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第28話『ピクニックで世界を釣り上げろ!』

今日は楽しいピクニック!!


はい。どうもタツヤです。


別にイカれた訳じゃないです。


ただ、アンちゃんがピクニックに行ってみたいという事で、ピクニックエリアに遊びに来ているだけです。


アァ、タノシイナァ!


「何よ。随分と不満そうじゃない」


「いや、別に不満は無いんですけどね?」


「じゃあ何よ」


「あー。その。メンバーが多いなぁと思いまして」


俺は、小高い丘の上で、アンちゃんとミティアちゃんが背中に乗っているのを支えながら、胡坐をかいている足の上に乗っているエリスお嬢様を支えつつ、周囲を見渡した。


華やかな柄の魔法のシートに、お茶の道具や、お菓子やら小物を広げているのは第七異世界課の方々で、いつもの様に楽しそうに微笑みながら準備をしている。


そして、俺たちのシートを挟んで反対側には、我らが第三異世界課のメンバーがシンプルな青色のシートを広げ、どこから持ってきたのか四隅にデカい石を置いていた。


「うっし。準備完了だ。おーい。タツヤ。釣りに行こうぜ!」


「あー。了解。と言いたいところなんだが、みんなは大丈夫か? 待ってても良いけど」


「釣り? 釣りって何ですか?」


「私も知らない」


「同じく、知りませんわ」


「あー。なるほど?」


「なんだ? ガキども。釣りも知らないのか。しょうがない。今日は俺が教えてやろう!」


「おー!」


「何が教えてやるよ! 偉そうに!」


「よろしくお願いします」


歩き出したチャーリーに付いて、三人は俺から飛び降りて走っていった。


ようやく肩の荷が下りたと思ったのもつかの間。


俺たちのシートの正面にやたら豪華なシートなのか、絨毯なのか分からない物を広げていた女神様方が移動してくる・


「タツヤさん。本日はお招きいただきありがとうございます」


「いえいえ。むしろお呼び出ししてしまい申し訳ございません。お忙しい所に」


「お気にせずに。本日は部署の枠を超えて、楽しみましょう」


「はい!」


俺はマザーの言葉に姿勢を正しながら、頷いた。


そして小さく手を振っているラナ様を見送り、何故か俺のシートに残った物を見る。


「何か用ですか?」


「ちょっと! タツヤさん!? 最近私の扱いが酷いと思うんですけど!」


「あぁ、話は終わりですか。では俺はチャーリーと魚釣りに行くので」


「いやいやいや!! 全然話は終わってませんよ!?」


立ち上がろうとした俺の服を掴み、女神らしい威厳などどこかに投げ捨てて、メリアさんは地面を転がる。


何という哀れな姿なのだろうか。


「女神メリア! なんですか! その姿は!」


「ひぇ。マザー。これは違うんです! タツヤさんが私を信仰しないから!」


「人の子に罪を押し付けるなど! こっちに来なさい! 今日という今日はその腐った精神を叩きなおしてあげます!」


「いーやー! 助けてっ! 人の子ら。お局女神に、いびられる!」


もはや呆れて物もいえない。


第七異世界課の人たちも、何とも言えない顔をしていた。


実際、第七異世界課が改革しなくてはいけないのはこの女神なのでは?


