7→8番外とある吸血鬼の出奔
7Bのあとがきに書こうとしたけどなんかおまけっぽくなるので仕方無く記念すべき二十話に。計画性が無いなあ、自分。ちなみに最新されたと思った方、すいません。これは番外です。
いよいよ肌寒くなり、冬が到来し始めた日向市。
その東側、日向市と隣合わせの街の境。そこに朝靄の中、ぼくとモアは佇んでいた。
「ううっ、さぶさぶ。なんでこんなに寒いのよ~。シンワ、何かあったまるような物持ってない?」
「持ってませんよ。と言うか寒いのが嫌ならどっか暖房が利いた店に入れば良いじゃないんですか」
「嫌よ。旅立つ雰囲気にならないじゃない」
「いや、旅立つのに雰囲気は必要ないと思うんですが」
「必要よ。何言ってるの?」
「……まあ良いです。で、これからどこの国に行くんですか?」
「んー。そうね。アメリカあたりかしら」
「東、ですか。漠然としてますね」
「別に良いでしょ? どうせワタシ達の旅に終わりは無い。だから目的地も無い」
「……まあ、確かにそうですが」
「解ったのなら良いわ。さて、行こうかしら」
そう言ってモアは歩き出す。ぼくもそれを追う。
「そう言えば、シンワ。聞きたい事が有るんだけど」
そう言いながら顔を後ろに向ける。先程までそこにはモアの知り合いである死神が居た。
「なんですか?」
「メリーの話、どう思った?」
「……ああ、何故死神さんがこの世界に止まっているかと言うと一目惚れしたからって話でしたっけ。……どう思ったってどういう意味ですか?」
「その話を聞いた時、シンワはどう思った? 気持ち悪いと思った? それとも変な話と思った?」
「そうですね。気持ち悪いとは思いませんでしたよ。ただ、凄いなあ、と」
「凄い?」
「はい。死神さんにとって、冥府って言うのは家みたいな物なんですよね。その家を捨ててまで止まっているのは純粋に凄いと思いますよ」
そう言って、ぼくは微笑む。
「ま、僕達の世界じゃ、駆け落ちとか家出とかそんな物で処理されそうだけど」
「……。確かシンワってメリーが片思いしている百棟弧赤って子と同じ高校に通ってたんだっけ?」
「はい。と言うか元クラスメイトです。何度か話した事もあります」
「ふうん。で、どんな子だった?」
「……。……一言で言うと善人、ですかね」
「善人?」
「進んで人を助けるんですよ、彼。打算も無く、下心も無くただ純粋に単純に人を助けるんです。……ああ、確かそれで去年階段から突き落とされたらしいですよ」
「へえ。凄い人ね。クラスメイトにさぞかし人気あったんでしょう」
「ええ。……一部を除いて」
「一部? なに、中には嫌った人も居たの?」
「はい。あの献身的な態度が怖い、とかそんな理由ばかりですが」
「ああ。ま、確かに、ね。世の中には様々な人間が居る物よ。――シンワ。アナタがこれからの旅で様々な事を学ぶことになるわ。様々な人間を、様々な思考を、様々な悪意を、ね。心して置きなさい」
「はい。解りました、モア」
「何でか話がずれたわね。ま、とりあえず上手くいくように祈りましょう。メリーの事は、勿論、ワタシ達のこれからの旅の事もね」
「……そうですね」
そう返答しながらぼくは後ろを見る。十七年過ごした街が見えた。静かにぼくは呟く。
「……さようなら」
モア・レインレイテイア、結木 森和、秋の終わり頃に旅立つ。よって今後の登場予定は未定。
ついでに8Aもどうなるやら。まだ完璧には決まって無いんですよねえ。時間かかりそうです。




