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第92話 やっぱ苦手だぜ

「いらっしゃいませ」

 商業ギルドで2番個室。待っていると担当者がやって来た。

 この前担当してもらったベルナルディである。

 にこやかな顔がどうも胡散臭く感じるのは、なぜだろうか。

「おお、ベルか。貴様だと話が通しやすい。これからは専属になって欲しいものよ」

 何を言い出す。デルコよ。やめて。

「ほう。それほどに新規登録をしていただける機会があると?」

 細い目が余計に細くなってるよ。恐い。

 反論したいが大人の会話に口を挟むのもよくないか。

 せめて身体を小さくしよう。うん。できない。

 デルコよ、どうかそれ以上は言わないで欲しい。

「そうともよ! 今日は2つも登録するんじゃからな!」

「その2つともに、またもティティさんが関わっていると?」

 またも、またもって、やめてー。

「がはは。そうじゃ! だが、内緒にしてくれよ。こやつは騒がれるのがいやだと言ってるからな」

 隣に座るティティ肩をバシッとデルコが叩く。加減はしてるんだろうが、結構痛いから。

「承知しました」

 目を細めて笑うのやめて。蛇に睨まれた蛙の気分だから。

 あのね。当分来ないから。私のことは忘れて欲しい。

 お願い。卵を飲み込む前の蛇のような顔をしないでー。

 デルコはティティが脂汗を流しているのにも気づかずに、話を進める。

 うん。マイペースだ。

「1つはこの前ちらっと話したじゃろ? 三節棍ちゅー武器じゃ」

 デルコは仕様書と三節棍をテーブルの上に出して説明している。

 わお、デルコってば、私に売ったもの以外にも作ってたんだ。

 意気込みがすごいな。

 本業は武器作りだもんな。新しい武器には力が入るのかもしれない。

「それで? 取り分は利益の取り分はどうしますか?」

「そうさな、ティが7、わしが3でええじゃろ、ティもいいな?」

「うん」

 ここでまたダダをこねれば、利益率が上がってしまうのが目に見えている。

 しかしそれでいいのか。デルコよ。

「かしこまりました。では次ですが、鉄製の水筒ですか?」

「うむ。ティ、ボードを出して説明しろ」

「わかった」

 こうなったら、早く終わらせたほうがよい。

 ティティはデルコにした説明と同じ説明をベルナルディにもした。

「なるほど、これは売れるかもしれませんね」

「じゃろ?」

「かしこまりました。早速、この2つを登録する手配を致しましょう。ご連絡はまたデルコのところでかまいませんか?」

「おお、待っとるぞ」

「了解しました」

 おお、思いのほか、スムーズに進んだ。

 早く帰れそうだ。

 やっぱ、こういう商談って、肩が凝るし、苦手だ。

「しかし、短期間で、5つもの商品のアイデアを出されるなんて、すごい事です」

「ティティさんは、どこかで学ばれていたのでしょうか?」

「いえ、私は学はないです」

 そう、主にスヴァの知識とジオルとして生きた知識のお陰だな。ちょっとずるか?

「ただ、欲しいなって思ったものをデルおじが形にしてくれているだけです」

 そうなんだよ。すごいのはデルコとマルコの2人なんだよ。

 だから、利益は2人が全部とってもいいくらいだと思うんだけどなあ。

 商売っ気はあるのに、真面目だから。

 そこが信用できるってとこかもしれないけど。

「今後とも何かお悩みがあれば、商業ギルドに直接ご相談を。出来る限り力になりますよ」

 そう言って笑った、ベルナルディの顔が笑っているのに怖い。

 いや、私、もう当分商業ギルドはいいかな。

 うん。

 デルコもう帰ろうぜ!

デルコって本当いいおっさんです。

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