第83話 なんでだよ。なんでそーなる?
シルバーシープが作り出した場。
そして彼? 彼女が力を与えた場所は、やっぱり不思議な場所であった。
季節問わず、地域問わず、この国で採れる薬草、ポーションの素材、レアな実が生えまくっていた。できれば、全部刈りつくしたいところであるが、なにせ主戦力がティティ一人である。限界がある。
「スヴァ、お前は薬草採集はできないから、果実系、後、根っこが使えるものを集めてくれ」
「わかった」
知識だけは、人一倍、いや、人万倍あるスヴァだ、こちらが指示を出すよりも、本人に任せた方が早い。
「さて、私はどこから攻める」
ジオルの知識のみ。それも7年前の。冒険者 どれから取るべきか。今はあるべき知識だけで優先順位を付けて行くしかない。
街へと帰ったら、冒険者ギルドの資料室で、勉強するぞと、固く誓った。
「よし!」
ざっと、空間を見て回り、腰を屈めて、薬草を採集し始めた。
仕分けは後だ。片っ端から亜空間に放り込んでいくぞ。
それから体感で2時間くらい経過した頃。
「だめだ。もう帰らないと、門が閉じるぞ」
「もう少し、もう少しだけ! だって、次はないんだぞ!」
ここはシルバーシープが祝福した場と時間。制限時間1時間くらいだと思われたのに、まだこの楽園状態が続いている。出来るだけ採集したい。次に来た時にはきっと普通の場所に戻ってしまっているだろうから。
「だめだ、それに見ろ。シルバーシープの祝福が消える」
まるで、ティティの身の安全を考えるかのように、その場が変化し始めた。
あれほど、広がりを見せていた、草原が、いつの間には、木々が密になり、足元に沢山生えていた希少な薬草もなくなっていた。
「ああっ!」
お宝が消えた。
ティティはがっくりと膝をついた。
「何をしている。ぐずぐずしている暇はないぞ。さっさと立て」
スヴァはどこまでも、冷静である。
「ぐっ! わかったよ!」
ティティは口を尖らせながらも、立ち上がった。
「はあ、街に入るのぎりっぎりっだったなあ」
宿にも無事に着いて、風呂にもスヴァとともに入り、部屋でやっと一息付けたところである。
「お主が、帰りたくないと駄々をこねなければ、もっと余裕をもって帰ってこれたのだぞ」
「だってよ、あれだけのお宝を目の前にして、はいそうですかって帰れるかよ」
「その見切りをつけられぬと、人の上には立てぬぞ」
「立つつもりがないっての!」
「お主は、テイマーだろう。指揮官にならねばならぬのではないか」
「そう言われちゃうと、なんも言えねえ」
どうにも、元魔王様には勝てない。
「いっそ、スヴァが頭張ってくれれば、うまくいくと思う」
「我は、ただの獣でありたいのだ」
それも言われてしまうと弱い。
「わかった。でもアドバイスは頼むぜ」
「あい、わかった」
「難しい話は、こんくらいにしようぜ! 飯にしよう!」
そうは言っても寄り道せずに、真っすぐに宿へと帰って来たのだ。夜道は危険。安全第一。ゆえに新たに食料を買い込む暇はなかった。無念。
「今日は、買い置きで我慢してくれよ!」
それでも連日の大量に屋台で食い物は買ってるからな、一食ぐらいなら余裕だ。
串焼きとバンブールの炊き込みご飯を亜空間から取り出して、スヴァとともに食べる。
炊き込みご飯、疲れた体に最高である。ほのかに香るバンブールの香りがいい。
お茶で締めくくれば、もう大満足である。
スヴァも専用のお茶の入った皿を前に満足げである。
「しかし、これも運命なのか。タリオス湖にも潜る事になるとはな」
「へ? スヴァ何言ってんだよ。タリオス湖には潜らなくていいって言ったじゃねえか」
「ああ、言った。だが、状況は変わっただろう?」
「どう変わったんだよ」
「国守の願いで、タリオス湖付近の牧場に牧草を届けなければならぬのだろう? ならば、ついでにタリオス湖の検証もすます事ができるではないか」
そっか。そういう事になるのか?
「いや! できるけど、できるけども!」
やりたくないよ! 今日で、寒中水泳という苦行は終わったと思ったのに!
なんとかスヴァを説得しようと試みる。
「3つ検証したんだから十分じゃんか!」
「3つよりも4つのほうがよい。出来る範囲に行くのならなおさらだ。褒賞金の額に影響するかもしれぬぞ?」
うわああ。やなとこをついてくる。
それを言われてしまうと弱い。
タリオス湖のまで行くには、馬車に乗るので、足代もかかる。
それを考えると、どうせ行くならば、検証したほうがいい。のか?
「わかった! わかったよ! やるよ!」
やけくそのようにティティは叫んだ。
「我もすっきりする」
お前の気持ちなんてどうでもいいんだよ!
くそ! また寒中水泳かよ~。とほほ。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
続きを読みたいぞっと少しでも思ってもらえましたら、ぜひとも評価、ブクマをよろしくお願いします。やる気がでます~!!




