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6A仮想倶楽部

「なー、世界は何で出来ていると思うー?」

 こんな問い掛けが有ったらあんたはどう答える? あ、ちなみにこれは俺が言ったんじゃないからな。言ったのは俺の友人だ。

 ちなみに俺はこう答えた。

「辺り見回してみろ。そうすりゃわかる」

 と。

 んで、他の奴らはそれぞれ自由に答えやがった。

「食料」

 だとか

「知らない」

 だとか

「世界が何で出来ているかって? 快楽さ」

 だとか

「解らない事だらけですよー? この世界は」

 とか、まあ個性的過ぎる回答ばかりだ。

で、これは俺達のそんな日常の一コマ。良かったら見てくれ。


 見上げた空は何処までも高く、澄んでいた。

「あー。すっかり秋だな」

「そうね」

 俺が呟くと、床に寝転がって本を読んでいた郡山コオリヤマが無気力に返答した。そして怠そうに言葉を続ける。

「……で、いつまでそうしてるつもり? 時間は永遠じゃない。有限なのよ? やるなら早くやりなさい、みたらし団子」

「……てめえ、そのあだ名はやめろって前々から言ってんだろ……! 確かに俺の名前は御手洗断悟ミタラシ ダンゴだが、いつもは御手洗か断悟、もしくは御手洗、断悟って言う風に区切れって言ってるだろ……!」

「別に良いじゃない。あたしなんか『かき氷』よあだ名が。名前にこおりが二つ入ってるからってこれは酷すぎない? せめてシャーベットとかにしてくれないかしら」

「文句が有るなら唐崎カラサキに直談判してみろよ。別にあいつは強制してないぞ。変えたきゃ変えろ」

「嫌よ。直談判なんて面倒臭い。第一御手洗。あんただって変えてないじゃない」

「俺の場合は他に付けようが無いって言われたんだよ」

「じゃああたしの時にもそう言うかも知れないじゃない」

「――……あー、確かにな」

「……で? 現実逃避もいい加減にしなさい。今はまだ飛び降りようとしてないけど……そろそろ時間の問題よ?」

 ……現在俺が居るのは日向中学校の屋上(ちなみに放課後)。人影は俺と郡山とそしてフェンスの外に佇む少女の三人。

 簡潔に言おう。俺と郡山はたった今、自殺しようとしている現場に遭遇している。


 ……さて、どうするか。

 先生を呼ぶか? いや、ここは立ち入り禁止になっているからややこしい事になる。この案は却下だ却下。……ん?

「なあ、普段はここに鍵がかかってる筈なんだが。あいつはどうやって入ったんだ?」

「ああそれね。簡単よ。鍵が壊されてたわ。あの子の仕業ね」

 ……ああ。そう言えばさっき扉の前に立った郡山が扉を見て不思議そうな表情になってたな。

 疑問も解消された所で俺は再度考える。

 いや、もう選択肢は一つしかないな。

 俺が助ける選択肢しか。

 決意し、俺は少女に近付いた。

 背後まで行き、ポンと肩を叩く。少女は「ひやうゆ!?」と奇声を上げ、こちらを振り返り、

――落ちた。

「……あ」

「きゃあああああっ――!」

 悲鳴を上げ俺に手を伸ばす少女。俺は慌て身を乗り出しがしり、とその手を掴んだ。

「ぐっ……!」

 重力と重量が手に伝わる。一瞬放しそうになったが、ぐっとこらえ、足を踏ん張った。

 少女を見る。少女は目を瞑っていてピクリとも動かない。どうやら気絶したようだ。

 ビキリ、と腕が軋む。数分も持たないと俺は思った。

 とりあえず郡山に助けを乞おう。

 そう思い、郡山が寝そべっていた所を見る。が、そこには誰も居ない。視線をずらし屋上唯一の入り口を見る。ここに来た時確かに閉めた筈なのにドアは何故か開いていた。ここから導き出せる結論は唯一つ。郡山の奴、逃げやがった。

