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調べ物ってとっても楽しい時間泥棒。  作者: 杜槻 二花/三稜


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『憚る(はばかる)』の意味ってどっちかが誤用じゃないの?って調べてみた結果。

 ある時、『周囲の目を(はばか)らずに』と、変換してしてから「この漢字でいいん?そもそも『はばかる』ってなんか逆の意味がなかったっけ。もしや私は意味を間違って覚えてない?」と不安になり、ネットで検索を掛けてみた。

 ちなみに私は自分の語彙力と記憶力を信用していない。


はばか‐る【憚る】

1.《五他》

他に対して恐れつつしむ。遠慮する。

「人前を―・って言わない」

2.《五自》

いっぱいに広がる。幅をきかす。

「憎まれっ子、世に―」


 今回はGoogleさんのAIちゃんが答えてくれた結果である。


 良かった私の記憶は間違えていなかったらしい。

 そのまま文章を書く作業に戻れ――ば良かったのだが、

 「これって元々はどっちかが意味を勘違いして誤用したのが広まったのかな。それがいつの間にかどちらも正しいと認識されたため、辞書編纂時にはどちらも正しいとされたとか?」

 と言う、逸脱した思考を持ち始めた。

 そうなると元の作業に戻るのには、ある程度満足行く結果を得なくてはならない。(いや、戻れ)


 1.と2.は真逆の意味である。

 ここで思ったのが、どちらかが『ひらがなか口頭による伝聞だけで、元々は漢字が当てはまっていなかったのではないか』と言うことだ。

 つまり、編纂時に同じ漢字が当てはめられたのではなかろうか、と。


 それで『憚』を漢字ペディアさんで調べてみると、

 

 ①はばかる。さしひかえる。おそれる。「忌憚」

 ②はばかり。 (ア)遠慮。 (イ)便所。

 

 と書かれている。

 ②の(イ)便所は、忌避すると言う意味合いからの派生だと考えると、これまた思考すれば面白そうだけど、話がずれるのでちょっと横におく。

 書かれた意味から感じ取れるのは、基本『控える』『恐れる』とマイナスに()()()()イメージだ。

 2.はマイナスイメージでも大きく()()()イメージ。やはり逆である。『如才(じょさい)ない』のように、後ろに否定がつくのであればまだわかるが、使用方法としては1.と同じ。


 そうすると、やはり1.が正しいが、2.は誤用か後年の人が、既にある漢字を()()()()に当てはめたのでは……と勘ぐってみた。

 因みにこの場合私的には『適当』ではなく『テキトー』である。これもまた、使っているうちに意味が派生した言葉のひとつだよなぁと思いつつ、少なくとも漢字が意味持つ『丁度良い』の意味ではなく『いい加減に』する方である。いや、これも『良い加減』が派生して……ああ、面倒くさい。つまり『大雑把(おおざっぱ)』の方である。


 正直、2.の意味であれば『(はば)かる』とでも記載すれば良かったのでは?と考えた。だって『幅をきかす』んだもの。そういやいくつかの漢字が候補として当てはめられている場合もあったよねと、もう一度辞典を見直しても『憚』の漢字しか当てられていない。『幅』は送り仮名のない漢字とされているからだろうか。そんなところばかり正確にしないで、意味の方を重要視してくれたら良いのに。その方が意味合いも伝わりやすいのに。

 などと、存在しない架空の編纂者さんに、本当かどうかもわからない言いがかりで八つ当たりをする。いやこれ、辞典編纂者さんのお仕事じゃないな。

 もしや制定したのは明治時代辺りのなんか、そう、そこらへんの標準語制定した人たちの、うん。多分これも私の勝手な妄想による風評被害だ、止めておこう。


 そう思いながらネットの検索画面を眺めていたところ、 Weblio古語辞典が目についた。


はばか・る 【憚る】

[一]自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

②はびこる。満ちふさがる。いっぱいになる。

出典:平家物語 五・物怪之沙汰

「ひとにはばかるほどの物のおもてできて」

[訳] 一部屋に満ちふさがるほどの何かの顔が出てきて。


 なんと『平家物語』が出典先。この時代で既に()()()方のマイナスイメージで使われていたと。

 作者不明ではあるものの、鎌倉時代には仕上がっていた古典物語なので、その時代には既に『憚る』が広がるイメージで書かれていることがわかる。

 副タイトルが『物怪之沙汰』とは恐い話と予想がつくので、『憚』の意味合いにある『恐れる』にマッチングするなぁ……関係ないけど。

 因みに、省略された前後の文章も確認してみたが、自分が現代語訳するなら、『()()()』とか『差し障りが出る』ほどの……と書きそうなので、やはり広がるイメージが強い。


