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第1話:夜に咲く血の誓い

夜の風が、燃え跡の匂いをさらった。灰の上で薔薇だけが、凛として赤を保っていた。

紅蓮くれはは、その花に指を伸ばし、血の熱を確かめるように触れた。すると、薔薇の棘が指先に食い込み、世界は低い声でひとつの約束を囁いた――


「救いを与えよう。だが、それは血を払う代償だ」


彼女は目を閉じた。夜は、もう選ばせてはくれない。


――――――


半島の小村は、炎に包まれていた。黒煙が空を裂き、赤く染まった海面に火の粉が舞う。

「紅蓮、逃げて!」叫ぶ幼馴染の声が耳に届いた瞬間、村の中心で爆ぜた瓦礫に、二人の距離は無情に引き裂かれる。


紅蓮は剣を握ったまま立ち尽くす。炎の中、背後で何かが微笑んだ。黒い影──人の形ではない何かが、冷たく甘い声で語りかける。

「その手で、救うか、滅ぼすか――選ぶのだ」


少女の瞳に映ったのは、燃え残った薔薇。赤く濡れ、静かに輝くその花を握りしめると、胸の奥で何かが震えた。


「……わたし、救いたい」


しかしその声は、灰と煙にかき消される。影は笑い、手を差し伸べた。


紅蓮は震える手を差し出す。瞬間、冷たい感触が血管を駆け抜け、世界が暗転する――そして意識の奥底で、永遠の重さが彼女に覆いかぶさった。


目を開けると、灰の上にひとつ、完全に赤い薔薇が咲いていた。

それは、夜と血が交わった証――そして、この契約の始まりを告げる花だった。


紅蓮は唇を噛み、刹那の決意を胸に刻む。


「……わたしは、この命を、救いに使う」


だが、その選択は、誰も救わず、誰も報われない未来へと続く。

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