第93話 はあ 白飯がうまっ
「やれやれ。気疲れしちゃったよ」
デルコを昼飯に誘ったが、これから頼まれた鉄製の水筒を作ると言って、店に戻って行った。
職人、食事よりも新しいものを作るほうに比重があるらしい。結構な事である。
食事に比重を置いているティティはふらふらと街中進む。
「どうしようか。今日は、時間に余裕があるし、店に入ってみるかな?」
昼間だし、危険も少ないだろう。
屋台も美味しいものがたくさんあるが、店で食べるのもまたいい。
「よし! 店を探そう!」
思えば、ゴルデバの街に来て店でご飯を食べる機会があまりなかった。昼間は依頼をこなす為に街を出る事が多いためだ。
「何がいいかなあ。やっぱ、屋台では食べられないものかな。スヴァは何か食べたいものはあるか?」
<我は人間の食事処などあまり知らぬ>
「そっか。わかった。私が責任を持って美味しい店を嗅ぎ分けてみせよう!」
とはいえ、店に入ってみないとメニューはわからない。
良さそうな店にあたりを付けて入ってみるしかない。要は勘である。
「おっ、あすこにするか」
そうしてぶらぶらと歩いて見つけたのは、こじんまりとした店。
ティティよりも1つ2つ小さいだろうか? 茶髪のおかっぱの女の子が大声で客引きをしている。
「うちはほっくほっくのあったかいご飯とスープ、それとおかずが一品でなんと大銅貨5枚! 食べなきゃ損だよ! 食べればお腹いっぱいになる事間違いなし! だよ!」
うん値段も手ごろだ。何と言っても腹いっぱいとの触れ込みだ。
いいね。
ティティはその子供に近寄って行くと、その子供はすぐにティティに気づいた。
「いらっしゃい! 食べてくの?」
「ん。そう思ってんだけど、こいつを連れて中に入って大丈夫かな?」
足元にいるスヴァを差して、尋ねる。
「他のお客さんを噛んだりしない?」
「大丈夫。こいつは大人しいからね」
「なら、入ってもらっていいよ」
「よかった。ハラペコなんだ。お昼のおすすめを頼むよ」
「かしこまりました! 中に入って」
その子供に進められるままに入った中の広さは、4人席が1つと2人席が2つ。
後は、カウンター席が5つしかなかった。
お昼には早い時間だからか。1組しかお客はいなかった。
ティティはカウンター手前L字の短い方に座った。
ここなら、スヴァがいても邪魔にならないだろう。
「はいどうぞ」
座るとすぐに頼んだものが出て来た。
白飯に、卵と葉物のスープ。そしてメインは根菜と肉のソース和えだった。
おかずは見た目こってりの味が濃そうだ。
これなら、白飯がいくらでも入りそうだ。
「ありがとう。それとこいつ用に、この皿に白飯とおかずを頼む」
スヴァ用にワンプレートに乗せてもらおう。
「かしこまりました!」
女の子は、元気に返事をするとカウンターの中に入っていった。
「お母さーん! これにおかずとご飯を乗せて」
母娘でやっている店なのか。父親は出稼ぎか。それとも死別か。
何にしても、あの子は元気だ。
女の子はすぐに帰ってきて、スヴァの前に皿を置いた。
「おまたせしました」
おお、ちゃんとスヴァをお客さん扱いしている。
うむ。将来有望である。
「さて、食べるか」
まずは白飯を一口。うお。あの子の宣伝文句のように、ほっくほっくである。
これは塩だけでもうまいだろう。
メインの煮込みはどうか。まずはレコンをソースに絡めて食べる。レコンは泥の中で育つ野菜で、筒状の実にがいくつかの空洞がある。歯触りはしゃっきりで、粘りも多少ある野菜である。
「いいねえ」
レコンの良さを殺さず濃いソースに合う。レコンが口に入ったままで、更にご飯を頬張る。
これはたまらない。
うますぎる。次は肉だ。薄切り肉だが、薄い衣がついている。それが絶妙に肉のうまさを引き出し、ご飯にも合う。
ひたすらに箸が進む。
少し脂っこくなったかなというところで、薄味の卵スープを口に含めば、箸休めになる。
うー。やられた。
スヴァに目を向けると黙々と食べている。
きっとティティと同じ気持ちに違いない。
これは我慢できない。
「ご飯おかわり」
「はーい! ご飯おかわりは銅貨3枚だよ」
女の子が笑顔で駆け寄ってきた。安っ。
うん。いい店だ。
お茶まで出て、ティティ大満足である。
「ありがとうございました! また来てね!」
女の子の元気な声にたらふくになったお腹をさすりながら店を後にした。
うん。当たりの店に当たったようだ。
この店。キープである。
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