11A文芸部
草薙樟葉視点
入学してしばらく月日が過ぎた。
「……ふむ」
放課後。俺は椅子に座って思案していた。
HRが終わって数分。教室には俺と群羽のみ。
部活の事である。
健全な学校生活を目標としている俺としては部活は大事だ。
「……そんなに悩むなら部活に入らなければいいと思う」
俺の左腕といういつも通りのポジションに収まった群羽は言う。確かに悩むなら入らない方が良いだろう。だが、悩み悩みぬいて選んだ部活での日常で得る物は格別な青春だと思う。だから部活には是非とも入りたい所だ。
さて、実は今日、マクドナルズで知り会った友人、御手洗と共に回るつもりだったのだがその御手洗、クラスメイトの唐崎と郡山と春日に連れられてどこかに行ってしまったのだ。故に今、俺には当ても無い。
「……よし」
椅子から立ち上がり、バックを持つ。
とりあえず見回ってみよう。
この学校は鳥瞰して見るとエの形に似ている。下の横棒が教室や職員室がある一般棟。上の横棒は部室などが並ぶ部室棟。真ん中の縦線はその特別棟と一般棟を繋ぐ渡り廊下。体育館と倉庫は下の横棒の真横にあり、校庭は一般棟に面している。
特別棟を当ても無く進む。ふと話し声がした。右斜め前にある部室からだ。ネームプレートには文芸部と表記してある。
「ふむ」
少し思案した後、その扉を開けた。
「俺は小倉&マーガリンが一番だと思うのだが」
「炭水化物を二重に取ってどうするのよ。ここはやっぱりたまごサラダでしょう」
「わ、わたしはピーナッツを出張します」
御手洗と郡山、そして控えめに春日が話していた。
「……御手洗」
御手洗が俺に気付き手を上げる。
「草薙と……稲荷か。何しに此処へ?」
「少し部活動の見学を。御手洗は何をしている?」
「ん? ああ。ちょっとランチパックで一番美味しいのはなにか、議論してた」
「ああ、それは解る。だが何故わざわざこの場所で? ここは文芸部のようだが。ちなみに俺はグラタンコロッケが好きだ」
「んー。唐崎が当てがあるって言った場所がここなんだよ。入った時は先輩方が何人か居たんだが、説明聞こうとしたら何故か慌ただしくどっかいった。あとその味は認めん」
「で、今現在、暇を持て余していると」
「ああ」
だとしたら困った。先輩が居ないと言う事は説明が聞けないと言う事だ。こちらとしてさっさと終わらせたい。思案していると、背後から声。
「……新入生か」
振り向く。そこには少年と白い髪の少女が並んで立っていた。
「文芸部の方ですか?」
「ああ。八崎という。入部希望か?」
「……いえ、まだ決めかねています」
「そうか。なら説明、聞くか?」
「はい。是非とも」
そう答えると八崎先輩は頷き、
「んと、じゃあ説明。この文芸部は何かするところだ」
「……」
「……」
「……それだけですか?」
「それだけだ」
……それだけでは要領を得ない。俺は質問を重ねた。
「何かすると言いましたが具体的には?」
「文芸部の名の通り、詩やら小説作ったり、プラモデル作ったり、紙飛行機作ったり」
「……要はなんでも良いと」
「ああ」
「……」
顎に手を当て、どうした物かと考える。なんでも良いと言うのはなかなか魅力的だがそこはかとなく厄介な雰囲気を感じる。
悩んでいると
「やあやあ、それは素晴らしい!」
不意に八崎先輩の後ろから声がした。そこに視線をやると、クラスメイトの唐崎が立っていた。
「素晴らしい、実に素晴らしい! なんでも良い!? それはなんて天国なんだ、快楽を求めるに相応しい! 実に相応しい!」
