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ヨモツヘグイ  作者: うぇどwed
一角獣の王 編
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第十章 秘匿の断片

ヨモツヘグイ


一角獣の王編


第十章 秘匿の断片




 腰に布を纏い半裸のライザーは棍棒を一つ目の巨大な蛙の目に叩きつけた。


「うおおおお!」


 雄たけびを上げたライザーはそのもがき苦しむ蛙に馬乗りになるとセマに合図をする。


「…」


 セマは無表情ではあるが眉間を曇らせ、先程こさえた手槍をライザーに投げ渡す。


「リオスの加護あれい!」


 ライザーは叫び乱舞するとその蛙の脳天に手槍を突き立てる。その蛙は少し奇妙な叫びを放ったあと静かに息絶えた。


「当分蛙飯だな!」


 セマはライザーが笑顔でそう言うと表情一つ変えず肌寒そうな素振りをしながら答える。


「俺はその辺のキノコで良いよ」


 二人が木の上の拠点に戻るとディケオスは裸に前掛けをし料理をしていた。


「いいね!一つ目蛙の目玉か、これは旨いぞ」


 ライザーが巨大な目玉を床に下ろすとにこやかな表情で答えた。


「旨そうです!私も手伝いましょう!」

「…俺はキノコを採ってきました」


 ディケオスはセマのキノコを覗くと半分以上を拠点の外に放り投げた。


「セマ!これよりこの目玉の方が旨いよ!さぁ、君も手伝いなさい」


 ディケオスはセマを叱咤するとセマは床の目玉を見る、それは鼓動しセマを見つめていた。


「あぁ…気が狂いそうだ」


 すっかりライザーがキネカの動脈の環境に適応したある日、ライザーはまるで呼ばれるような感覚と共に迷目の現象が現れた。


「アスプロだ」


 ディケオスとセマはライザーのその言葉に反応し、じっとライザーの次の言動に耳を傾けた。集中するライザーは月の目を閉じ古き目に見える景色を覗く。

 その目に映るものは黒い竜巻が雷を纏い嵐を作り出していた。その勢いは凄まじく地形を変えたと謡われるリヴァリィサの火球を想起させる。


「何をする!?アスプロ!」


 数十ある呪詛の刻印の円陣の回転は早まり摩擦を帯びたように熱を帯び赤黒く光始める。そして視界の端に岩肌の腕が天に向かい振り下ろされた。


「わあああ!!」


 ライザーは頭を抱え身を屈める、目や鼻、口や耳から血を吹き出し苦痛の唸りを上げていた。


「ライザー!どうした!?」


 セマはライザーの肩をつかみ様子を覗い表情を確認すると、ライザーは意識を失っていることが見て取れた。


「ディケオス様、息はありますが…これは」

「彼のつがいに何かがあったのは間違い無いね。どうやら急ぐ必要があるみたいだ」



***



 エクリとリントンは拷問器具が並ぶ地下室に立っていた。


「ここが目玉盗みの蜘蛛の部屋か?」

「地下は地下ですがここは違いやす、さらにこの下です。この屋敷で地下はここが目立ちやす。故にこの下に地下があるとは気づきにくいんでさあ」


 グレフトは神妙な面持ちで二人に説明する。


「エクリ、傷の具合はどうだ?」

「…どうもな、傷は深く無いのだが妙に意識が霞む」

「…そうか」


 リントンは怪訝な表情で自身の体をさする。


「俺の体も妙に疲労感が残る、傷口から生気が漏れているようだ」

「鼠殺しの呪詛の影響か?おいグレフト、奴の呪詛にそのようなものは無いのか?」


 グレフトは困った顔をするとエクリに答える。


「あっしが知っている呪詛は先程話したのが全てですぜ」


 エクリはそれを聞くと口に手をあて考え込んだ。


「このまま進むには不安定な要素が多いな…」

「しかし旦那、鼠殺しは再び現れやすぜ、先程説明した通り奴には厄介な呪詛が数多くありやす。体を癒せる保障は無いです」

「…どちらに出ても賭けになるか」


 リントンはエクリの判断を待ちじっと腕を組んでいた。


「行こう、グレフトの言うリスクの方がでかい。時間を掛ければ事態は悪くなるだろう」


 エクリのその言葉にリントンは紅い真珠を体に括りつける様に背負い直す。そして強く拳を握る音を響かせた。


「エクリ、昔に旅芸人の一座の占い師と話したことを覚えているか?」

「あのでたらめな呪詛の刻印を見せびらかしていた老女か?インチキ占い師だろう」


 エクリはリントンの言う人物を覚えていた。彼女は当たりもしない占いをすると華族の子供から金をせがんでいた。エクリはその様に子供ながらに呆れていたがリントンは目を輝かしていたのを思い出す。


