表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/40

7Aハロウィンオブエブリデイ

祝、PV4000&ユニーク2000!来てくれた全ての人に感謝!



 ◇神社仁カミヤシロ ジン視点

 10月30日。俺は一人の客とカウンターを挟んで口論していた。

「だからトマトアイスは無いのか!?」

「ねえよ! アイスクリーム屋行け! て言うか喫茶店にそんなマイナーなアイス期待する方が間違っている!」

「バカな! トマトアイスがマイナーだと……!?」

「マイナーだよ! 現に俺はお前に聞かれるまで知らなかった!」

「なん、だと……! くっ、なら教えてやろう、トマトアイスが如何に素晴らしいかを!」

「――先生」

 白熱する口論を打ち破るように女が現れた。そして俺と口論していた男の鳩尾を容赦なく殴る。

「ぐほ!?」

 苦悶の声を上げる男。女はそれを無視し、静かに言う。

「そろそろ約束の時間です。早く御用意を」

「……ちょ、ちょっと待ってくれ! 今私はこの店の主と交渉をしているんだ!」

「わたくしには決裂しかけているように見えましたが」

「これから逆転する所だったのだよ!」

「……解りました。ですが約束は約束です。急いでください」

「痛い痛い痛い! ちょ、耳を引っ張らないでくれ!? 凄く痛い!」

「問答無用です」

 女に耳を引っ張られ、ドアに連れ出される男。


「……まったく」

 俺はため息を吐く。

「大丈夫か?」

 近くで皿を拭いていた玄狼ゲンロウが心配そうに話かけてくる。

「ん? ああ……大丈夫だ」

 その声に返答し、俺は椅子に深々と腰掛けた。

 カラン、とドアに付けた鈴がなる。

「よう」

「……華葵か。何しにきた?」

「何しにきたとは酷いな。コーヒーを飲みに来たんだよ」

「じゃあ一番高いコーヒーでいいな」

「一番安いコーヒーよろしく」

「……チッ」

 舌打ちし、俺は注文された飲み物を淹れる。

 数分後。出来たコーヒーを啜りながら華葵は今日来た理由を言う。

「明日はハロウィンだよな」

「ああ。そうだな」

「気を引き締めろよ」

「は? なんで」

「ハロウィンは家を回って菓子を貰う行事だ。つまり、お前の喫茶店にも近所の悪ガキが来る確率があるのさ」

「……成る程。そう言う事か」

「そう言う事だ。ま、菓子っても別に飴玉とかで良いだろ」

「まあ確かにな。解った。肝に命じておこう……。と、そうだ華葵」

「なんだ」

「明日の夕方、一緒にレストランにでも行かないか?」

「……デートの誘いか? だとしたら下手だな」

「いや、デートじゃない。姉貴がこの前持ってきたチケットにそのレストランの割引が有ってな。何故かペアじゃないと駄目らしいんだ」

「変なレストランだな」

「まあな。とりあえず玄狼や月架ゲツカでも誘おうかと思ったんだが、玄狼はなんか住んでるアパートのイベント準備に忙しいらしいし、月架は誘ったら何故か挙動不審になったし……他に心当たりも無いんだ」

「……ん? 月架の場合は問題ないだろ」

「いや、ある。やたらと顔が赤いし熱も有りそうだったんで無理矢理休ませたんだ。最近風邪とかが流行っているだろ?」

「……不憫な奴め」

「ん? 何がだ?」

「いや、なんでもない。……まあ、大体の事情は解った。明日の夕方だな……どこに集まればいい?」

「南側の日向デパートの前。名前は――bouquetブーケ catキャット……だったかな」

「花束の猫……ね。解った。じゃあ明日10月31日午後6時に日向デパートの前の噴水に集合……でいいか?」

「ああ」


 10月31日。AM7:00

 とある高校生の玄関にて。

「先輩ー! 今日は10月31日だからハロウィンですよね! と言う訳でとりっくおあとりーと! あ、別にお菓子は要りません! と言うかむしろ拒否! 先輩に悪戯するのが目的ですから! ……うふふ、先輩にあーんなことやこーんな事を――」

