから記憶になかったのか。

 因みに、椿らしい深い葉の色よりも明るい葉色なのが特徴のひとつらしく、記憶と合致。

 もひとつ因みに、実家は関西の紀州近くにあるので、原産地に近くこれもまた状況証拠のひとつと言っていいはず。


 うわぁ!嬉しーぃ!見つかると思ってなかったからちょっと涙出そう。

 これでもし自分が庭付きの家を購入出来たとしたら、同じ品種を植えることが出来ますねぇ。

 ……そんな日は来ないだろうなぁ。


 と、満足したところで時計を見たら、三時間以上の経過を確認……。

 ……うん、満足出来たから、まあいいか。


 ――――――


 以下、余談。

 紀州司くんは寒椿の分類に入るのか、というのが気になり、色々調べたところ、

 学名:Camellia japonica cv. Kishu-tsukasa

 と登録されている模様。

 Camellia japonicaは、藪椿の学名になる。

 あれぇ?君、藪椿の交配種なの?


 では、藪椿の変異と言われている雪椿はと言うと、

 学名:Camellia rusticana

 んん?藪椿の学名、紀州司くんみたいに引き継いでないんだな?しかも田舎の椿なのか、雪はいづこに。


 ……じゃあ、寒椿は?

 学名:Camellia sasanqua 'Shishigashira'

 んんんん?うん?山茶花?あれ、山茶花なの?こっちも藪椿の学名は残ってないの?

 しかも君、お名前『獅子頭』なの?寒椿じゃなくて?

 因みに獅子頭は、八重咲きの亜種で、大雑把に言うと花びらがひらひらとした形に変化した八重咲きのことらしい。つまり花の咲き方をそのまま名前にしたってことね。獅子頭と言う名前の山茶花種ってことか。寒よ、お前もいづこに。

 かと思えば、Camellia hiemalis 'Shishigashira'と記載している頁もあった。どっちが正解よ。

 hiemalisは、『冬に咲く』ということらしいので、寒い=冬ということかな。でも藪椿も雪椿も山茶花も冬に咲くやん!


 一応Wikipediaさんでは、正しいお名前はCamellia sasanqua 'Shishigashira'の方で、別の人がCamellia hiemalis 'Shishigashira'

 と名つけたから、これも寒椿のお名前で間違ってはいないよ!とのことだ。

 まさかの学名が複数あるとか。学名ってひとつじゃないのかぃ。

 えー、もうわからん!

 書籍で椿図鑑でも探すか!(やけ)


 そうやって調べ物迷子になって行くのである。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。

評価やリアクションをいただけると嬉しいです。


ーーーーー


今回もバリバリWikipediaとGoogle AI(Gemini)にお世話になりました。

どちらも間違いのある可能性がありますが、取っ掛かりには大変楽をさせて貰えるので助かります。

以下、追加でお世話になったサイトです。

『庭木図鑑 植木ペディア』様(https://www.uekipedia.jp/)

『植物和名ー学名インデックス YList』様(http://ylist.info/index.html)

『かぎけん花図鑑』様(https://www.flower-db.com/ja)

『夢想庵』様(https://musouan.org/)

大変勉強になりました。謎も残りましたが……それは追々解決したいなぁ。

因みに、椿の品種は日本だけで現在2200品種以上、世界では6000品種以上あるそうです。

最後のスクロール検索、130種類とか全然少なかったんだなぁ……。良くあの中にあったと思います。

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