「お前は妙に好いていたな、あの老女の占いは当たらんぞ」

「彼女の占いが嘘なのは分かっていたさ、しかし、彼女の話す御伽噺が好きだった。彼女は前置きで必ずこう言うのさ」


 リントンは片手を自分の口元へ、もう片方をエクリの口元へ添えた。


「この話は呪われた歴史さ、エオニオテロスの巨石の師父ヒプロ様、彼の方から授かった秘匿。お前さんだけに伝えるよ。暗い暗い時代…」


 エクリは眉間を寄せリントンの話を聞いてみることにする。


「とまあ、前置きは演出がきいていてな忘れにくいのだが、話の内容の大部分は忘れた」

「なんだそれは」

「まあ聞け、気にいった所は覚えている。死者と戦ったジウラの騎士達の話、その時代は西の王の時代我がジウラ騎士達はアプロディ王家の名のもとで呪われた黒き鉾の城の奪還を試みたんだ。その時白き蹄の城は西の王が鎮座していた」

「なんだそのでたらめは、聞いたことも無い」


 エクリは気の抜けた返答で応えると聞くのを止めようとする。


「その戦でヒプロは剣の神の剣を選ばれた者に託したと言う、その一人が隼の騎士、俺とお前の祖先の一人だ」


 リントンは覚悟する目をすると最後にこう付け加えた。


「その剣は獅子の剣ダリア、三戦神キラゴ・カシナラの得物だ」


 エクリはリントンの目をじっと見た。



***



 ライザーが目を覚ますと、セマとディケオスは装備を整え旅路の支度を整えおいていた。


「ライザー、体は大丈夫かい?」


 ディケオスの問にライザーは自身の体の調子を確認する。


「私はアツァナです…」


 先程迄死にかけていた者とは思えない様にライザーは立ち上がる。そのまま状況を察し自分の装備に手を掛けた。


「ライザー、何を見た」


 セマはライザーの背中に問いかけるとライザーは振り返ることなく答えた。


「黒い翼、あれは…あれは何だ?」


 ライザーは腰に剣を掛けようとするもその疑問を何度も口にしながら震える手で上手く装備出来ずにいた。次第に唇を震わせこう二人に伝えた。


「一度祖父が幼い頃に御伽噺を聞かせてくれた…失われた時代のこの城の呪いの話を」


 ディケオスは瞳孔を開き金縛りにあったように体を動かすことが出来ずにいた。その様子を怪訝に見やるセマは再び問い掛ける。


「呪い?何の話だ、それは呪詛の類か?それとも契りの法の…」

「違う…違う!あれは、私…俺には分かる、アスプロが教えてくれた。あれは…リオラのエオニオテロス」


 セマは首を傾げるとディケオスの様子を覗った。そのディケオスは垂らした腕を震わせライザーに伝える。


「暗天のヤワタリが復活したんだね」


 ライザーはゆっくりと振り返るとディケオスの目を見つめ答えた。


「はい」


 そう答えるとライザーの手は腰の剣を装着し終えた。



***



 ヒュエイは全身をすり抜けるような風を感じ取り突然足を止めた。


「トリロ!ちょいと待ちな!」


 龍の巫女と龍の子供を背負うトリロはその言葉に反応し手を上げると後続のイシスとペヘリに合図をする。その合図に二人は従い共に足を止めた。


「何だ、ヒュエイ。下らない要件なら置いて行くぞ」


 イシスはそう言い放つ。そのイシスを表情と手振りで納めるとトリロは振り返りヒュエイに尋ねる。


「何か感じたか?」

「巫女様も感じてるだろうが…今、殺意の塊が北から流れて来やがった。あれはジウラの連中の仕業か?」


 トリロはヒュエイの言葉を聞くとイシスを見る。その視線にイシスは応えた。


「何を聞いても俺には分からんぞ、あの狂人のことだ、リアクの禁術であろうと何であろうと使うだろう」


 イシスの言葉にトリロは前を振り向いた。


「ヒュエイ、今の目標は紅い真珠だ。その情報はまた今度だ…仕事の邪魔に成りえる」

「ああ、すまない。先を急ごう」


 背負われるメムはトリロの背中で木々の隙間から覗く霊峰セリニを見る。しかし彼女の目は失われている。



***



 三戦神キラゴ・カシナラは龍の騎士リゲリから授かった龍殺しの剣ジアブロスと、剣の神オクトバスより授かった獅子の剣ダリアを所持していた。それらの剣はジアブロ合金で鍛えられており黒く鈍く光る。ジアブロ合金とは古き時代ジアブロス島で採掘された鉱石である蒼色のブレジオス鉱石と、霊峰リオスに今も眠ると言われる鉱石である緋色のセイショウ鉱石から作られる合金である。

 フィディラー神話にて二振りのジアブロ合金の剣を扱う者はフィディラー王とキラゴしかいない。


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