「近所迷惑だ。黙れ」

「へぶっ!? 先輩、なんですかこれ!?」

「見て解らないか? 煎餅だ。もう一つやろうか?」

「えー。私は先輩への悪戯の方がいいんですが――」

「……今なら俺のかじりかけの煎餅とちっちゃい頃の写真を」

「欲しいです欲しいです! 早くかじりかけの煎餅と先輩のぷりてぃな子供の頃の写真を! 早く私の胸に!」

「……ほらよ」

 パサリ。

「……きゃー!? なんなんですか、このちっちゃく可愛らしい先輩は!? 鼻血が出そうになりましたよ!? どんな核兵器ですか!?

……そしてこのちびっ子先輩が抱いているイワトビペンギンのぬいぐるみが憎い! 出来る事なら、いえ変わりたい! そしてこの先輩がかじった煎餅……! 今すぐ食べたい! けど我慢、我慢するのです華葵架恋ハナアオイ カレン! この写真と煎餅は我が家の家宝に永久保存するのです!」

「いや、写真はともかく煎餅は湿気るだろ。あとどんどん変態化してないか? お前……」



 ◇八崎京仁ヤツザキ キョウジン視点


 昼。食堂でうどんを食べていたら哭搭コクジョウが本を読みながら話しかけてきた。


「トリックオアトリート」

「……は?」

「トリックオアトリート」

「……」

「トリックオアトリート」

「いや、トリックオアトリートって……。なんのまねだ? 哭搭」

「菓子ちょうだい。くれないと悪戯する」

「……」

「……持ってない?」

「持ってないと言ったら?」

「悪戯決定」

「……だから黙ってたんだよ」

「……そう」

 そう言って無表情で手に持っていた本を閉じ、たった今の発言なんて無かったように席を立って、食堂を出て行った。

「……?」

 何だったんだろうとオレは首を傾げる。

「ヤッホー!」

 哭搭が去って数秒後。いきなり横から声が聞こえた。視線を向け、おれはため息を付く。

「……なんだ日向ヒュウガか」

「なんだとはなんだー! 声をかけたのが根古御坂ネコミザカでも狗神クガミでも無くあたしだと言う事が不満かー!」

 叫ぶ日向。食堂に居る何人かがこっちを見た。傍に居た一年ヒトトセが日向をなだめる。

「……落ち着きなさいヒナタ。八崎くん。隣、良い?」

 しばらく考え、おれは頷いた。

「……どうぞ」

「あたしもー!」

「却下。他を当たれ」

「酷っ! もうやっつんの非道! 悪魔! 変態! 幼児趣味ロリコン! マザコン! シスコン!」

「……お前は小学生か。て言うかやっつんってなんだ」

「無論八崎の八を取ってやっつん! なに? やっしーとかの方が良かった?」

 おれは日向を無視する事にした。

「で? お前らなんで来たんだ? おれの記憶が正しければお前らはいつも弁当だった筈だ」

「なんで知ってるの!? まさか……ストーカー!?」

「お願いだからちょっと黙ってて、ヒナタ。……噂を聞いたのよ」

「噂? なんの」

「10月31日の今日、食堂のメニューが安くなるって噂」

「……ふうん? 安く、ね……。このうどんはいつもと同じ値段だったが?」

「そう? ならデマだったのかしら」

 そう言って首を傾げる一年。

「……八崎、か?」

「……ん?」

 唐突に横から声を掛けられた。顔を向け、そっちを見る。

 そこに居たのは柊木先輩だった。

「……久しぶりですね柊木先輩。」

「ああ。久しぶりだな」


「……んんー? ……誰さ、しっきー? あの人」

「二年B組の先輩で、華葵ちゃんが熱をあげてる人。知らないの? ヒナタ」

「知っらな~い。アタシ一年生だし」

「それは私も同じよ」


 先輩としばらく雑談を交わす。

 会話が途切れ、ふとたった今一年から聞いた事を先輩に聞く事にした。

「先輩。聞きたい事があるんですが」

「なんだ」

「さっきクラスメイトから聞いたんですけど……。今日は食堂のメニューが安くなってるらしいんです」

 おれの言葉に先輩は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐ何かに思い当たったのか返答した。

