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short1元旦

 このままでは1ヶ月に一回になってしまうという危機感。

「あけましておめでとうございますっ、せ~ん~ぱ~いっ!」

「ごふっ」

 惰眠を貪っていると何か腹に重い物が乗っかった。意識が覚醒する。

「……華葵?」

 目を開けるとそこには去年の半年間でいやと言う程見慣れた顔があった。

「なんでお前がここに居る」

「愛故です!」

 きっぱりと断言する華葵。とりあえず辺りを見回す。入り口のドアの隙間に好奇心むき出しの目を発見。……どうやら母さんが手引きしたらしい。溜め息をつきながら俺は頭を掻く。

「何の用だ」

「初詣に行きましょう!」

「……初詣?」

 じろりと華葵を見る。そう言えばこいつ、若草色の着物着てる。

「一人で行け」

「いやです。先輩と行きたいです!」

「……いやだと言ったら?」

「この部屋のどこかにあると思われるえっちな本を探します」

「……解った解った。付き合ってやるよ」

 仕方無く俺は承諾した。

 ……別に華葵の言葉が原因じゃないんだからな。



 着替え、リビングに向かう。何故か華葵と母さんが仲良く話していた

「でねー。これが3歳の頃の信!」

 よく見るとアルバムを机に広げている。

「きゃー! 可愛いじゃないですか、この先輩!」

「そうよねえ……あの頃はまだ今の風にひねくれてなくて純真だったのに……」

 遠い目をする母さん。……良い年した男に可愛さを求めるのは間違ってると思う。

「お義母さん、お義母さん! 先輩込みでこのアルバム、貰って良いですか!?」

「もちろん良いわよ? スペアはいっぱいあるし」

「良い訳ないだろ。人を売るな」

 なにやら話が変な方向に行きかけ始めたので止める。

「あれ? 先輩なんで着物じゃないんですか!?」

「いきなりそんな物用意出来る筈が無いだろ。……母さん。今日の朝ご飯は」

「そこにトースターと食パンがあるからバターなりマーガリンでも塗って食べなさい」

「……解った」

 母さんの言う通り、食パンをトースターに入れた。ついでにコーヒー(インスタント)を淹れる。

「……せ、先輩が、あのひねくれ者の先輩が……! お義母様の言う声をすんなり聞いた……!?」

「……何が言いたい、華葵」



 朝食を食べ終え(ちなみに華葵は家で食べてきたそうだ)、華葵と共に近くのバス停に向かう。バスに揺れる事数十分。バスは日向市の南に座する音是市に着いた。

「……寒いな」

 寒風荒ぶ中、音是市の北側にある音是神社の前に立ちながら俺は言う。

「なら私の豊満な胸に飛び込んで下さい!」

「断る。と言うか自分の体型を捏造するな。どう見てもお前の体型は標準じゃないか」

「いやん。そんなに私の胸を見てくれるなんて……先輩のえっち」

「……今、俺はお前を猛烈に殴りたい」

そんな馬鹿な掛け合いを続けていると、不意に聞き飽きた声が耳朶を打った。

「……あっれー? 信がこんな早く来るなんて珍しいねー」

 首を声のした方に曲げる。

「……光村か。三浦と菱谷は一緒じゃないのか?」

「んー。ちょっと寝過ごしちゃって……。まあ何はともあれあけおめー」

「あけおめ」

 そう言えばこいつ、授業中にも眠ってる事が多かったな。納得しているとまた聞き飽きた声が。

「ム。あけましておめでとウ、だナ。柊木」

「ハロルドか。お前も初詣か?」

「ああもう済ませたがナ」

「そうか。……所で横に居るのはお前の姉か?」

「いヤ。姉は文化祭の日に来た姉さん一人ダ。こいつは僕が居候している家の次女」

「ん……と。初めまして。楠風樹クスノキ フウジュです。君達は……柊木くんと光村ちゃんと華葵ちゃん、かな?」

「あれ。なんで解るんですか? ボク達名乗ってませんけど」

「ハロルドから聞いたのよ。ツンデレな柊木くんに、元気娘の光村ちゃんと、柊木くん一筋ラブの華葵ちゃん」

「……ハロルド。お前は俺の事を今までツンデレと認識していたのか……?」

「イ、いヤ。ツンデレとは言ってないゾ、僕ハ」

 俺の殺意を感じ取ったのかハロルドが慌てて弁解する。

「……信がツンデレなのは置いといてさあ。早く済ませない? ボク、朝食抜いてきたからお腹ペコペコなんだ」