「……」
ハイテンションな唐崎の言葉を聞いていると、横から御手洗が出てきた。
「……どこ行ってた、唐崎」
「ちょっと雉を撃ちに」
「トイレに行ってたでいいだろ。なぜ猟師にしか解らない言い方をする。……まあ良い。で、どうするんだ」
「もちろん、入るに決まっているじゃ無いか!」
「そうか。……えっと、すいませんが、先輩の名前は……」
「八崎京仁」
「……じゃあ八崎先輩。入部届はこれで?」
「ああ。……んーと、哭搭。おれは白木先輩と黒木先輩と灰谷先輩と、根古御坂と狗神を連れてくるけどお前は?」
「中で本読んでる。場所、解ってる?」
「大丈夫だ。あの先輩達はなんか騒ぎが起こっているとこに必ずいるからな」
「そう、じゃ」
「おう」
そう言って、八崎先輩は来た道を歩き出した。
「中、入る?」
残された哭搭と言われた先輩が首を傾げて聞く。俺は頷いた。
御手洗断悟視点
机を囲む椅子に腰掛け俺は問う。
「そういや、ひよりと壱木はどうしたんだ?」
「壱木くんは料理部だよ」
「……? なんでだ? あいつは食べる専門だろう。料理も作れるには作れるが……」
「去年話した日向高校七不思議は覚えているかい?」
不意に唐崎が変な事を言った。
「ん? ああ、疾駆する後輩と誰か解らない教頭と、良い人と、爆発する料理……だったかな」
頭の隅から記憶を引き出しつつ言う。
「うん、その内の爆発する料理を作る人が料理部にいてね」
「ああ、なるほど。残飯処理か」
「うん、毒見役と言うよりはそっちの方が良いね」
「大丈夫なのか、本当に?」
「この前賞味期限ジャスト1ヶ月切れのパンを食べさせても平気だったようだし、彼なら大丈夫だろう」
「お前は友人に何をしているんだ」
「いやいや、信頼すべき友人だから実験したのさ。他人だったらしないよ」
嘘臭い。
そう思ったがどうせへんな理屈で反論するだろうから口には出さない。
「で、緋村は?」
「壱木くんについて行ったよ。多分、美味しい物が食べられそうだからじゃないかな」
……食い意地の張った奴め。まああいつらしいか。
「と、言う事は、おれとお前と郡山と春日か」
「うん。後は君の新しい友人、草薙くんと稲荷さんだね」
「いや、あの二人はまだ入るかわからないぞ?」
俺達から離れて座り、二人いちゃつきあってる草薙と稲荷を見る。
「んー? まあ、僕の勘だけど、入るんじゃない?」
「よし、賭けるか? 入らなかったらお前がジュース奢る、入ったら俺がジュースを奢る」
「OK.その賭け、乗った」
群羽に構いつつ俺は考える。
……さて、どうした物か。
八崎某はもうしばらく帰ってこない。
部室内を見渡してみる。真ん中に机があり、俺、群羽、御手洗、唐崎、郡山、春日はそれを囲むように座っている。先輩、八崎から哭搭と呼ばれていた女は窓際にある椅子に腰掛けて本を読んでいる。
「……あの」
恐る恐る訊ねる
「……なに?」
しばしの沈黙後、哭搭先輩が返答した。
「この文芸部は何をするんですか」
「さっき八崎が言った通り」
「……」
「……ワタシ達が入る前は普通に文芸部として活動してたんだけど、ワタシの先輩で、この文芸部の現部長の白木先輩が、入った途端、こうなったらしいの」
白い髪をいじりながら、哭搭は言う。
「……ちなみにワタシの友人に根古御坂と狗神が居て、キャラが被ってるわ」
……ううむ。どう返答するか困る。
考えこんでいると、廊下から足音。
「御手洗、匿ってくれ!」
がらりと、男が飛び込んできた。
「何しに来た、氷司」