 じゃあ萎縮するイメージはいつからあるのかと言えば、Weblio古語辞典さんの例から見ると、こちらも鎌倉時代にはある様子。


[二]他動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

遠慮する。気がねする。嫌がる。

出典:発心集 六

「かつは恐れ、かつははばかりて、まかり過ぎはべるなり」

[訳] 一方では恐れ、一方では遠慮して、経過してきております。


 こちらの方は1.の()()()()イメージに近い。それに、遠慮する流れの状況として『恐れながら』『恐縮ながら』と『憚』の単一漢字としての意味合いもしっかり含まれている。……ように思える。ので、こっちが誤用とはやっぱり思えないんだよなぁ。時期としては同時期。うーん。


 そういえば、とWeblio古語辞典さんにはもうひとつ例題が載っていたので、こちらも検証してみたら、もうちょっと何かわかるのでは?と確認したところ、


[一]自動詞ラ行四段活用

活用{ら/り/る/る/れ/れ}

①行き悩む。進めないでいる。行けないでいる。

出典:万葉集 三一七

「白雲もい行きはばかり」

[訳] ⇒あめつちの…。⇒白雲も進みかね(対応ページから抜粋)


 おお、奈良時代!鎌倉時代より古い!ということで内容を読んでみると、『進みかね』と広がらず、留まるイメージで使われている。縮こまるイメージに近い。

 いやでもこれさ、現代語訳的に漢字をはめるなら『(はば)まれ』じゃない……?

 それに『恐れる』イメージは特になさそうだ。前後の文章の流れで読むならば『富士山の頂きが白雲を遮って進めない』、と言う文章になる(はず)。

 そもそも現代国語辞典にその意味合いは残っていない(っぽい)。


 ……『万葉集』の原書にこの漢字が使われているんだとしたら、作者が漢字間違って使っちゃっただけじゃね?知らんけど。(作者への風評被害)


 とは言え調べる術はもうない……そりゃそうか。『平家物語』も『発心集』も遡るは鎌倉時代。

 Command+Zも使えなければ、消しゴムも使えない時代である。

 誤字脱字がそのまま発表されたとしても、作者本人に間違いの問い合わせも修正依頼もできないのだ。

 歴史的な遺物として保管されている現在、作者の間違いが死んだその後いつまでも残り続ける……なかなかの黒歴史な香りがするなこれは。(続く作者への風評被害)


 ……まあ、1.も2.も、今の時代どちらも使われている意味である。

 例えどちらかが誤用だったとしても、鎌倉時代から使われている意味なのだ。それはもう正しいと言って良い、多分。

 歴史的に名のある作者さん(作者不明含む)の間違いを、明確に確認しようとする行為は止めておこう。(尚続く作者への風評被害)

 本来私は、誤用も正しいことと広がってしまえば、辞書に載せて利用可能にしちゃえばいいじゃない派である。言葉は相手にちゃんと伝わることが重要なのだ。勿論広がりきっていない意味は誤用でしかないと思うので、辞書を編纂される方には慎重に行っていただきたいところだが。(責任転嫁)

 元々可能性が気になって調べてみたかっただけのこと。古典が得意でもなんでも無い私が、これ以上こだわると時間搾取の無限地獄だろう――。(気がつけば国会図書館の蔵書を確認しそうになっていた)

 と、気がつけば一時間以上これにかまけていた事に気がついた。流石にここらへんで思考は打ち止めしておこう。そうそう忘れてけど、最後に紙の辞書でも確認しておいて――、と手元に置いてあった国語辞典を手に取った。


 はばか・る【憚る】

(前略)

 [二](自五)無遠慮にふるまう。「憎まれっ子世に―」〔[二]は、「はびこる」の混用といわれる〕

(後略)

 出典:新明解国語辞典第七版(三省堂)


 ――「()()()()」の()()といわれる――


 へー、なるほどなるほど、……そっかぁ、もしかして『憚らない』と『()()()』が混ざったってことかなぁ。

 …………。

 

 あ゙、あ゙、あ゙、あ゙、私の一時間を一行で纏めてくれていた新解さん、ありがとうございます!疑問に思った最初の時点で開ければよかったのにね……!

(尚、このテキストを読んでくれた人から奪った時間)

ここまでお読みくださいまして有難うございました。

評価やリアクションをいただけますと、たいへん嬉しく思います。

ーーーー

今回調べ物にお世話になったのは、GoogleAI(Gemini)ちゃん、漢字ペディア様、Weblio古語辞典様、新明解国語辞典第七版(三省堂様)、Wikipedia様でした。

古典原文を確認するためにお世話になったのは、古典の改め様(https://classicstudies.jimdofree.com/)、万葉百科様(https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/)

お世話になりました。ありがとうございます。


紙の辞典は、現在国語辞典が二冊、漢字辞典が一冊が手元にあります。

同じ国語辞典でも、出版社が違うと内容が結構違うので、見ていて楽しいです。

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