「そりゃ多分ハロウィンキャンペーンだ」

「……ハロウィンキャンペーン?」

「ああ。ほら、八崎。今日廊下にガムが置いてあっただろ?」

「……。……ああ。ありましたね、そう言えば」

 おれは何故か廊下に置いてあったガムを思い出す。

「あれ、もらったか?」

「あ、はい。二つ程」

 そう言っておれは学生服のポケットからガムを取り出す。駄菓子屋で見かける、十円で買えるガム。

「そう言うガムにはくじがあるだろ。当たればもう一つ貰えるくじ」

「ああ……そうですね」

「その当たりのくじを食堂のおばあちゃんに見せてトリックオアトリートと言うと百円安くしてくれるそうだ」

「へえ……。やっぱり変わってますよね。この高校」

「そうだな。そのガムも十円とは言え、500個くらい買ったら五千円はするだろし」

「その上百円も損になりますし」

「まあだからこの事を知ってる奴は少ないんだがな」

「……」

 改めておれはこの高校は変だと自覚する。

「よっしゃー!当たり出たぜー!」

 ふと日向の声が響いた。

 どうやらおれが机に置いたガムの一つを勝手に取って破いたらしい。

 どうせもう昼飯のうどんは買っているから要らないのだが……やはり無断で食べられるのは気分が悪い。

 とりあえずおれはテーブルに残ったガムを日向に向かって投げた。

 見事ガムは日向の額に命中。何するのさ~と日向が文句を言ってきたが無視。

 唐突に入り口から声が聞こえた。

「せんぱ~い! どこですか~? 早く私の愛に答えてくださ~い!」

 問わずとも解る。華葵だ。先輩が眉をひそめる。

「……チッ。もう来たか華葵のヤツ。八崎。またな」

「あ、はい」

 先輩は素早く人混みに紛れていった。

 それを見送っていると日向が真剣な顔でおれに言った。

「八崎。頼みたい事がある」

「……なんだ」

「財布を忘れたから金を貸してくれ」

「断る」



 ◇華葵美鈴ハナアオイ ミスズ視点

 ふと空を見上げると赤が混じった黒い空が見えた。

 赤なのか黒なのかはっきりしろと思いながらオレは視線を前に戻す。

「ここがbouquet catか。……ふうん。なかなかしゃれてるな」

「華葵。お前にも綺麗とか汚いとかそう言う感性があったのか」

「……理由は聞かないからぶん殴っていいか?」

「理由を言うから殴るな」

「いや、別に良い。殴らせろ」

「……暴れるならここの料理が不味いとかそんな理由で暴れてくれ」

 勝手な事を言う隣の馬鹿。……オレは流石に料理が不味い程度でキレたりはしない。……多分。

 そう言い返したくなったが面倒なので止めた。

「くだらない事を言ってるな。入るぞ」

 ひらりとジンに腕を振りオレはドアを開けた。

 カラン、とベルが響き、

「「いらっしゃいませー!」」

 ドアの中から数人の女がオレを出迎えた。

 ……メイド服を身に着けて。

 オレは数歩下がり、呆気に取られている仁の肩をポンと叩く。

「……仁。お前がどんな趣味を持っていようがオレはお前の友人だからな」

「……いやいやいやいやちょっと待て!? 俺も知らなかったぞ! bouquet catがこんな店だなんて!? ……クソッ、あの馬鹿姉貴……! 帰ったらシメる!」

 焦ったように呟く仁。その様子からして本当に知らなかったみたいなので、とりあえずオレは放って置き、店に入る事にした。

 ウエイトレスの案内に従い、席に着く。

 とりあえず周囲を見回す。まあ繁盛はしているようだ。

「し、しし失礼します」

 そんな事を思っているとどもりながらウエイトレスがお絞りとお冷やを持ってきた。

「……」

 オレのその顔に見覚えがあった。いや見覚えなんてとんでもない。なんと巴手ハテだ。

「……おい、巴手。なんでお前がここに居る」

「へ……? ……ぴょお!?」

 どうやら気付いてなかったらしい。巴手は変な声を上げ、ねずみのように素早く店の奥に消えた。

