第89話 明日に備え作戦会議だっ
「ふーい。今日も私頑張ったよ」
宿の自室で椅子に座り、ほっと一息つく。
「自画自賛か。むなしいぞ」
スヴァが足元で突っ込みを入れる。
「誰も褒めてくれないから、自分でほめるんだよ! 私、褒められて伸びるタイプなんだ。なんなら、お前が褒めてくれてもいんだぞ?」
「よくやってるぞ」
「ばかやろ。真面目に褒めるな」
冗談で振ったのに、真面目に返されると、決まりが悪い。
「もういい。ご飯食べようぜ」
亜空間より自分とスヴァの分の皿を出す。
今日買ってきたのは、小麦粉を練って小さな葉の形に作られたパスタだ。それに赤いトメートソースがたっぷりかけられている。ちなみに大盛だ。
「いただきます」
ホークでパスタをぶっさし、トメートソースを絡めて口に入れる。
「うわ。上手いな。このトメートの酸っぱさがいいアクセントになってるんだよな。腹持ちもよさそうだ」
お腹に溜まるもの大歓迎である。なにせすぐに腹が空くのだ。
「スヴァどうだ」
「うむ。美味である」
口の周りに赤いソースをつけて食べる姿がすごい可愛い。癒しである。
「よかった。じゃあ、これも買いだな」
胸をきゅんとさせつつ、残りも食べる。
食べた後は、スヴァの口を拭いてやったのち、浴室の洗面台で、昼間に使った皿もまとめて洗う。
部屋に戻って、小さな机の上にふきんを敷いてその上に食器を置く。夜のうちに乾くだろう。
「んー。食器を干して置く台が欲しいな」
また雑貨店に行ってみてみるか。
亜空間があるおかげで、荷物の制限をしなくて済むだけに、色々と欲しくなってしまう。
ゴールドシープとシルバーシープのお陰で、当分お金の心配もしなくてすむようになったからなおさらである。
とはいえ、油断していれば、すぐに赤貧になってしまうだろう。
しっかり稼がないといけない。
その為にも、お上からの褒賞金はしっかりもらわないとならない。
「さてと、んじゃ、明日の予定を考えようぜ」
自分とスヴァに果実水を亜空間から取り出し、椅子に深く腰を掛ける。
「今日で植物スライムの裏付けは全部とれた訳だけど、どうすっか」
「いつ、どの職員に、どのように言うかだな」
「そう。あんま目立ちたくないじゃん。冒険者ギルドなんて、ガラの悪い奴、沢山いるからな。へんな奴に目をつけられて、せっかく稼いだ金を巻き上げられたくないし、それ以上にやばいことされたくない。今はか弱い女の子だから、なんかされたら対抗手段がない」
「我がいる。いざとなれば任せておけ」
なにこの人、すっげえ男前。惚れちゃうぞ。
「すっげえ心強いけど、お前だって、ちびっちゃいじゃん? 大人相手はきついだろ?」
「やろうと思えば、魔素を取り込んで、一時的に身体を大きくすることは可能だと思う」
「やめろ! そんなことして、また魔王の器に選ばれたら、どうするんだ!? お前は魔力操作したり魔法使ったりするなよ! いいな! 前みたく、またうまく助けてやれるかわかんねえんだぞ! それに、おまえ言ってだろう? 魔王になって城に住むより、野山を駆け回っていたいって。今はそれが望めるんだから、自らそれを捨てるような事をするなよ!」
「わかったわかった。そうむきになるな。そういう手段もあるというだけだ」
「絶対するなよ! ふりじゃないからな! お前は俺とおもしろおかしく生きるんだからな!」
まったく、スヴァ。お人好しなところがあるから、油断できない。ぎっちり念押ししとかないと。
「話を戻すぞ。植物スライムの事を報告して褒賞金をもらう。まずはどの職員に言うかだけど」
「イリオーネしかおるまい」
「だよな」
アイテムボックス持ちであると(実際は魔族が使う亜空間だが)バレてるし、薄々、いやはっきりティティが魔法士だともバレバレだ。それでも、周りにばらすことなく、心配してくれたのがイリオーネである。
イリオーネ一択だろう。
「言うのは、早いほうがいいから、明日でいいだろ。依頼の薬草も採れたしな。時間はどうすっか、朝は忙しいだろうし、人も多い」
冒険者が依頼終了の報告ととともに、依頼を受けに来るのも、大概は朝が多い。
「少し時間潰して、昼過ぎに行くか」
「よいのではないか?」
「それなら、明日朝ごはん食べたら、デルおじのところに顔を出そうかな。三節棍ができてるかもしれないし。鉄の水筒も頼んでみるか」
よし。いつ、誰には決まった。
「後はどのように話を進めるかかあ。」
ジオル時代でも説明上手ではなかったしなあ。むーん。
「ありのままに告るしかないかな?」
「いいのではないか? 今のお主は7歳の少女ぞ。逆にすらすらと話しが上手かったら、変に思われるかもしれぬ。それよりも気にするところは、開示していい情報、開示しない方がいいものわかってるかだ」
