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1B 非日常の路地裏

鬼ごっこ。

「ハア、ハア」

 薄暗い路地裏で彼は息を整えていた。

「ハア、ハア……。クソッ、どうなってやがる……!」

 彼は壁に凭れさせていた背中を離し、騒がしい方――商店の並ぶ通りに歩き始める。

「大丈夫だ……。流石に人通りが多い所なら……!」

 そう呟きながら、歩く彼の目の前に、突如として上から鉄骨が振り、コンクリートに“突き刺さった”。まるでダーツのように直立してそびえる鉄骨。

「ッ……!」

 彼の顎から汗が落ちる。それは決して暑いからでは無いだろう。

 慌てて、後ろを見る。

 彼が先程休憩した場所よりも遠い所に人影が有った。問うまでも無く、それが鉄骨を投げたのは明確で。問題なのは普通の人間の筋力は鉄骨を投げれないのに、鉄骨を投げた事、そして手加減が無いという事だろう。

「……ッ!」

 彼は慌てて近くの民家の窓を蹴破り、そこに入った。数瞬遅れて彼が立っていた場所に鉄骨が刺さる。

 彼はそれを見ず、その民家の玄関に向かった。


「ハア、ハア……! ……クソックソックソックソックソッ! いったいどうなってんだよ! いつから、この世界はこんなに狂いやがった!?」

 絶叫する、彼。

 それに答えるのは、投げられて来る鉄骨の音のみ。

 非現実的ではあるが、コンクリートの砕ける音を聞いてるとそうも行かない。

――立ち止まれば、死ぬ。

 その考えが彼をひたすら走らせていた。


 始まりはどうってことの無い事だった。

 いつものように、学校をサボり、見知らぬ路地裏を歩き、時折、すれ違った相手にいちゃもんをつける。無論、相手は選ぶ。屈強な男には手を出さず、狙う相手は女か、子供か、力が弱そうな男ばかり。

 今回、いちゃもんをつけたのは凛々しい顔立ちのややほっそりとした男。

 いつものようにいちゃもんをつけて、相手が謝るのを見て悦に入る、筈だった。

「謝れよ。おっさん」

 催促すると、男はいきなり、……そこら辺の壁を伝うパイプを引きちぎった。

 驚愕する彼を余所に、男はそれをぶん投げた。

 パイプが彼の頬をすれすれで通る。それで彼は我に返り、

「うああああああ!」

 悲鳴を上げて、逃げ出した。


 そして、今に至る。

「ハア、ハア、」

 先程から走っているのに男を撒けない。走っている様子は見られない。なのに一向に撒けない。

「っクソッ……!」

 彼の脳裏に非現実な予想が走る。

 それは、

――アイツはバケモノなのか?

 と、言う予想。

 普段の彼ならその予想を笑い飛ばすだろう。

 だが、今の彼にはそれが真実のように思えた。

 ザクン、と目の前にまた鉄骨が突き刺さる。多分、先程と同じ鉄骨だろう。近くに窓が無いので、先程通り過ぎた左の通路へ向かう。

 妙だ、と彼は思った。

 先程から進路を強制されているような気がするのだ。商店街に行く道は無論、商店街とは逆方向の道も、今のように、鉄骨で塞がれる。その上、十字路にも着かない。まるで、

――誘導されているような感じだ。

 そして、その予感は的中した。



 数分後、彼は硬直していた。

 彼の目の前にあるのは――壁。窓も無く、ドアも無い。

――やっぱりか。

 予想はしていた。だが、それに対抗する手段が無かった。

 だから、みすみす、罠にかかる。

 足音が後ろから響く。もう逃げるのは諦めた。だけど、このまま殺されたくも無い。

――殺されるんならせめて片目に指でも突っ込んでやる。

 そう覚悟し、後ろを振り向く。

 右手に鉄骨を持った男が居た。黙って睨みつけていると、男が初めて喋った

「さあ、選択しろ。非常識的に殺されるか、常識的に殺されるか」

「……どっちもヤダね」

 両手を構える。男が鉄骨を振りかぶったら、飛びかかるつもりだった。

 しばらくして男が鉄骨を振りかぶる。

 ――……今だ!

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 手を、指を、男の顔に突き出す。

 指先に感触は――しなかった。

「……良い度胸だ。最近の若者には勿体無いくらい良い度胸だ。

それに免じて――気絶程度で許してやる」

 俺の手を左手で掴み、鉄骨を振りかぶりながら、そんな事を言う。

 振り下ろされる鉄骨。

 暗転する視界。


 ドサッという音と共に、少年は倒れた。

 オレは鉄骨を下げ、反省する。

――いくらおっさんと呼ばれたからってこれはやりすぎたか。まあ人間の体は割と丈夫だからな。死にはしないだろう。……しっかし。

 なんでみんなオレを見るとおっさんとか野郎とか言うのだろう。オレは、

 ――女なのに。

 ……やっぱり、この顔と馬鹿力が悪いのかね。

 そう思いながら、オレは当初の目的地へと向かった。



登場人物紹介


彼。

被害者。

これを期に更正するとかしないとか。


華葵美鈴ハナアオイ ミスズ

男……と見せかけて彼女というトリック。というか最初はそんな設定無かった。

次の非日常には妹が登場する予定。


自分の小説って結構グダグダなんじゃ……?そう思う今日この頃。


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