 じりじりとハロルドに近づく俺を後目に光村が言う。風樹さんが頷いた。

「そうね。バスも来たし……。……うん、と。柊木くん。悪いけどハロルドをいじめるのは今度にしてくれないかしら」

「……解りました。ハロルド、今度会った時は覚えてろよ」

 華葵に引っ張られながら俺は言う。

「忘れてくれると僕としては嬉しいんだけどナ……」

 背後で日向市行きのバスに乗り込みながらハロルドがそうぼやくのが聞こえた。



 ◇百棟弧赤モモムネ コセキ視点

「相変わらず凄い人混みだよなー、兄ちゃん」

「うん、そうだね。……メリー、大丈夫? だめそうなら上着貸すけど」

 相槌を打ちながら、僕は傍で寒さに震えているメリーに聞く。

「だ、大丈夫だ……。わ、私は弧赤の妻だからな、こんな寒さ如き、て、敵では無い……」

「無理しちゃだめだぞーめりっち。こうゆー時は「疲れたわ、あ・な・た(はあとまーく付き)」って言うんだぜ!」

「……縁ちゃんの戯言はともかく、休んだ方が良いわよメリーちゃん」

 縁の戯言に被せる様に樒木シキミギが言う。

「むうう……。こ、弧赤」

「……? 何、メリー」

「……上着を、貸してくれ」

「……はいはい」

 すまなそうな表情で言うメリーに微笑みながら僕は上着を脱いだ。



 ◇灰谷ハイタニ視点

「……何時もながらの事だが……凄い人混みだな」

「そうだね! なんでこんなに人が多いんのかな? わかるー? 灰谷ー」

「……私に振るのか……うんと、……日向市に神社が無いからだよ。いや、実際には合ったらしいんだけど15年前に神主が謎の失踪を遂げて。その上なにやら囁き声や呪詛がするとかで次の神主も決まらず廃れたらしい」

「へえー! ミステリーだねー。肝試しの舞台にピッタリ!」

「……ところで早く並ばないか? 寒くてたまらん」



 ◇一年四季ヒトトセ シキ

「うおりゃー!」

 無駄極まりない大声を上げて、ヒナタはおみくじを開封した。そしてがっくりとした表情と声を出す。隣で同じく根古御坂ネコミザカも同じくがっくりとした表情と声を出す。

「……また微凶~~?」

「あたしはまた微吉だにゃ!」

「……ならまだチャンスはあるって事だよね! 待ってろよー、大吉!」

「負けないにゃ!」

 そして再び無駄極まりない大声でおみくじを売っている店に突進した。

 残された私は手に持ったおみくじを開封しながら呟く。

「……おみくじって、競技じゃないわよね?」

「そうだな」

「そうね」

「……って言うかいい加減に止めろ! 周りの人に迷惑だろ!」

 隣に居るクラスメイトの八崎ヤツザキくんと哭搭コクトウさんが同意し、狗神クガミくんがヒナタと根古御坂を止めに言った。

 それを眺めながら開封したおみくじを見る。

「……あ、大吉」



 ◇覇峰真生ハミネ マオ視点

 バスから降りた所でサンダースが話しかけてきた。

「そう言えばハミネ。トーヤさんとキョウカさんはどこに言ったんですか? まさかドラマとかである、カケオチですか?」

「気軽に駆け落ちとか言うな。横で巴手が挙動不審になっただろ」

「oh,それは失礼!」

「謝る気無いのかお前は。まあいい。八崎響歌は大晦日の朝に出てったぞ。多分、掃除を手伝うのが嫌だったんだろうな。……矢神は、」

 そこで私は言葉を切った。話して良いかどうか迷ったからだ。

「トーヤは?」

 興味津々と言った表情のサンダース。仕方なく私は言った。

「矢神は、昨日から墓参りに言ってる」

「ハカマイリ? 誰か死にましたっけ?」

「正確に四年前だがな」

 四年前。矢神が十指を脱退した年。

「一体誰なんですか?」

「さあな。私もそこまでは」

 これは本当だ。私はあいつが誰の墓参りに行くか全く知らない。墓参りの当日には必ず開けておくから大切な人間だったらしいと言う事は解るが。会話を打ち切るように言う。

「……とりあえずさっさと終わらせよう。いつまでも外にはいたくないからな」

「同感です、覇峰さん。あ、ところで」

 十字架を背負い直しつつアリスが首を傾げながら私に言う。

「カケオチ、ってなんですか?」

「からあげのことー?」

「違うよかきあげだよ!」

 双子がアリスの質問に便乗する。

 ………………どうしろと?



