表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

00 プロローグ

 ある日ルイシャは夢を見た。


 それは、この世界とは別の世界を生きる自分の夢だった。

 その夢のなかでルイシャは 乙女ゲームというものに熱中していた。仕事の息抜きに始めたそのゲームは、疲れ果てた現実を忘れさせてくれる心のオアシスとなっていた。仕事で嫌なことがあったときには、そのゲームの好きな場面を繰り返し再生し癒されていた。


 そのゲームは、魔法学園を舞台に、主人公の少女が恋や友情を育み成長する物語だった。

 タイトルだけ見たときは、巷に存在する数多くの乙女ゲームと同じ系統だと思い、あまり興味を持っていなかったし、乙女ゲームは若い子たちがするもので、自分のようにとっくの昔に青春時代を終えた女がプレイすることに抵抗があった。

 そんな風に乙女ゲームに対し距離感があったが、そんなことは全く気にしないタイプの友人から熱心に薦められ「まぁ、息抜きに少しやってみるか」と軽い気持ちで始めてみることにした。

 その結果、見事にハマってしまったという訳である。


 魔法学園が舞台ということもあり、魔法の授業に参加して経験値を上げることができ、その経験値に応じてルートが分岐したり、ライバルキャラとの友情ルートがあったり、温室を自由に模様替えができ、セットした物によってそこに訪れる攻略キャラが変わったりと、やりこみ要素満載のため飽きが来ないのだ。

 気がつけば、寝る間を惜しんでプレイする日々を送っていた。


(ここは、ゲームの世界なのかしら……?)

 夢から覚めたルイシャは、今見た夢を思い返しながら考え込む。おそらく今の夢は前世の自分ではないかと思った。ゲームに関すること──内容や登場人物についてや、ゲームに対する感想などは結構鮮明に覚えているのに対し、その他の記憶はかなり曖昧だが……何となくそうではないか、と本能的な何かでそう感じた。

 前世の記憶があるということは、その自分は既に死んでいるということであるが、それに関しては他人事のようだった。実際、今ここに在るのはルイシャとして生を受け、ルイシャとして生きている自分であり、前世の自分がどんな人生を生きていても、それは別の人物である。

 しかし、ルイシャは気になることがあった。

 ルイシャ・コルトンという名前には聞き覚えがあった。

 主人公や悪役令嬢ではない。

 ルイシャは、攻略対象者であるカインの元婚約者として登場するのだ。立ち絵すらない名前だけ登場する既に亡くなった(・・・・・・・)令嬢として。

 学園入学直前に亡くなった婚約者を想い悲しみに暮れるカインを、ヒロインが慰めるシーンを覚えている。


 つまり、ルイシャは数年後には死ぬ運命ということである。


 実際、ルイシャは生まれつき体が弱く、度々寝込んでいた。いや、度々というよりも、ほぼ寝込んでおり、ベッド上で生活していると言ってもよい。今だって、高熱で寝込んでいる真っ最中なのだ。


(そんな……まだ死にたくないっ)


 熱で再び意識が朦朧となりながら、ルイシャは心の中でそう叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