他の要素に手を入れている場合じゃないだろう。


アレが一番の害悪に見える。




とまぁ、気づいてはいけない真実に気づきそうになっていた俺だったが、とりあえず先ほどの事は忘れて川に向かうのだった。


川では既にチャーリーが釣り講座を終わらせたらしく、それぞれに釣り竿を渡して、釣りをしている。


「どう? 楽しめそう?」


「はい! 結構難しそうですけど、頑張ります!」


「私が一番になるからね!? タツヤ。待ってなさいよ?」


「これに必要なのは、単純な力ではなく、タイミングですね」


やたらと真剣な顔で不穏な言葉を話している三人をスルーして、俺はチャーリーに話しかけた。


「あの子たちは何の話をしてるんだ?」


「あぁ、一番釣りが上手かった奴がお前と夜を過ごすらしいぜ」


「……また面倒な約束を」


「良いじゃないか。可愛い子供との約束だろ。というか、異世界でも子供とそのくらいの約束はしてただろ」


「いや、まぁ。今まで話してきた子たちはみんな普通の子供だったから」


「別にあの子たちも普通の子供だろう?」


「そうですよ。タツヤ。まだ甘えたい年ごろなんですよ。可愛いじゃないですか」


「お前たちの言ってる子供と、あの三人は大きく乖離しているという事だけ伝えておこう。それ以上は何を言っても無駄だからな」


「はぁ?」


「またよく分からないことを」


「タツヤ」


「なんだ。アーサー」


「僕は子供に好かれている優しいタツヤが好きだよ」


「お前に好かれてもな」


「えぇ!?」


非常にどうでも良い事を訴えてくるアーサーを放置し、俺は川に向かった。


要するに釣り対決に勝てば良いのだろう?


いつもの事だ。


「俺も参加するぞ」


「えー!?」


「またズルするんじゃないですか?」


「するわけないだろう? 子供相手に。ま、俺が参加する事で負けるのが怖いっていうのなら、俺は参加しないよ。向こうで第七異世界課の人達とお茶でもしてるかな」


「むー!」


「良いわよ! 参加しなさいよ! 絶対に負けないから!」


「よし」


参加さえしてしまえば、こっちのものだ。


何せ夜一緒に過ごすとかいう曖昧な要求を呑むと、同じ布団で寝るとか、お着替えをさせてあげるなんてのは序の口。前は風呂の中に突撃してきて、体を洗えと言った挙句にその光景を写真で撮ろうとしたからな。


このままでは俺が社会的に死ぬことになる。


なので、子供相手だろうが、遠慮はせずに全力でその企みを潰す!


まぁ、釣り経験は俺の方が豊富だし。


最悪はガチンコ漁という裏技もある。


無知な素人の釣り人には負けんよ。




という訳で釣り対決が始まった訳だが。


まぁ冷静に考えてもらいたいのだが、釣りなんて素人はどうやっても経験者に勝てんのだ。


エサを付けるのだって難しいし、釣りあげるのにも力はいる。


魚を針から外すのだって難しいだろう。


まぁ、本当はタイミングとか難しいと言いたいが、ここは釣り堀だからな。その辺りは余裕だ。


ふっ。まぁ、初めから見えていた勝負だよ。


「あっ、あっ! タツヤ! 助けて!」


「ほいほい。今行くから竿を抑えてな」


「あぁん。タツヤさんの。ぬるぬるしてて、いやぁん」


「アンちゃん。外でふざけるのは止めてくれるかな? 社会的に死ぬから」


「見てください! 凄い大物が釣れました。もうこれで釣りは完璧にマスターしました」


「おぉ、凄いな。じゃあエサはもう自分で付けられるかな?」


「お願いします!」


「んー。良い笑顔だ」


三人のサポートをしつつ、俺は釣りを続け……。


「タツヤ! エサ!」


「はいはい」


「いやぁん。スカートに針が引っ掛かっちゃいました。タツヤさぁん」


「今わざと引っかけたよね? 俺は見てたぞ」


「スカートの中を?」


「アンちゃんが針を引っかけるのを!」


「タツヤさん。見ててください。私は完璧にタイミングを見極めました」


「ふむ」


「今です!」


「おー。素晴らしい」


「どうでしょうか? zzふふん。完璧でしょう」


「そうだね。流石はミティアちゃんだ」


続け……。


「タツヤ!」


「あぁん」


「タツヤさん!」


つ、続け……。


「おい。タツヤ。そろそろ時間だぞ」


「なにぃ!?」


「お前の釣果は……ゼロか。最下位は確定だな」


「くっ! こうなれば、ガチンコ漁で!」


「タツヤ。生態系の事を考えて、この川ではガチンコ漁は禁止なんだ」


「なん……だと……!?」




結果。俺は敗北し、犯罪者にならない様に、何とか夜の攻撃をかわす必要が生まれたのだった。

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