 ぎしり、と手すりが軋む。やばいな。早くなんとかしなければ。

 俺が焦っていると、入り口から声がした。

「おーい、断悟~。さっきすれ違った郡山から聞いたんだけど、お前食べ物持ってるんだって? 本当か?」

「……この状況を見てよくそんな台詞が吐けるな、壱木イチギ

 俺は首を捻り、声がした方を見た。そこにいたのは黒い学生服を来た童顔の男。

 ……なるほど。こいつは結構早く来るからな。郡山もそれを見越してこいつを呼びに行ったんだろう。……それよりもお前が手伝えよとツッコミを入れたい。

 とりあえず声をかける。

「手伝え壱木。手伝ったらなんか買ってやる」

「本当か!?」

 キラン、と目を光らせる壱木。俺はもう一声かける。

「ああ本当だ。なんならコンビニのデカプルパフェプリン(¥444)でも良いぞ」

「何をすればいいんだ? 早く教えてくれ!」

「よし、この女を引き上げるの手伝え」


 数十秒後。俺は息も絶え絶えに寝転がっていた。傍らには少女。

「なぁー断悟ー。このうぐいすパン食っていいか?」

「ふ、ざ、け、ん、な」

 息も絶え絶えだから喋るのも辛い。俺はなんとか体を起こし、壱木の手から本日のおやつ代わりのうぐいすパンを奪い取る。

「んで? こいつ誰なのさ。断悟の彼女?」

「んな訳無いだろ。彼女居ない歴=年齢の俺に」

 ……言ってて悲しくなってきた。

 ため息を吐き、俺はうぐいすパンの袋を破る。そしてうぐいすパンをかじりながら、後ろを見る。

「……で、いつまでこっちをみているつもりだ。唐崎」

「おや。気付いていたのかい?」

 振り返った先。そこには学生服を着た長身の、銀縁眼鏡をかけた男が立っていた。

 唐崎刀牙カラサキ トウガ。俺の友人で有り、郡山の幼なじみで有り、“自称”快楽求道者で有りそして……“仮想倶楽部”の部長で有り創生者。

「まあな。と言ってもお前がいつ来たかしらん」

「君が自殺しようとしている少女を引き上げている所からだよ」

「……なんで助けなかった?」

「助ける? 誰がそんな事をするのかな? 助けると云うのはほら、何らかのメリットが無ければならないんだよ。壱木君だって君が奢ってくれると聞いたからこそ手伝った。これが人として当たり前の行動だ。そうだろう? 偽善者君」