 奥から話し声が聞こえる。

「ん? どうしたんだい? 巴手ちゃん」

「あ、あの店長! わたし、今日は帰りましゅ!」

「うん、ナチュラルに噛む所が素晴らしいよ巴手ちゃん。なに? 嫌いな人でも居たのかな?」

「いえ、同じアパートの人です」

「ふうん、そうかい。名前はなんて言うのかな? もし良かったら次その人が来た時に知らせるけど」

「あ、はい。ありがとうございます。……えっと、名前は華葵さんです」

「華葵? ……タケルくん。ぼく用事思いついたから、ちょっとここの指示頼むよ」

「ええ!? ちょ、唐崎カラサキさん! この料理、あんたにしか出来ないんですよ!? 思いついた事は後にしてください!」

「それは、まあ、根性で頑張って? ぼくは愛の為に行くから」

「無理ですよ!?」

 奥から男の叫ぶ声がした。それと同時にコック帽を被った男が奥から姿を表す。

 そしてオレの顔を見るなり一言。

「やあ、マイハニー。なんでこんな所に来たんだい? まさかぼくの匂いを辿って来たのかい?」

「オレは犬じゃねえ。この変質者」

「変質者? ぼくはそんな下種じゃない。ぼくは愛の求道者だ!」

「……なんだよ。その愛の求道者って」

「ふっ、何も知らないマイハニーに教えてあげよう! 愛の求道者とは、ロリコンマザコンファザコンシスコンブラコンなど、様々な形の愛の集合称号だ!」

「つまり変態と」

「……やれやれマイハニーは照れ屋だな。まあいいや。さあこの手を掴んでくれマイハニー。一緒に桃源郷あいのらくえんに行こう!」

 オレは差し出された手を掴む。そして

「とりあえず、吹っ飛べ」

 力任せにぶん投げた。

 変態は宙を飛び、ドアに向かって吹っ飛ぶ。

「うおっ!? なんだこれ!?」

 ようやくメイドショックから回復したのか、ドアを開けた仁が驚きの声を上げる。

「……しまった。強すぎた」

 騒音の中、オレは一人呟く。多分仁はすぐにオレの仕業だと気付くだろう。……アイツの説教、長いんだよな。……よし。

 逃げる。



 ◇矢神統夜ヤガミ トウヤ視点

 華葵 美鈴が窓からこっそり逃げ出したその頃。

 俺は朝霧荘の屋上に居た。

「……」

 手に持っている紙を見る。先程机に置いてあった物だ。

 紙には手書きでこう書かれていた。夕刻、朝霧荘の屋上にて。

 この字面、そして5時でも6時でもなくわざわざ“夕刻”と言う不明瞭な時間を指定する性格。そこから生まれる答えは、あいつ。

 ――不意に風が止んだ。

 それと同時にコツリと固い感触が後頭部に当たる。

「んーと。こういう場合、ほーるどあっぷって言うのかね? いや、トリックオアトリートも捨てがたいな」

「……どちらにしたって俺には通用しないぞ、響歌キョウカ

「ありゃ。ばれた?」

「ばれてないとでも思ったか?」

「いや? 全然」

 とぼけた答えを返す響歌。

 俺は懐かしいその声を聞きながら振り返る。

 振り返った先には何時も通りのスーツを着た女。


 ――奇術師ウイザード八崎響歌ヤツザキ キョウカ


 とりあえず俺は何時も通り人を食った表情を見せる奴に言う。

「まあ上がってけよ。再会の印として菓子でもくれてやるからよ」



 ……ちなみに。

 響歌が俺の後頭部に突きつけた物は水鉄砲だった。……どうやら不審な行動を取った場合、水をかける気だったらしい。



当初のタイトルはハロウィンオブパニックでしたが、パニックと言う程でも無いのでエブリデイに変更しました。

(7/17、手直しと伏線を回収)

今回のおまけはお休みです。

まあとりあえず次回予告~。


次回予告

日向市に二人の悪魔が訪れる。それを追う十字架を背負った少女もまた日向市を訪れた。そして彼女は一人の少年と出会う。


the next title

『クロスオブアリス』

……頑張って最新しよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