御手洗が言う。どうやら御手洗の友人らしい。
「いいから匿ってくれ」
「誰に追われてるんだよ」
「姉さん」
「諦めて捕まれ。と言うか今度の原因はなんだ」
「解らない。今朝、冷蔵庫に一つだけあったプリンを食べたのが原因かもしれない、いや、昨日姉さんが楽しみにしていたドラマに上書きしたのがばれたのか……? それとも、先週の……」
ぶつぶつと呟く氷司の後ろに黒いオーラを纏った女が現れた。
「うん、最初に上げたプリンの件で合っているんだけど、勝手に白状してくれたあとの2つも加味してあげる」
ガシッと氷司の襟首が掴まれる。
「さあ、楽しい楽しい尋問の時間よ、氷司。カツ丼奢るから今まであんたがやった事、全て白状しなさい」
「知っているか姉さん、警察の尋問でカツ丼は出ないんだ」
ずるずると引きずられながら言う氷司。
「要らない豆知識をありがとう」
「いやいや、後で姉さんは警察の尋問を受けるだろうから、ショックを受けないように教えて上げたんだよ」
そんなやりとりを交わしつつ、氷司の姉と思わしき女と氷司は、部屋を出て廊下へと消えた。
氷司と氷司姉が出て言って数分後、八崎先輩が5人の男女を連れて帰って来た。
「柊木先輩と華葵を追跡していた華葵ファンクラブを追った、ハロルド先輩と光村先輩についていこうとしてたから急いで連れ戻した」
「ええい邪魔するでない八崎ー。わたしはハロルドと光村の華麗なる活躍を見たいんじゃー!」
「右に同じにゃー」
襟首を掴まれている女二人が言った。
「はいはい、わかったからじっとしてろ。下手に入ったらお前も巻き込まれるだろうが」
「黒木先輩の言う通りだ。大人しく寝てろ」
襟首を掴んでいる男二人が言う。
哭搭先輩が首を傾げた。
「ファンクラブ? 変ね。彼らは去年、人の恋路を邪魔しようとするとどうなるか、身を持って知った筈だけど」
「だから身を持って知った先輩方は動いてない。唆したんだ、華葵後輩に惚れた何も知らない一年に」
八崎先輩の後ろから、中性的な顔立ちの先輩が顔を出し、言う。制服は男子の物だから男なのだろうが、この学校は少し変わった生徒が多いので、男装しているだけなのかも知れない。
「でー、キミが入部希望者?」
黒木と呼ばれた先輩に襟首を捕まれている女が言う。恐らくこの人が白木先輩なのだろう。
「いえ、俺は体験しに来ただけです。入部希望者はあっちの三人」
「そんな事言わずにキミ達も入ろうゼ」
俺の指した方向を見ず言う白木先輩(断定)。入る前に懸念していた厄介だと言う予感が的中。だがもう遅い、厄介な予感がした時点で逃げればよかった……。そう後悔したが多分もう遅い……そう判断し、俺は渋々言う。
「……じゃあ、宜しくお願いします」
「よっしゃー! 新入生部員5人ゲットー!」
白木先輩が叫ぶ。その頭を黒木先輩は「うるさい」と叩いた。
入部届を黒木先輩に渡し、部室棟を出る。前を歩いている唐崎がくるりとこちらを向いた。
「やあ。君が草薙君か」
「……そんなお前が唐崎か」
「うん、まあ。所でぼくは聞きたい事があるんだ」
「なんだ」
「君の隣……と言うか、もはやくっついている彼女……稲荷さん、だったかな。彼女はなんで君にくっついているんだい」
唐崎の問いに答えたのは俺ではなく群羽だった。
「樟葉の事が好きだから」
「……おやおや。稲荷さん、大胆だね。で樟葉くん、感想は」
肩をすくめて言う唐崎に
「無い。幼い頃から言われ続けてるからな」
「ははは、とんだバカップルだね。爆発してくれるとありがたい」
「おい唐崎」