「……確かにそうだが……」

 ちなみに話題に上った壱木はぱくぱくと持参してきたトンカツパンを食べてやがる。

 俺の目の前に居る男を睨みつける。唐崎はじっとこっちを見ている。俺はその視線を真っ向から受け止め、言った

「……やっぱりお前は最悪だ」

「誉め言葉として受け取って置くよ」

 俺の言葉に唐崎は肩をすくめ、言う。腹立たしい事にその動作は似合っていた。

俺は舌打ちをし、うぐいすパンにかぶりついた。


 俺がうぐいすパンを食べ終え、壱木がトンカツパン三個目を食べ終え寝転がり、唐崎が某10円で買える菓子(コーンポタージュ味)をかじり始めた時、郡山は帰ってきた。

 でっかい荷物を引き摺って。

「……はあ。ただいま」

「お帰り氷華ヒョウカ。やけに帰りが遅いと思ったらぴよりちゃんを連れてきたんだね?」

「……ええ、そうよ。道連れにしようと思って。どうせあんたの事だからあたしが逃げられないように何らかの手を使って阻むんでしょ?」

「うん、正解。伊達に僕の幼なじみをやってる訳じゃないね」

「ええ、そうね」

 疲れたように呟き、郡山は荷物を横に置いた。数秒の間の後、むくりと起き上がる荷物。そして言う。

「……むいー。もう少しで憎きあのきょうとーのカツラが取れたのにー」

 ……この見た目小学生、言動も小学生の女の名前は緋村ヒムラぴより。こんなナリだが俺達と同じ三年だ。

 きょろり、と俺を見る緋村。そして呟く。

「んんー? みたらしだんご、その女はなんだー?」

「そのあだ名は止めろ緋村。殴るぞ。……で、こいつか。こいつは空から降ってきたんだよ。どうやら俺は勇者らしい」

「郡山ー。みたらしだんごが馬鹿になったー」

「放って置きなさい。馬鹿につける薬は無いし、馬鹿に近づいたら馬鹿が移るわ。放って置くのが得策よ」

 そう言って冷ややかな眼差しで俺を見る郡山。

 ほんの些細な冗談を吐いただけなのに、何故そんな目で見られる。

 パンパン、と唐崎が手を打ち合わせ、言う。

「んん、まあ、御手洗君が馬鹿になったのはさて置き、始めようか。――部活動」



 仮想倶楽部。

 俺達がここ日向中学校の屋上に集まる理由。

 ちなみに何をするかと言うと駄弁る。

 それだけでクラブになるのか? と思った人。

 その感想は正しい。

 クラブにはならない。

 当たり前だ。何故なら仮想倶楽部はクラブと名乗ってはいるがクラブでは無い。ただの集まりなのだから。



「さて、今回話す事は学校名物の七不思議だ」

「……学校名物ねえ。確かに七不思議は学校の特産品だが……。日向中学校に七不思議なんてあったか?」

「無いよ。花子さんも増える階段も校長像の目からレーザービームが出ると言う噂も無い」

「じゃあどうやって七不思議を話すんだ」

「簡単だよ。日向高校の七不思議を話せばいい」

「……まあこの町には中学校は一つしか無いし、高校も一つしか無いから自然とそうならざるを得ないが……。だが日向高校に通ってないお前が日向高校の七不思議を知ってるのか?」

「知ってるさ。僕をなんだと思っているんだい?」

「変態だろ」

「……快楽求道者さ。あらゆる快楽を求める者。そのためならどんな役に立たない知識でも覚える。……故に日向高校の七不思議を知る程度、造作も無い」

「そりゃ凄いね。んで? 能書きはいいから早く七不思議を教えてくれ」

「ふう、せっかちだね。そんなに興味が湧いたのかい?」

 いや、ただ単に早く帰りたいだけだ。そう思ったが声には出さない。

「まあ僕は人を焦らす趣味は無いし――さっさと話すとしよう」

 そう言って唐崎は人差し指を立てる。

「日向高校七不思議その1。爆走する女子高生」

「は? 爆走する女子高生?」

「うん、どこが七不思議なんだって反応と表情ありがとう。僕も人伝に聞いた話なんだけどね。今の日向高校の名物の一つらしいよ」

「名物……って事は毎回やってるのか……」

「そうらしいよ。とある先輩を追いかけてるって話だけど。まあいいや。で、その2」

 そう言って中指を立てピースサインを作る唐崎。

「爆発する調味料」

「……爆発、する調味料……?」

「ん。焦がしチャーハンの話か?」

「全然違う」

 いきなり割りこんできた壱木の言葉につっこみを入れて、俺は質問する。

「とうとう狂ったか唐崎」

「狂ってなんかいないさ。誰かが作ったマヨネーズが何故か爆発したらしい」

「……漫画みたいな話だな……」

「そうだね。その3。善人さん」

「は?」

 俺は呆けた声をあげる。いやなんだ善人さんって。花子さんの仲間か?