 覇峰がアリスの質問にどう答えるか困窮しているその頃――。

 同日。どこかの国のとある岬にて。

「……ここに来るのは一年ぶりだな」

 黒いコートをたびなかせながら男――矢神統夜は呟く。

 そして手に持っている色とりどりの花束を、目の前の小さな墓石の前にそっと置いた。そして手を合わせ黙祷する。

「……」

 しばらく黙祷した後、矢神統夜は立ち上がる。

「またな、アイ」



 ◇美端西姫ミハタ ニシキ視点

「……やった、大吉。姫はどうだった? なんか微妙な表情だけど」

「……微吉だったわ」

「あー。だから微妙な表情なんだね。この神社、変な物が混じってるからねー。で、琥金ちゃんは?」

「甘食です!」

「……甘食?」

「はい、甘食ですっ」

「ちょっとみせて。……本当に甘食って書いてあるわ」

「……もう吉も凶も関係なくなって来たわね」

「そうだねー。あれ? にっしーはどこに――」

「ハニーィィィィ!」

 聖がそう言いかけた瞬間、人ごみを突き抜け馬鹿が現れた。

「あ、居た居た」

「今年初めのデレをぼくにく「永眠しろっ!」ぴぽ!」

 羞恥心を無くしてるとしか言い切れない奴の行動にいつも通りあたしはブチキレ、

 いつも通り奴は吹っ飛んだ。


 ◇御手洗断悟

「相変わらず凄い人の数だな」

 人の波に押されつつ俺が言うと隣の唐崎がいつも通りの飄々とした表情で答えた。

「日向市には神社が無いからね。賽銭箱にたどり着くのに時間かかりそうだね」

「……げ。……まったく早く終わらないかね?」

「そうね。いっその事全員消滅してくれたら良いのに」

 郡山も言う

「物騒な事ほざくな」

「……苦労してるなあー御手洗。団子食べるか?」

「……団子は嫌いだ」

「なあなあみたらしだんごー。あのおっさん見るからにズラだよなー。ちょっと剥いできて良いか?」

「やめろ緋村ヒムラ。そのおっさんも髪が無い事を気にしてるだろうから、下手にその心をえぐるな」

「ほーい」

「……断悟、金を忘れてしまった。貸してくれ」

「……いいけど。返せよ」

「ああ、十倍にして返す」

「そこまでは要らん」

「ねえ御手洗さん」

「……ん、どうした? 春日」

「御手洗さんってこの前、お勉強会やったんですよね……? なんで私も呼ばなかったんですか? もしかして私の事嫌いなんですね?」

「お前の家の電話番号知らなかったんだよ。携帯買ったら電話番号教えてやるから」

「! 本当ですか?」

「……? 本当だが」

「こらそこー。恋人居ない歴=年齢の僕には目に毒だからラブらないで」

「誰がラブってるだ唐崎」



 同日日向市。ビルの屋上にて。


「ノワールが恐れて居た女は居なくなった」

「……」

「ついでに管理人もいない」

「……」

「動くなら――今夜、だよね?」

「……多分な」

 赤いコートの女に黒いジャケットを着た男はゆるりと答えた。頬を膨らませる少女。

「煮え切らないなあ。慎重になるのも大概にしてよ」

「……軽すぎるのも問題だがな。……まあ良いだろう。今夜我達は、払魔師エクソシストの住処を叩く」

「待ってました! で、それまで何すれば良いの?」

「……とりあえずじっとしていろ。世の中には理不尽がそこらに転がっているからな。何が起きるか解らん。備えあれば憂いなし、とはいい言葉だ」

「解ったよ。今夜、だね?」

「ああ。今夜だ」

「じゃあそれまで寝てるね?」

「……構わん」




 ???

「にくにくにくにくにくにくにく~。なまにくほしにくひきにくぎょにくぎゅーにくぶたにくばにくよーにくとりにくじんにくはむべーこんすてーきはんばーぐ♪ にくにくにくにくにくだらけ~」

 無理やりにリズムも合わせたようなメロディーが、寂しく夜を過ぎる。

 声の主がどういった風貌なのかは解らない。何故なら声の主は雨も降っていないのに真っ白な雨合羽に身を包んでいたからだ。背の低さと声の質で少女とは解る。

「にくにくにくにくにくにく……」

 不意に少女の声がぐう、っと言う音に遮られ止まる。

「……おなか、すいたなー。よーし、ゆーごはんだー」

 そう言って少女は背中に背負った人が二人入れそうな・・・・・・・・・バックを下ろした。

 そしてジッパーを開け、中からラップに包まれた肉を出す。片方の端は棒きれ、もう片方の先端は五つに分けている。

 迷わず少女は五つに分かれている方からかぶりついた。もぐもぐと咀嚼しつつ、少女はバッグを背負い直し、歩き始めた。

「つぎはどんなところかなー。にくがいっぱいあったら幸せー」

 肉を咀嚼しながら呟く少女。それに答える者はいない。ただ少女の足音が聞こえるだけだった。




 悪魔達が朝霧荘に強襲するようです。そのシーンを書くかは現時点では不明。

 何者かが日向市に接近中。

 八神統夜の過去は今現在執筆中。さていつになるやら。

とりあえず次回の予定。

 2月14日。

 the next title

 short2 Valentine's Day.

 12月こそは二回最新……!




 ~訂正情報~

 八神統夜の脱退を四年前、破壊殲滅ブレイカークラッシャーによる人外計画の殲滅を二年前に変更。

 あと巴手の名前をちょっと訂正。謎子ナゾコから菜野子ナノコへ。ハテナのこ。

 評価、感想、批評、質問、助言、要望等、待ってますよー。

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