第98話 やっぱきいちゃう?
イリオーネさんが副ギルド長とか。
どうりで貫禄ある筈である。
それでもいてくれるのは、嬉しい。
「さあ、嬢ちゃん、話してくれるか?」
カシミールが促してくる。
「うう。わかりました。とその前に」
ぺこりと頭を下げる。
「忙しい中、時間を作ってもらって、ありがとうございます」
仕切り直して、印象よくしないとな。
「お、礼儀正しい嬢ちゃんだな。なに構わない。情報を聞くのも俺の重要な仕事のうちだからな。特に最重要案件ならなおさら」
カシミールがニカッと笑う。
「だからといって、情報収集と称して、度々外出するのはやめてください。書類が滞ります」
すかさず、イリオーネから突っ込みがはいる。
「何をいう! 俺は自分の仕事をしてるだけだぞ!」
「わかります! 外に出て情報収集してるんですよね!」
ヒースがカシミールに乗っかる。
「ならば、黙って抜け出すのはどうしてでしょうか? やましい事がないなら、私に堂々と行き先を告げてから行ける筈でしょう」
イリオーネが切り返す。
「ヒース! あんたは魔法士なんだから、魔法の研究のほうが重要でしょう。研究室で研究しなさいよ! 外をプラプラしないで!」
「う。うはは。まあ、その話は後でな」
「はは。僕は、アウトドア派で実践派なんだよ。研究はどうもね」
女性陣2人に責められ、男性陣は目を逸らす。
「今はこの嬢ちゃんの話を聞かなくてな」
「そうだよ! しっかり聞いて! ご領主に報告しなくては!」
どうやら、男2人ともに、女子2人に頭が上がらないようである。
女性強し。
「さて、では早速本題だ。嬢ちゃんは、このゴルデバの、いや、この地方の不作の原因が何か情報があるって事だな?」
「はい」
ティティの返事に皆が身をこちらに向ける。
と、目の端でピコリとイリオーネのとがった耳が動く。キュートである。
つい、顔が緩む。
は、いけない。ここが正念場である。
ティティはこのゴルデバの街に来て、まだ日が浅い。そして冒険者として登録したのもしかり。ティティの素性は登録した内容しかわからないに違いない。今までの、そしてこれからの会話の中で、ティティの事を探って来るかもしれない。気を引き締めていかなければならない。
7歳の少女らしく、これだ。
そして開示していい情報、漏らしてはいけないもの。気を付けないと。
「私、ここに来てまだそんなに経ってなませんが、元気がない町だなあって思ったんです。冒険者ギルドの人にも田んぼや畑の育ちがあんまりよくないって聞いてて。私、まだ一番したのランクだし、魔物の討伐はまだ無理だから、薬草の採集の依頼を受けたんですが、ちょっと苦労しました」
「ああ。田んぼや畑だけでなく、森の植物も元気がないからな」
カシミールが同意するように頷く。
「はい。それで、どうしてなのかなあって考えて。それで、植物スライムの事を思い出したんです」
「植物スライム? 初めて聞いたぞ」
「普通のスライムと違うのかい?」
「聞いた事ないな」
「私もです」
カシミール、ヒース、ブリア、そしてエルフのイリオーネでさえも首を傾げる。
そうだろう。魔族が改造した魔物だもの。
「植物スライムは見た目は、普通のスライムとほとんど変わりません。ただ色は緑色です」
普通スライムは、水色のものが多い。
「植物スライムの特徴としては、水中に暮らすスライムで」
そこからスヴァから聞いた事を話した。
もちろん、植物スライムが魔族が作ったもので、開発は中止されて筈などの魔族側の事情は一切話さない。
「なるほどな 水があり、身体が地面についていれば、地面から大地のエネルギーを吸い取って成長するのか」
カシミールが腕を組んで、顔を顰める。
「はい。ただ、一度に吸収するエネルギーはそれほど多くはないようです」
「ティティが言う、植物スライムがいるなら、天災もないのに、不作になるのはわかる気がするわ」
ブリアも顎に手を当て、呟く。
「水が必要で、見つからない場所。とするとその魔物がいる場所は」
こめかみに指をあて、考えをめぐらすヒース。
「湖だね」
ブリアが答えを言い当てる。
「ああ! 私が言おうと思っていたのに、横取りするなんてひどいではないか!」
「うるさい」
うん。ヒースとブリアはいいコンビである。
なんか和む。
「嬢ちゃん」
カシミールが低い声にティティはびくんと身体を震わせる。
「ギルド長の私でさえ知らぬ、魔物情報をどこで知った?」
ああ、聞かれたくなかったけど、やっぱり聞いて来るよね。
さて、気を引き締めて行かないと。
100話まで、後2話。
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