唐崎の言葉に御手洗がツッコミを入れる。その横に居る郡山が聞いてきた。
「ところで、草薙君。あなた何処から来たの?」
「鬼無里村からだよ」
「鬼無里村? たしかこの県の端っこにある村ね。確か鬼の伝説とかがあるんでしょう?」
「よく知ってるな。そうだよ……痛っ」
「……? どうしたの」
「や、なんでもない」
首を傾げる郡山の横で唐崎がぴたりと足を止めた。
その動作でいつの間にやら俺達は校門の前に居る事に気付く。御手洗がくるりと振り向きこちらを見る。そして言う。
「俺とこいつらは今日、南にある喫茶店、bouquet catに行く予定だけど、一緒に来るか?」
「いや、今日は無理だ。また次の機会にしてくれ」
「なにか用事でもあるのか?」
「ああ。大事な用があるんだ」
俺の言葉に御手洗は「そうか」と言って、
「じゃあまた明日な」
「ああ」
南の道に歩いていく御手洗達を見送った後、俺は群羽に声をかける。
「そろそろ脇腹を解放してくれ」
俺の脇腹をつまむ手を緩めず、言う。
「やだ」
タイムラグ無しの返答に俺は頭を掻いた。
「……鬼無里村じゃ、お前の性格を知っている奴が殆どだったから俺に進んで話かけてくるのは母さんか、駄菓子屋の婆さんぐらいだったけどな。この街ではもしお前の性格が知られたとしても話かける奴が多いだろう。少しくらい我慢してくれ」
数瞬の沈黙の後、群羽は渋々と言った体で答えた。
「樟葉が一緒にパフェ食べてくれるなら、我慢する」
「わかったわかった。約束する」
脇腹が解放される。
「で、どこで食べるか?」
「樟葉が良いならどこでも」
「じゃ、cafe nocturneと言う店にしよう。近いし、コーヒーが美味しいと評判だからな。あと、新入生キャンペーンとかでちょっと割引しているらしい」
こくり、と群羽が頷いた。
「じゃあ、そこで」
「よし、じゃ、行くか」
再び頷く群羽を連れ、俺は歩き出した。
1ヶ月で書けるかなーと思ったら2ヶ月近くかかった。もう少し早く書けるように精進せねば。
次回予告
「お前が勝てばオレはなんでも言う事を聞く。オレが勝てばお前はオレの質問に答えろ」
「悪く無い、否、少しこちらの方が分の良い賭けですね?」
「介護サービスだよ。文句は無いな?」
「ええ」
パシリ、とナイフを右手で掴み、気狂いは構えた。
「んじゃ、ま、さっさと殺るぜ」
「そうですねぇ、補食を、開始しましょう」
11B覇王鮫
絶賛遅筆中!
元・仮想倶楽部のティータイム
「いやあ、ただで飲むコーヒーは美味しいねえ」
「あーくそ……ここぞとばかりに一番高い飲み物頼みやがって……」
「いや、ぼくはここに来る時いつもこれを頼んでるよ?」
「あ?」
「ここのコックの一人は唐崎の兄なのよ」
「ああなるほど……じゃあまけてくれるのか」
「いや、ぼくの兄さんはその方面だけは堅物でね。だからぼくはたまにしかここにはこない」
「ああそう……で、壱木、料理部の方はどうだったんだ」
「んぐむぐ……ん? ああ、差し出された料理食べたら泣いて喜ばれた」
「その料理はどんな料理だったんだ?」
「なんかぼこぼこと泡立ってて変な色してて、なんか呻き声みたいなのが漏れ出てた」
「よく食う気になったな!?」
「なあ、みたらし団子、ナプキンにこんな事が書かれるんだけどー」
「そのあだ名止めろってんだろ。で、なんだ、感想、批評、質問、助言、等、待ってます……? ただの落書きじゃないのか」
「さあ、それは書いた人にしか解らないんじゃないかな? 色が見る人によって違うように」




