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第84話 タリオス湖に向けて出発っ

「キシュミール湖には絶対潜らないからな」

「うむ。わかっている」

 そのすまし顔が信用できない。

「ぐぬぬ」

 しばらく唸っていたティティだったが、ため息とともに諦めた。

 結局4つの湖に潜る事になってしまった。

 隣国の国境に面している5つ目にして五大湖のうち最大の湖、キシュミール湖。

 あの湖は特に深そうだ。潜れたとしても息が続かないだろう。

「スヴァ、国境のキシュミール湖に、植物スライムはいると思うか」

「わからぬ。五分五分のところだろう」

「犯人によるってことか」

「そうだな。隣国が犯人なら、いないだろう。影響が自国にも及ぶからな。犯人が国内の人間なら、いるだろう」

「それで五分か」

「そこは我らが考えるところではあるまい。流石に国境に面した湖で不審な行動をしたら、我らが怪しまれるからな。その調査判断は、領主にゆだねてよいだろう」

 あ、これは潜れと言われなさそうだ。やったね。それさえわかればいい。

「犯人捜しまで首を突っ込む事もなかろう。危険が増す。依頼はあくまで情報提供なのだから」

「そうだな。そこまで俺たちが考える事でもないな」

 難しいことはお偉いさんに任せればいっか。

「そうだ。考えるべくは、国守が頼んだ事をどのようにスムーズにこなすかだろう」

「ん? そんなに難しいか?」

「なんだ? 考えがあるのか?」

「そのままストレートにやるさ」

 そう、こういうのは、あれこれと工夫をこらしてしまうとこじれるのだ。

「私にまかせろ」

 少し小道具と小芝居がいるが、やってみせるぜ。


 翌日、夜明けとともに起き出したティティは、部屋で朝食をとると、西門の前にやって来た。

 前にタリオス湖に近い村に定期的に行く商人がいると聞いたことがあったのだ。

 屋台のおっちゃん情報だから、嘘はないだろう。

 それにあわやよくば載せてもらおうと思ったのである。

 どうか、今日が村に行く日でありますように。

 商人が掴まらなければ、辻馬車に乗るしかない。しかし、タリオス湖やその周辺に行く辻馬車はめっきり少なくなってしまった為、料金が少し高めなのだ。

 それなら、商人の手伝いをしつつ、辻馬車よりも安く相乗りさせてもらえたらと思ったのだ。

 節約大事。

 ティティの願いが通じたのか、荷物を多く載せた馬車が西門付近にいた。

 おそらく開門とともに、出発するのだろう。

 ティティは早速交渉を開始した。

「あの、すいません」

 御者台の横に立っている20代半ばの男にティティは話しかけた。

「あのお兄さん、お兄さんはもしかしてタリオス湖に近い村に行くところですか?」

「そうだが」

「やっぱり! あの私タリオス湖に行きたいんですけど、乗せて行ってもらえませんか?」

「辻馬車があるだろう。それを利用しな」

 男がそっけなく辻馬車の方へ顎をしゃくる。

 なんの。めげないぞ。

「辻馬車って少し高いんですよね。私冒険者初めてまだ日が浅いので、節約したいんですよ。お願いします。村での荷物を下ろすのお手伝いしますから、相乗りさせていただけませんか? あ、少しですが足代も出しますので」

「冒険者か」

 男はじろりと見て、少し考えた後頷いた。

「いいだろう。足代は往復で大銅貨6枚でいい」

「ありがとうございます!」

 やった!少し節約できたぞ。

「ただし、帰り時間に遅れたら、容赦なくおいて行くからな」

「わかりました。あのスヴァ、私の従魔もいいですか」

 男はちらりとスヴァを見ると頷いた。

 不愛想だが、いい人なのかもしれない。

 それともちょいと馬車の隅に小娘を乗せるだけで、1食分くらいは稼げると思ってくれたのか。

「もう、出発しますか?」

「門が開き次第だな。後30分くらいか。男は懐から懐中時計を取り出して確認した。

 おおすごい。時計なんて持ってるなんて、金持ちだ。

 いつかはティティも欲しい。

「後、30分ですね、では朝ご飯買ってきます」

「遅れたら、置いてくぞ」

「わかりました」

 下町広場まで行く時間はない。

 幸いにしてこの西門付近にもちらほらと屋台がある。

 そこを物色する。

 選ぶほどに屋台がないのが悲しい。

 でも幸いにしておむすび屋があった。

 やはり米がとれる地域だからか。おむすびやが多い。

 ティティは迷わずさくさくと食料を買い込んだ。

 リュックの紐をきゅっと締めると、すぐに商人のところに引き返した。

 乗せてもらうのだ、時間ギリギリはまずい。

 村にも食料品店はある。

 そこで、ここで売ってないものを買ってもいい。

「お兄さん、出発に間に合いましたか?」

「ああ。そろそろだろうから、荷台の隅に乗っておけ。

「わかりました。では、これまずは片道分です」

 ティティは男に大銅貨3枚を渡した。

「ああ」

 男は受け取ると、御者台に座った。

 ティティも急いで荷台の後ろに回り、まずはスヴァを乗せて、自分もよじ登る。

 そうしたところで、馬車が動き出した。

 おお。よいタイミングだったらしい。

 それともティティを待っていてくれたのか。

 どちらにしても馬車が動き出す。

 馬車の脇には盗賊に備えて、2人の護衛がついていた。

 やっぱ近くの村に行くんでも護衛がいるんだなあと、改めて思った。

 さあ。タリオス湖の近くの村。楽しみだ。珍しいものが売っているといいな。

馬車に乗ってみたいです。

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