「ん、これは七不思議って言うより噂なんだけどね。とある小学生が車に轢かれそうになった時、日向高校の制服を着た人が助けてくれたんだってさ」

「その人はどうなったんだ?」

「助かったらしいよ。何故か車が真っ二つになったらしい」

「……そっちの方がはるかに不思議じゃないか?」

「まあそうだね。けどほら、今話してるのは日向高校の話だから」

「……まあ、確かにそうだが」

「その4。これはとっておきだよ」

「とっておき?」

「うん。一番謎めいている話さ」

「今までのも色んな意味で謎めいてたが」

「まあ聞きなよ。その4。見えない教頭先生」

「……どういう意味だ」

「日向高校には教頭先生が居ないって事さ。いや、居るらしいんだけど姿を見た人が居ないんだ。教頭が受け持つ資料もいつの間にやら机に置いてあるらしいし」

「その教頭は忍者かなにかか?」

「馬鹿だね。忍者がいる訳ないじゃないか」

「……言ってみただけだ」

「そうかい」

 そう言ってバックを漁る唐崎。しばらくして知恵の輪を取り出し、いじり始めた。

「? おい、唐崎。他の七不思議はどうした」

「どうしたもこうしたも。もう無いよ」

「……は?」

「だからもう無い。これで打ち止めお終いだ」

「いや、じゃあ七不思議じゃ無いじゃないか」

「当たり前だよ。第一七不思議その物だって7つ全部言うと呪いだかなんだかにかかるって事で実際には六つだし」

「まあ確かにそうだが……」

「それに」

 俺の言葉を遮るように唐崎は言う。

「日向高校は不思議の巣窟だ。これからも増えてくる確率が高い。だから不思議な話が七つも無いなんて怒らなくてもいいよ」

「……そんな所に俺達は来年通うのか……」

「仕方無いじゃないか。日向市には日向高校しか無いんだから」

「そうだけど……な」

 俺はため息を吐いた。ふと、自殺未遂事件の女を思い出した。

「そう言えばこの女はどうすればいい?まだ気絶してるが」

「ん? 僕が連れてくよ」

「言い訳とか考えてあるのか?」

「ああ問題ない。貧血で倒れていたって先生に言っとくつもり」

「そうか」

 相槌を打つと、唐崎は立ち上がり、少女を抱え慌ただしく階段を降り始めた。演技が上手い奴だ。降りる唐崎を見ながら俺はそう思った。やがて階段を下り終えた唐崎から目を離し、辺りを見回す。郡山は本を読んでいて、緋村はキャンデーを食べていて、壱木は寝転がっていた。先ほどから会話に加わらなかった理由はそう言う事らしい。

 俺は鍵が壊れたドアに向かう。部長である唐崎は今は居ない。いや、あいつの事だからもう今日は帰ってこないはずだ。

 ドアを開け、階段を下りる。

 とりあえず帰って寝るか。そう思った。

 ――その時俺は知らなかった。明日の放課後の集まりに自殺しようとしていた少女が加わる事を。



 登場人物紹介


御手洗断悟ミタラシ ダンゴ

日向中学三年生

凡。あだ名は「みたらしだんご」。


郡山氷華コオリヤマ ヒョウカ

日向中学三年生

無気力を目指す少女。けれどいまいち無気力になれない今日この頃。あだ名は「かき氷」。


壱木黒彦イチギ コクゲン

日向中学三年生

暴食少年。なにかと物を食べているが太らない女の人が羨ましがる体質。あだ名は「胃袋」。


唐崎刀牙カラサキ トウガ

日向中学三年生

快楽求道者。様々な快楽を求めるため、今日も色々なんかする。あだ名は無し。


緋村ヒムラ ぴより

日向中学三年生

疑問追求者。様々な事を疑問に思い、周囲の人に問う。外見、行動は小学生。あだ名は「ひよこ」。


自殺しようとした少女。(名前はいつか出る……筈!)

日向中学三年生

ネガティブにネガティブを重ね足したくらいネガティブ。




と言う訳でやっとこさ最新。


次回予告

日向市の西にある朝霧荘。そこには破天荒な人間が住んでいる。これはその管理人と住人の日常の一つ。


the next title

「朝霧荘日常録」

期待せずにお待ちを。



おまけ

西姫と錦のどつき漫才~


(フェードイン)


「……何よこのタイトル」

「そうだ、そうだ!ここは錦くんとハニーのイチャイチャ☆ トークにするべ――」

ドゴ。(ボディブロー)

「――ぎぼヴるっ!?」

「それはより却下。……なんでこいつと2人っきりなのよ。さっさと終わらせて帰りたいわ」

「そ、そんな言葉も素敵だよハ――」

ドガア。(かかと落とし)

「――ニふらむ!」

「さっさと終わらせたいからもう何も言わないで。……聖曰わくこの紙に書いてある事を言えばいいのね。えっと、『感想、批評、質問、助言、要望等、待ってます。PS。登場人物紹介全集に容姿を追加しました。ついでに設定も何点か。よろしければ見てください』。……その後に『か、勘違いしないでよ。べ、別に貰っても喜ばないんだからっ!』とか書いてあるけどこれは無視ね」

「なっ! 僕の仕掛けた罠に引っかからないとは……さすがハニー、冷静だ……! さあ、僕と一緒に同じ墓に――」

ゴッ、ドカーン。(アッパー)

「入りたければ一人で入れば? もう帰っていいわよね? じゃ」

「そ、そんな言葉も素敵だよハニ……ぃ」

ガク。


(フェードアウト)


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