「大丈夫だ。わかってるよ。植物スライムが作り出された魔物であること、それを作ったのがお前の知り合いだってことは黙ってなくちゃだろ」
なまじ詳しく話して、要らぬ疑いを持たれたら事だ。
「それに、植物スライムが魔王領で作られたものだろう事、そして一番重要なのは、誰からその知識を得たということを伏せておくことだ」
「あ、そっか」
まさか、元魔王のスヴァから聞いたとは言えない。
「そっかあ、どうするかな」
「我も人間の社会はそれほど詳しくない。誤魔化せそうか?」
「知り合いから聞いたとか? こんな小さい子供にそんな話する大人がいるか?」
「魔法士の仲間から聞いたといえばいいのではないか?」
「それが一番納得されやすいよなあ」
今のティティは魔力は動かせるけど、魔法は全く使えないのが悲しい。
「イリオーネさんにはバレてるけど、他の人には魔法士ってばれたくないよな」
やってみろって言われても、困るし。
「そうだな。今のところトラブルの元にしかならぬからな」
魔力操作しかできない今のティティでは、攫われる率が上がるだけだ。
「今日から寝る前、魔力操作の訓練をした方がよいな。その後に魔法も練習したほうがよいか」
魔法! ぜひとも使いたい!」
「おお! スヴァ師匠! よろしく頼むぜ!」
「うむ。お主の身体の様子を見つつだな。死んでは仕方ないからな」
「怖い事言うなよ」
そうだ。ジオルとスヴァの魂は半分しかないので、とても不安定なのだ。無理は禁物である。
「知り合いの魔法士から聞いたというのが使えないとなると」
ティティは目を瞑って眉間に皺を寄せて考え込む。
「うし。村に尋ねて来た行商人におとぎ話として聞いたということにするか」
ひねり出した答えがこれである。イリオーネは察してくれそうだが、他の人への理由づけとしては無理がある。
「苦しいな」
「でもこれで押すしかない。スヴァも何も思いつかないだろ?」
「我は人間世界に疎いからな」
む。うまくかわされた。まあ、真実だからしかたないか。
「嘘はあまりつかぬ方がよいだろう。その嘘からどんどん情報が流れそうだ、お主の場合」
「う、それは否定できない。焦るとつるっと口が滑っちまうかも」
「ならば、やはり嘘はなしで知り合いに聞いただけで押し通せ」
「それで納得するかあ?」
俺だったら絶対しないけど。
「もし話した以上に出所を突き詰めようとしたら、話を打ち切ると言ってやれ。情報を持ってるのはこちらだからな」
おお、スヴァ強気だ。でも私も賛成だ。
「そうだな。情報元を明かす必要はないよな。うん、そうしよう!」
「それともう一つ注意だ。情報は小出しにな。一遍に話す必要はない」
「わかってるよ」
にっっとティティは口角を上げる。
「少しづつ小出しにして、お金をひきあげるんだろ」
「それもあるだろうが、全部話してしまったら、何かあった時に、交渉材料がなくなってしまう」
「何かあった時ってなんだよ」
「たとえば、冒険者ギルドが、自分の功しようとして、お主を亡き者にするとか」
「ないだろ! それは!」
そんな物騒な!?
「たとえば、お主を不作の原因を作った犯人の一味とみるとか」
「ないだろ! 3年前って、ティティが4歳だぞ?! そんなチビに何ができるって。それにそれで行けば仲間を裏切って、金目当てでギルドに情報を売ってることになるだろ?! どこまで悪党だよ!?」
「そうか? それでも、慎重にした方がよい。不測の事態と言うのはおきるものだ」
なにそれやめて。不吉すぎる。
「わかったよ。スヴァも注意して見といてくれよ。私が気づかない事もお前なら気づくこともあるだろうからな」
「了解した」
「はあ、つっかれたな。じゃあ、もう寝ようぜ」
ティティはそう言いつつ、ごろんとベッドに横になった。
シルバーシープが来た時にとった薬草の整理が残っているけど、今日は流石に疲れたもう寝たい。
「おい」
「んだよ」
「さっき言った事をもう忘れたのか?」
スヴァがベッドに飛び乗り、ティティを前足でべしりと叩く。
「いてっ! なにすんだ!」
「寝る前に魔力操作の練習をすると言っただろう」
「あ!」
すっかり忘れてた。
「なあ~。今日はもう疲れたよ~。タリオス湖まで行ったしさあ。国守さまのおつかいもしたし。訓練は明日からにしようぜ」
ベッドから起き上がりたくない。
「だめだ。そう言って、明日もしないのだろう。明日やるは信用ならない」
おまえ、どこでそんな知識を身に着けた。
「わかったよ」
しぶしぶ起き上がると、スヴァ師匠の元、魔力操作の練習をした。
身体は風呂でぽかぽか、腹は一杯で、魔力操作とか。
とてもつらい。眠いよう。くう。
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