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番外―interval―telephone night

 おまけと言うか裏設定と言うか本編のはみ出しと言うか。まあ読まなくても別に支障は無いっぽいです。

「……夜分遅くにお電話失礼しますよ。気狂いマッドネスさん」

「――……ふん。誰かと思えば音無しサイレントの雇い主か」

「おや? 私を御存じで?」

「ああ存じてるよ。日向高校校長、日向兵蔵ヒュウガ ヒョウゾウ。食えない爺さんだと聞いてる」

「それは買いかぶりですよ気狂いマッドネス。私はただ臆病なだけです」

「臆病な奴が殺し屋を手元に置くかねえ?カルロス・ハスコックって知ってるか? 有名な狙撃手なんだがな。カルロスは臆病なほどに慎重だったから戦場を生き残れたんだぜ? ……まあいいか。ところで気狂いマッドネスは止めろ。あれは殺し屋の時や仕事、もしくは同じ裏の世界での名前であって本名じゃねえ。……まあ誰がつけたかは知らんがな」

「そうなんですか? なら本名はなんと言うのです?」

「久世荒鷹。もっともこれは糞親父が勝手につけやがった名前だがな」

「解りました荒鷹さん……でいいですか?」

「ああ、それで構わん。……で? 何の用だ」

「……単刀直入に言いましょう。あなた達十指で一番強いのは誰ですか?」

「……夢見がちな事を言うね。じいさん」

「おや。それはどういう事で?」

「十指にはそれぞれ特性が有る。すべてを絶つ剣術もどきやら、、見ただけでその技術が何か解り、扱える観察力と器用さやら、敵味方関係無しに殺戮する狂気やら、な。全員極端な特性ばかりだ。それ故にオレは暗殺が苦手だし、破壊殲滅ブレイカークラッシャーも暗殺が不得手だ。だから誰が強いかなんてわかる筈が無い。もし暗殺も殺しも破壊も出来る奴を最強と言うなら万能屋――死角なしオールクリアだろうな」

「……ふむ。なるほどなるほど。しかし私の定義は誰が強いかであって万能さは求めてないんですよねえ。では質問を変えましょう。荒鷹くん。今まで会った十指の中で、あなたが勝てないと思った人は居ますか?」

「……該当者は二人、居るな」

「二人も、ですか? 荒鷹くんの特性である断剣は残鉄剣のようになんでも斬れるんですよね」

「勘違いするなよ、じいさん。確かにオレの断剣に斬れねえものは無いが――。触れられなきゃ終いだろ。と言うかオレの断剣は短剣の型だ。糞親父の長刀の型よりも遥かにリーチが短い。近距離なんだよ。まあその代わり、死角なしオールクリアはこの断剣を会得する事が出来ないみたいだがな」

「なるほど、参考になります。……で、荒鷹くん、君が勝てないと思った人物は誰なのです?」

「――破壊殲滅ブレイカークラッシャーだ」

破壊殲滅ブレイカークラッシャーさんですか。矢神さんから聞いてますよ。確か殲滅専門なんでしたっけ?」

「ああ。破壊者の頂点って言っても良いくらい破壊しか出来ねえ馬鹿だ」

「ですが勝てないと思ったのでしょう?」

「……まあな。何回か奴の殲滅を見てみたが遠目から見ても奴に勝てる奴は居ないって確信している。まあオレも十指を全員見た訳じゃないからひょっとしたら虚無エンプティブランクやら覇王鮫タイラントシャーク辺りなら勝てるかもしれないがね」

「ふむ? そのエンプティ……って人は何の特性を持っているのですか?」

「会った事はねえから本当かどうかは知らないが……。なんでもターゲットに関する情報を消すんだと」

「……? どういう事ですか?」

「一夜にしてターゲットの姿もターゲットの家族も無くなるらしい。まあ流石にターゲットに関する記憶が無くなる訳じゃねよ。あくまで知らず知らずの内に消えているってらしい」

「ふうむ……? なかなか面白いですね。で、覇王鮫タイラントシャークさんと言う人の特性は?」

「知らん。会った事は無いし、噂も聞かないからな。まあ名前からして破壊者系統だろ」

「おざなりですねえ。まあ良いです。で、あなたが勝てないとされるもう一人の方は?」

「――……殺戮者キルサイド

殺戮者キルサイド? ……おかしいですねえ。矢神さんから聞いた中には居ませんが」

「そりゃそうだ。殺戮者キルサイドが十指に入ったのはざっと一年くらい前だからな。四年前に脱退した音無しサイレントが知る訳無い」

「……言われて見ればそうですね。殺戮者キルサイドと言う方はどう言った方で?」

「狂人だ」

「おやおや。仮にも気狂いマッドネスがそう言うとは」

「……さっきも言ったが気狂いマッドネスは十指に入った際に誰かが付けた名前だ。それに……もしオレが切断者リーパーとか呼ばれたりしたら気狂いマッドネスと言う名前はあいつになってただろうな」

「あなたがそこまで言うとは……会ってみたい物ですね」

「止めた方が良いぞ。一回しか会った事が無いが――あいつは横を通った人間を簡単に殺す奴だ。迂闊に近づいてみろ――死ぬぜ? もし依頼をするなら電話でやった方が得策だ」

「……依頼をするつもりは無いんですがね。まあ解りました。もし依頼をする機会が有ったらそうしますよ」

「そうしとけ。……と。最後に一つ忠告だ」

「はい? なんでしょう」

音無しサイレントを怒らせるな」

「……それはどう言う意味でしょうか」

「あんたの事だから解ってんだろう。今でこそ普通の一般人だが、昔のあいつは暗殺者なんだ。さっきの勝てない相手には実は音無しサイレントも入っているんだよ。以前断剣無しで戦った時には奇術師ウイザードに止められたが――もし死にそうになった場合、あいつは音無しサイレントになっただろうさ。誰にも知覚されず誰も気づかず、相手がどんなに人を雇おうが最新の防犯を付けようが、難なく近づき、あっさり殺す。奴が伝説と呼ばれ、音無しサイレントと呼ばれる由縁。幽霊のように姿を消す暗殺術。あれを使えばオレは負けてただろうな」

「へえ。知りませんでしたよ。矢神さんの特性がそう言うのだとは」

「嘘吐け。……まあ良い、忠告はしといたぞ。肝に命じとけ」

「了解しましたよ。こんな時刻に失礼しました。では」

 電話は切れた。


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